省三とキュウちゃんが白鳥の駅について改札を出ると母の美奈子と弟の勇が迎えにきていた。
「ただいまー。みんな元気」省三は母にぴょこんと頭を下げた。
「お兄ちゃん、お帰りなさい」一層背が伸びて省三よりはるかに大きくなった勇がはにかんだような笑顔で言った。
「勇はまた背が伸びたようだな。」省三は弟の顔を見上げて言った。
「お母さん。こちらキュウちゃん」
「野口久子と申します。よろしくお願いいたします」
久子は美奈子に丁寧にお辞儀をして今度は省三に向かって睨むようなしぐさをした。
きちんと本名で紹介してくれなかったのが不満のようだった。
「美奈子です。よくこんな田舎に来てくれたわね」
駅前のうどん屋も以前のままだった。美奈子がうどん屋の前を通りすぎようとしたとき「お母さん、山越えで行こうよ」と省三はうどん屋の手前をプラットホームに沿って歩き出した。
「お兄ちゃん、さすがにこの山はよく知ってるね」いつも省三の後を金魚の糞みたいにくっついて遊んでいた勇が言った。
「そりゃ知ってるさ。この山は僕たちの巣みたいなところだからな」
省三は背丈よりも草の生い茂った場所に竹で小屋を作ってそこを基地にしてチャンバラごっこをしていたのを思い出した。基地には勇とか省三と仲のいい子供たちがいつも10人ばかりがその竹小屋に集まって遊んでいたのだった。省三は小さいときから仲間をつくるのがうまかった。
~第37話に続く~