これから先のお話は差しさわりのある人たちが出てくるので公開はしばらくお休みいたします。

原稿は書き溜めておきます。時期が来れば公開いたします。

長い間ご購読ありがとうございました。


作者




桜が満開になった頃一緒に受験勉強した仲間全員が隣町の県立高校に合格した。白い3本線の入った新しい学帽をかぶり、詰襟の制服を着て入学式が無事終わった。新しい希望を抱いて校内を見学している省三を近所の幸子が見つけた。幸子は2つ上で今年この高校を卒業したのだった。日曜日の早朝、近くのお寺の境内で武具を着けて剣道の練習をしている幸子を省三は遠くから眺めていた。そんな幸子には人を寄せ付けないりりしさがあった。


「省ちゃん何きょろきょろしてるの。こっちにいらっしゃい」豊かな胸をした幸子に手を引っ張られ体育館の前まで連れて行かれた。体育館の前では同じ紺の制服を着た卒業したばかりの女子学生が十数人集まって記念撮影をしていた。

「渡瀬省三君。ね、かわいいでしょう」幸子は省三を大勢の女子卒業生の前で紹介した。

いつも遠くから畏敬の念で見ていた幸子にかわいいでしょうと紹介され省三はどぎまぎしてしまった。

「かわいい。一緒に写真とりましょう」女子卒業生に囲まれ省三はテレながら彼女達と記念撮影に加わった。キャキャと嬌声を上げる女子卒業生に解放され省三の波乱の高校生活が始まった。


~第45話に続く~

中学3年の秋も深まって省三の高校受験の猛勉強が始まった。

友人たちは省三の部屋に集まり夜遅くまで一緒に受験勉強した。多いときには7,8名が6畳の部屋でお互いに教えたり教えられたりして効率のよい楽しい受験勉強をした。

「全員が合格するようがんばろうぜ」省三は毎晩集まってくる友人たちを励ましながら1人でも落伍者を出すまいと責任も感じていた。西宮の小学校に1年転校したことが友人たちに求心力を与えたようだった。

中学校の卒業式が終わって省三は卒業証書を丸めて輪ゴムで巻いてもって帰った。家に近かずくとめーめーといつもと違う悲鳴に近いヤギの啼き声が聞こえてきた。朝、山に繋いでおいたヤギが杭にロープをぐるぐる巻きつけて身動きできなくなって騒いでいたのだった。


省三は輪ゴムでとめた卒業証書をすこし離れたところにおいて急いで杭に巻きついたロープをほどいていった。5分ほどほどくとロープは5Mほどの長さになりヤギも啼きやんでおとなしくなった。後方でムシャムシャとヤギが何かを噛んでいる音がするので振り向くとさっき置いた卒業証書をヤギがおいしそうに食っているではないか。杭に巻きついたロープをほどいていくとロープが長くなり卒業証書まで届いてしまったのだった。

「アー、こらー」省三はヤギをしかりつけてヤギの口から白い証書を取り返したときにはすでに半分以上はヤギにたべられてしまっていた。

「大事な卒業証書をーーー」省三は泣きたいような気持ちだった。


無残に半分食べられた卒業証書の残りを持って帰って母に事情を説明した。

夕食時半分になった卒業証書を広げて母の美奈子は家族全員にそのことを報告した。

家族みんなが大笑いしているとき「ヤギも一緒に卒業したかったんだろうよ」父の秀雄がしょんぼりうつむいている省三を慰めるように言った。


~第44話に続く~