ぎりぎりの時間で最終ラップに突入したデビルマン。
20周で持てる力のほとんど全てを出し切ったために、最終ラップは走ることが出来ず、早歩きで進む。
野球場では既に少年たちが大会を終えて引き上げたのか閑散としている…。大会の終わりを告げるかのように公園内が閑散としている事に気づいたわけだが、それ以上に重大なことに気づいた。
前後左右、見渡す限りランナーがいない…。
どうやらギリギリのタイムで最終周回に入ったランナーはいないらしく、デビルマンは最終ランナーとしてたった一人で公園内を走る羽目に。大会でゼッケンをつけた人が他にいるからこそ仮装ランナーだとわかるわけで、たった一人でデビルマンが走っていれば
変態さんみーつけた!!
の通報ものに違いない…。
これはまずい!!
しかも後走スタッフがいないために、主催者に気付かれていなければゴール前に大会そのものの撤収が始まってしまう!!
ここまで頑張ってきてゴールテープが切れないなんてことがあってはならぬ…。
デービールー!!!
残っていないはずの最後の力を、伊藤家の食卓で紹介されていたラミネートチューブを最後まで使い切る方法を思い出しながら最後まで搾り出して走るデビルマン。正直言ってこのときのあせりようといったら近年稀に見るものだったに違いない。
コースを示す矢印テープを剥がし始める大会スタッフを横目に、デビルマンはあるかどうかもわからないゴールラインをめがけて必死の形相で走り続ける。当然はたから見たら無表情なわけだが…。
「デビルマンお疲れ~」
既に走り終えて大会会場を後にするランナーさんたちとすれ違うにつけ、デビルマンは絶望の境地へ。
しかし、正義のヒーローの意地とプライドだけで走ることだけは決して止めない。
そしてやっとの思いで最後の直線に入ったとき、デビルマンは極端に狭い視界の先に栄光のゴールテープを見つけた!!
その瞬間、いままで我慢してきた苦しみが一気に噴出したのだろうか?
湧き出る感情を抑えることが出来なくなり、嗚咽とともに次から次へと涙が溢れ出た。止めようと思っても止められない、ここまでの苦しい闘いが終わりを告げることに心ではなく体が反応していたのだろうか…。
それでもはたから見れば全く
無表情
なデビルマン。8時間の苦闘にピリオドを打つべく、高々と掲げた両手のうち右手は『V』サイン、左手は『人差し指』を付きだして『デビル21周』を強烈にアピールして遂にゴールテープを切った…。多分誰もその手の意味に気付いてくれていないだろうが…。
ゴール付近に待ち構えてくれていた皆とハイタッチをかましながら、これで所沢の平和は守られたことにデビルご満悦&デビル感無量…。
こうして、長く暑い激闘を最後まで闘いきったデビルマン。
最後にここまで支えてくれたボランティアのお姉ちゃん1人1人に固い握手をして感謝を表現すると「最後にマスクぬいで~」という声に
「だーれも知らない、知られちゃいけな~い」
と言ってそのままの格好で会場をあとにするのでありました…。
最後に、撤収を始めようとする主催者に、「デビルマンがまだ走っている」と言ってゴールテープを残してくれたのはボランティアの人だと言うことを大会後に聞きました。この場を借りてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
ということで、この美しいものを守るために、デビルマンはそろそろ休養明けでパトロールを再開する予定なのでありました。