ここは基本的には下り基調なのだが、歩道の凸凹があり走りにくい区間でもある。天気が悪かった事もあり、思ったよりペースが上がっていない。
(エイドでの休憩は最小限に抑えてタイムを稼がないと制限時間に間に合わなくなるな…。)
前半突っ込んで後半メロメロになるのはデビルのお約束。どの程度までペースが落ち込むのかまだわからないが、112キロは意外と制限時間が厳しいのでいけるところまでいって、タイムを稼ぐしかない。
関門1の『やきとりふじ』でも自己申告するリタイア者が出ていた。
ある意味賢明な判断であろう。そう思える位コンディションは悪い。早めに切り上げて温かい風呂にでも入りたいという誘惑に負けそうに…なることなどなく、淡々と前を見つめる。
(ここまで濡れてしまえば逆に楽しいかも)
デビル脳内麻薬が出ていたのか?それともこれが俗にいうランナーズハイなのか、何故か楽しくて楽しくてしょうがない。指先が冷え切ってグーパーしないと感覚が無くなってしまうくらいの状態なのに、テンションだけは上がっていた。
(今年こそは本栖湖デーモンを倒す!!)
「デビル~」
「おお!遅かったね」
100キロの部参戦のガッチャごんに遂に捕えられる。あっさり追い抜かれ、あっという間にその姿は視界から消えた…。やはり彼は一般人ではない。デビルのような弱っちい一般人からみれば雲上人のようだ。そんなエロやんちゃ貴公子から『師匠』と呼ばれるのは如何なものかと思うが、正装ランナーとして先輩だし、まあそれはそれでいいか!とも思う。
やがて…
富士五湖名物おにぎりエイドに到着。
熱い味噌汁に水を足してぬるくし、おにぎりを頬張るとそれで流し込み歩きながら食べる。文字にするとえらくお行儀が悪いが、これがロスタイムを最小限にする方法なのだから致し方ない。
河口湖に向け信号を右折するポイントでは、女性ランナーが赤信号にひっかかって誘導員とお話中。どうやら直進の信号が赤だから右折の青信号を先に渡らせて欲しかったらしい。
「こっちの信号渡らしてくれんのやって、なんか言うてデビルマン!」
「まあまあ、先は長いんだから急いでもしょうがないじゃん。焦らず行こうよ。」
「なんか偉いいい人やな、デビルマン…。」
いい人…違うな。
焦らずゆっくりと、でも立ち止まることなく進み続ける。自分に言い聞かせるように言葉を発しただけだ。
俺はいい人なんかじゃない。ただ自分が完走したいというエゴだけで走っているだけだ。悪コンディションの中走り切ったという称号が欲しいだけだ。俺のことを師匠なんて呼ばない方が良いと思うぞ…。
こうして、フルの距離を超えて河口湖畔へと突入していった…。
《続く》

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