グッド・ジョブ媚薬8 黙示録93 | 渡夢太郎家の猫

渡夢太郎家の猫

2008年 3月に蘭丸の2度目の子供ができました
これで、我が家は9匹の猫です

「まあまあ、いいじゃないか。
どうだ美喜ちゃん、私が出資するから
幸田美喜ブランドを立ち上げないか、
まだまだファンは君を忘れていないはずだ。
必ず成功する」
美喜の耳元から香る香水の影響で
正一郎はすっかり美喜を信用していた。

「えっ、本当ですか?嬉しい!」
美喜は正一郎に抱き付いて頬にキスをした。
「そうか、そうか」
「ねえ、お店が終わったらゆっくりとお話をしません?」
美喜は正一郎の耳元で囁き耳たぶを噛んだ。
「いいねえ~」
正一郎は先の事を想像してニヤニヤと笑った。

そこに悦子から正一郎の元に電話がかかって来た。
「今日は何時お戻りですか?」
「どうしたんだ急に」
「ちょっと相談があります」
「今日は帰らんかもしれないな」
「そうですか・・・それでは私この部屋を出ます」
「なんだって!」
正一郎は立ち上がって店の外に出た。

「ま、待て!どうしたと言うんだ?」
「もう愛人生活は嫌になったんです」
「今日美宝堂と契約したばかりだろう。
 店の方はどうするんだ!」
「辞めます」
「馬鹿野郎!そんなに無責任に言える話じゃないだろう」
正一郎は悦子を大声で恫喝した。
「いいえ、私なんかいなくてもあなたがいれば大丈夫です。
あなたが連れてきた従業員は今まで
私を上司と思っていませんでしたから」

「そ、そんな事ない。あの店の売り上げを上げたのは
お前の力だ」
「そんな歯の浮くような話をして本気にしません。
手切れ金としてをいただいていきます」
「金、そんな物そこに置いてなんかいないぞ」

「私が知らないと思っているんですね。トイレのタンクの中に500万、
 玄関の靴棚の一番上に500万、リビングのテーブルの隠し引き出しの
 中の1千万、書斎の金庫にあるゴールドもいただこうかしら・・・」
「ま、待て。すぐ帰るから話し合おう。手切れ金なら
 きっちり払う、いやもっと払おう」
悦子に書斎の金庫のゴールドと言われ正一郎は完全に動揺していた。
『金庫のダイヤルは何処にも記録していない、おそらく悦子の脅しに違いない』
正一郎は心の中でつぶやいた。
「1時間待て!良いな」
「はい・・・」
悦子は仕方なしに承諾をした。

電話を切った正一郎は塩見に電話を掛けた。
「塩見、頼みがある」
「なんでしょうか?」
「私の部屋に行って女を殺って欲しい」
「女ってあの悦子さんですか?」
「ああ、そうだ。どこか旅行に行ったように処理をしてくれ。
1週間後に警察に捜索願いを出すから
絶対死体が見つからないようにしろよ。1時間以内に手配をしてくれ」
「はい、了解しました」

塩見との会話を終え席に戻った正一郎は
大きく息を吸って水割りを一口飲んだ。
「お仕事ですか?」
「うん、ちょっと難しい仕事があってね。お店が終わったら
打ち合わせがてら寿司でも食べに行こうか?」
正一郎はアリバイを作るために美喜を誘った。
「キャー嬉しい」
美喜は正一郎にだきついて頬を摺り寄せた。

「ねえ、正一郎さん。お仕事の話なら
 美喜ちゃん連れ出しても良いわよ。
 ただ変な関係になるとまずいから・・・私も一緒よ」
「ん?」
正一郎が絵里子の顔を見返した。
「嘘よ、心配だから誰か連れて行って」
「分かった」
正一郎は秘密厳守であるボディガードマギーに電話を掛けた。
「もしもし、マギーさん。黒崎です」