その夜工場の片隅の住居で家族全員で夕食をした。省三が風呂から上がってくると先に風呂から上がった父はすでにゆかた姿で胸をはだけて内輪でばたばたと風を送っていた。食卓の真ん中に置かれた丸い鉄なべに牛肉がぐつぐつ煮えていた。
「暑いけど今日はすき焼きよ。何年ぶりかしら家族みんなでお夕食たべるなんて」
父の横で母の美奈子はうれしそうに終始ニコニコしていた。
高校生になって急にきれいになった姉の美里、野球部で連日しごかれ真っ黒に日焼けした中学1年の兄の忠義この3,4年で急に背が伸びてすでに省三よりはるかに背が高くなった小学3年の勇そして省三、の家族6人が全員そろって食卓を囲んだ。
「省ちゃん聞いたわよ。お父さんが家族みんなで住める新しいおうちを作ってくれるって。仕事の事しか考えていない自分勝手なお父さんが始めて家族のみんなに目を向けてくれたのよ」美奈子は今にも泣き出しそうな顔で苦しそうな笑顔を見せて言った。
「省ちゃんえらいわー。貨物船に乗ってお父さんに会いに行ったんですって」姉の美里が母の言葉を引き継ぐように言った。
「うん、それよりこの巨大なお父さんを揺り動かしたとはたいした奴だ」兄の忠義が牛肉をうまそうに頬張りながら言った。みんながあまりほめるので省三は恥ずかしくて仕方なかった。
第28話に続く