渡夢太郎家の猫 -7ページ目

渡夢太郎家の猫

2008年 3月に蘭丸の2度目の子供ができました
これで、我が家は9匹の猫です

「まあまあ、いいじゃないか。
どうだ美喜ちゃん、私が出資するから
幸田美喜ブランドを立ち上げないか、
まだまだファンは君を忘れていないはずだ。
必ず成功する」
美喜の耳元から香る香水の影響で
正一郎はすっかり美喜を信用していた。

「えっ、本当ですか?嬉しい!」
美喜は正一郎に抱き付いて頬にキスをした。
「そうか、そうか」
「ねえ、お店が終わったらゆっくりとお話をしません?」
美喜は正一郎の耳元で囁き耳たぶを噛んだ。
「いいねえ~」
正一郎は先の事を想像してニヤニヤと笑った。

そこに悦子から正一郎の元に電話がかかって来た。
「今日は何時お戻りですか?」
「どうしたんだ急に」
「ちょっと相談があります」
「今日は帰らんかもしれないな」
「そうですか・・・それでは私この部屋を出ます」
「なんだって!」
正一郎は立ち上がって店の外に出た。

「ま、待て!どうしたと言うんだ?」
「もう愛人生活は嫌になったんです」
「今日美宝堂と契約したばかりだろう。
 店の方はどうするんだ!」
「辞めます」
「馬鹿野郎!そんなに無責任に言える話じゃないだろう」
正一郎は悦子を大声で恫喝した。
「いいえ、私なんかいなくてもあなたがいれば大丈夫です。
あなたが連れてきた従業員は今まで
私を上司と思っていませんでしたから」

「そ、そんな事ない。あの店の売り上げを上げたのは
お前の力だ」
「そんな歯の浮くような話をして本気にしません。
手切れ金としてをいただいていきます」
「金、そんな物そこに置いてなんかいないぞ」

「私が知らないと思っているんですね。トイレのタンクの中に500万、
 玄関の靴棚の一番上に500万、リビングのテーブルの隠し引き出しの
 中の1千万、書斎の金庫にあるゴールドもいただこうかしら・・・」
「ま、待て。すぐ帰るから話し合おう。手切れ金なら
 きっちり払う、いやもっと払おう」
悦子に書斎の金庫のゴールドと言われ正一郎は完全に動揺していた。
『金庫のダイヤルは何処にも記録していない、おそらく悦子の脅しに違いない』
正一郎は心の中でつぶやいた。
「1時間待て!良いな」
「はい・・・」
悦子は仕方なしに承諾をした。

電話を切った正一郎は塩見に電話を掛けた。
「塩見、頼みがある」
「なんでしょうか?」
「私の部屋に行って女を殺って欲しい」
「女ってあの悦子さんですか?」
「ああ、そうだ。どこか旅行に行ったように処理をしてくれ。
1週間後に警察に捜索願いを出すから
絶対死体が見つからないようにしろよ。1時間以内に手配をしてくれ」
「はい、了解しました」

塩見との会話を終え席に戻った正一郎は
大きく息を吸って水割りを一口飲んだ。
「お仕事ですか?」
「うん、ちょっと難しい仕事があってね。お店が終わったら
打ち合わせがてら寿司でも食べに行こうか?」
正一郎はアリバイを作るために美喜を誘った。
「キャー嬉しい」
美喜は正一郎にだきついて頬を摺り寄せた。

「ねえ、正一郎さん。お仕事の話なら
 美喜ちゃん連れ出しても良いわよ。
 ただ変な関係になるとまずいから・・・私も一緒よ」
「ん?」
正一郎が絵里子の顔を見返した。
「嘘よ、心配だから誰か連れて行って」
「分かった」
正一郎は秘密厳守であるボディガードマギーに電話を掛けた。
「もしもし、マギーさん。黒崎です」
正一郎は自分の妻、
黒崎泉を知っている絵里子に言い訳していた。
「そう、それなら美喜ちゃん打って付だわ。
 頭も良いしお父さんがアメリカ人なので
英語も話せるし」
「そうか英語もできるのか」
正一郎はますます美喜に興味を持った。

「いらっしゃいませ、美喜と申します」
美喜はお店の一番奥にあるVIP席の前であいさつした。
「お疲れ様、美喜さん」
眼鏡にハットをかぶった亮が美喜に言った。
「ああっ、亮もう来たの」
正一郎を足止めするように指示されて美喜は驚いて居た。

「はい、思ったより早く話が済んだので」
「良かった、あいつ自慢話ばかりで。
 黒崎グループの創業者は絵里子さんの
 ご主人なんでしょう」
「そうですよ。関西のドンと言われた亡き黒崎憲治氏です」
「そうよね。あいつ自分が作った会社みたいなこと言っていたわ」
「美喜さん、田代悦子さんがあの黒崎さんと
 別れるように仕向けてきました。
 だから美喜さんは彼女の後釜に
 入れるように話をしてください」

「えっ、急に言われてもどうしたら」
「できますよ。段取りはできていますから、
 黒崎さんを籠絡してください。
 くノ一の得意技でしょう」
「つまり私を愛人にしたい気持ちにさせればいいのね」
「そうです。そうすれば後はうまく行きます」
亮はそう言って美喜に袋を渡した。

「これ何?」
「スタジオDの最新のブラです。
 繊維の中に金糸が織り込んであって
 ホールド感とマイナスイオン効果で美乳になります」
亮はブラを手に取って広げて見せた。
「これは香水?」
「はい、母乳に含まれているオキシトシンが入っています。
 その香りを嗅ぐと子供が母親を信頼するように
 相手に思いを寄せさせます」
「それ、素敵」


「香水はまだ使った事が無いので効果は分かりませんよ」
「でも、いい香りじゃない。早速使ってみるわ」
「はい、スパイシー系のセクシーな香りにデザインしてみました」
亮は香水の香りを褒められてニコニコと笑った。
「ところでそのブラはどう言う意味?」
「金糸をダイヤ状のネットにしてカップに付けた
10万円のブラの付け心地後で教えてください。
男の僕にはわからないので」
亮は自分の胸筋を揉んでみた。

「じゅ、10万円もするの?」
「はい、思ったより金の値段が高かったので・・・」
「今、付けて黒崎に迫ってみるわ」
美喜はブラを持って更衣室へ行った。

~~~~~
「甲山君、キャシーは独身なのかね?」
正一郎は体を伸ばして甲山に聞いた。
「はい、そう聞いていますが」
「あれだけの美貌と資産だ、世界中の男性が放っておかないだろう」
「はい確かに、でも彼女とバランスが取れる男性となると・・・」
「あはは、確かに。申し訳ないが身長、ルックス、職業、資産を
トータルすると日本人男性では彼女の相手は務まらないだろうな」
正一郎が偉そうに言うとすべて知っている
絵里子が横を向いて笑っていた。

「それとアメリカンウエブのロビンの隣にいた日本人
 誰だかわかるか?」
「さあ、見当が付きません」
甲山は亮の姉美佐江と知っていながら白を切っていた。
「まあどのみち、一夜限りの女だろう」

そこに10万円のブラに付け替えた美喜が戻ってきた。
「お待たせしました」
「ん?美喜ちゃんなんか変わっていないか?」
「うふふ、そうですか」
美喜は胸を突き出しその谷間を正一郎に見せた。
「あはは、ママに聞いたよ。美喜ちゃんの元の仕事」
「ママ、内緒にしてって言ったのに・・・」
「ごめんなさい、黒崎さんがどうしてもって言うものだから」
美喜は怒ったふりをすると同じく
芝居をして絵里子は美喜に謝った。
絵里子に呼ばれドレスに
着替えた美喜が黒崎たちの前に立った。
「いらっしゃいませ、美喜です」
美喜は手を前に合わせ深々と頭を下げた。
「美喜ちゃん、黒田さんの脇に座らせていただいて」
絵里子は内村と黒田の間に美喜を座らせた。
「初めまして美喜です」
「美喜ちゃんか美人だね。どこかで見た事有るんだなあ」
正一郎は元ファッションモデル幸田美喜をどこかで見た記憶があった。
「ありがとうございます、みんなにそう言われます。
でも私は私です」
「ああ、そうだね。でも君のような魅力的な女性とは初めて会ったよ」
美喜が飲んだ媚薬の効果で正一郎は内村たちの存在も忘れ
今にも抱きしめたいほど美喜に惹かれていた。

「黒崎さん」
内村が声を掛けた。
「ん?」
「そういう訳でフランス料理のファストフードを
大阪でチェーン展開しようと
 思う意のですがご協力いただけませんか?」
「あ、ああ良いですね。ご協力します」
美喜に夢中の黒崎は上の空で返事をしていた。

「先ほど話をしたキャシーの件ですが、
どうやらO駅の再開発に
 投資を考えているようです」
内村は先ほどの約束通りキャシーの話をした。
「それはちょうどよかった。岡村幹事長が
F電機の工場跡地売却を
含めた再開発の参加企業を選定しているところです」
正一郎は亮たちが密かに岡村幹事長を切って
別の方向へ進めようとしている事を
知らずに誇らしげに話をした。

「甲山君、ぜひキャシーさんと話を進めてくれ。うまく行けば
 相当な利益が出る」
命令調のそれを聞いた甲山と福田は心の中で嘲笑した。
「はい、承知しました」
甲山が正一郎に頭を下げた。
「凄いですねO駅再開発とか岡村幹事長とか」
美喜は正一郎の耳元で囁いた。

「こう見えても、私は大阪で銀行、保険会社、証券会社、
学校法人、不動産、貸しビル、ホテルチェーン、旅行代理店、
食品会社、飲食業、人材派遣業、広告代理店、運送業、
アパレルメーカーと販売店、パチンコチェーン15企業を
束ねる黒崎グループのトップなんだ」
正一郎は美喜にいかに凄い人間であるかを語り、気を引こうとしていた。
「すごーい、大実業家ね」
美喜は正一郎に抱き付き胸を押し付けると
正一郎は上機嫌で笑って美喜の肩を抱いた。
「あはは」

「美喜ちゃん、あちらの席にお願い」
「は、はい」
絵里子は正一郎と親しく話をしている、美喜に指示をすると
正一郎が苦虫をつぶしたような顔をした。
「ごめんなさい、正一郎さん。彼女を目的で来るお客さんがいるので
 断る訳にはいかないの」
絵里子は美喜を売れっ子ホステスに仕立て上げた。
「ああ、そうだな。まるでモデルようなスタイルと美貌、
妖艶な立ち振る舞い
いったいあの娘何者なんだ?」

「うふふ、分かっているでしょう。美喜と言ったら」
「やっぱり、あのモデルの幸田美喜か!どうしてこんな所に」
正一郎は絵里子に言われて雑誌、テレビで売れっ子だった
幸田美喜を思い出した。
「家庭の事情で休養中していた時に、
かなり借金をこさえてその返済に
 うちで働いているのよ」
「そうか・・・なるほど・・・」
正一郎は腕を組んでうなった。

「何、納得なさっているんです。まさかよからぬ事を
考えているんじゃないでしょうね」
「いや、金をやるだけの愛人は儲からん。
うちの彼女は引退してまだまだ人気があるはずだ、
幸田美喜プロデュースのブランドの服が
売れるのではないかと思ってな
 借金の返済も早くなるだろう」
「随分お優しいのね」
「いやいや、経営者はいつでもビジネスの事を考えているものだ」