呪文のように唱えながら走るものの、ゴールを目指す以外は何も無い。地獄の業火にこの身を焼かれながら、たとえ真っ白い灰になろうとも必ずゴールまで辿り着く!
昨年のDNFが如何に悔しかったのだろうか…。チャレンジ富士五湖へのリベンジ、それだけを考えて1年間過ごして来たのだ。
89.9キロのエイドで、ついに『にっしー』に追いつかれる。
「残り10キロ、キロ6分ペースで行くよ!」
「男たるもの負ける訳にはいかん!!食らい付くよ!」
はい、10メートルで置いて行かれました…。どんだけ体力有り余ってんだあの人間の格好をした『デビルマン・レディ』は…。
とにもかくにも、残りの距離が一桁になった時点で脚が完全に止まった。
ちょっとした上りでは歩く以外に前へ進む方法が思い浮かばない。
(これが真のウルトラデーモンの攻撃なのか…。)
70キロから先に、これほど強力なデーモンが居るとは、デビルはその敵の恐ろしさに身震いした…。
というか、気温が下がってきて、かつ走らなくなったので急速に体温を奪われていたのだ。ウルトラデーモンは二重にも三重にも罠を仕掛けてくるのか。
やがて、残り5キロのエイドを過ぎ、富士五湖名物最後の延々と続く激坂へ入る。
ここでついに『KITTY1号』さんに抜かれた…。70キロから先の失速が如何に酷かったのか、残りの30キロを5時間以上かかっている事からも判るように、完全にデーモンにやられてしまったのだ…。
それでも、デビルマンは進み続ける、この美しいものを守りたいだけ…。
「この先で上り坂は終わりでーす!!」
残り2キロ、デビルは最後の力を振り絞り、ヨタヨタと走り出す。すると前方から見覚えのある女性が走ってきた。
「デビル、まだあきらめちゃ駄目!!」
(え…、全然あきらめていないけど?)
流石、天然の入った『変態大将』、制限時間を勝手に自分の中で30分早めてデビルを心配して下さっている。
「おーい、姫は去年走って完走してるんだから、そこ間違えちゃ駄目だよ~」
しかし、これがおそらく『魔法』だったに違いない。デビルはそこからゴールのある北麓公園まで奇跡のデビルスパート炸裂!!
はたから見ればスパートでもなんでもない速度だったに違いない。それでもデビルマンは走った。己の全てを賭けて…
そして、北麓公園の中に入るとウィニングランゾーンに出迎えてくれる沢山の人から大歓声が飛んだのだ!
「デビルマーン!!」
「お帰りなさい!!」
「完走おめでとう!!」
「ウォー!!」
デビルマンは1人1人とハイタッチを交わし、デビル塩が涙に見えるデビルマスクの中で熱い本当の涙を流した…。100キロ闘い抜いた事に自分自身で歓喜したのだ。
大会を盛り上げるゴール実況のMCから
「え~デビルマンの格好をしたランナーが帰ってきました、なんとお呼びしたらいいのでしょうか…」
彼女の前まで走り、こう叫んだのだ。
「俺が『デビルマン』だ~!」

(提供:オールスポーツ)
こうして、長く寒く暑く苦しく痛く辛く寒かった100.2キロの闘いは幕を降ろしたのだった…。
「地獄の苦しみを感じながら、また走ろうと思えるのはなぜだろう」
その答えはここにある。『BORN TO DEVI』 デビるために生まれた…。
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