元祖 巴の龍#50 | 人はなにかしら欠けている いびつで歪んでいるから人間。だからこそ、私は私マイウェイ「ルナーズファウンテン」

人はなにかしら欠けている いびつで歪んでいるから人間。だからこそ、私は私マイウェイ「ルナーズファウンテン」

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「兄上、この狼を覚えていますか?」
菊之介が指さしながら、狼と走って来た。


「ほら、この狼」
覚えていますか、と言われて大悟はうろたえた。狼などに知り合いはいない。

「兄上、狼に知り合いはいない、と思ったでしょう」
「え、何を言ってるんだ」
 「わたしも、同じことを思ったのです」



菊之介は面白そうに笑うと
一年くらい前、サライに行く途中に助けた狼の親子があったでしょう。兄上が殺そうとした……」
大悟もぼんやりと思い出してきた。



「あの時の……結局助けたではないか。では子供だった狼か。母狼は……
菊之介は首を振った。
「そうか、そうであろうな。だがよく親もなく生きながらえたもんだ



大悟は膝をつき、狼を改めて見た。見えない右目にふれると、大悟は後ろを向いた。


「よし、久々の再会だ。お互いよう生きてこられたものだ。今夜は語り合おうぞ」


そう言っている大悟の肩が震えているのを、菊之介は見逃さなかった。

 

 

狼がひと声鳴くと、他の狼らが数頭現れた。
彼らの口にはそれぞれ獲物がくわえられており、近づいてくると菊之介と大悟の前にどさりと落とした。

 

それは山鳥三羽、うさぎ二羽だった。

そしてそれらは、大悟が子狼と母狼に与えたものと数が一致していた。
「これはあの時の。礼のつもりか



大悟の声が上ずっている。
狼がひと声鳴くと、他の狼らはすーっと消えていった。

 

大悟は鼻をすすりながら、
ありがたい。遠慮なくいただくぞ
と、獲物に手をやると早速捌いて火の中に入れて焼き始めた。

 

菊之介も火にあたりながら、大悟を手伝うと、みるみるうちに肉が焼きあがった。
おまえも食え



大悟は狼に、まだ生肉のものを放った。
狼は嬉しそうに肉をほおばった。


菊之介もその様子を見ながら、大悟と二人、狼を囲んで食べ始めた。
言葉は通じなくても、心がひとつになれば、喜びは伝わってくるのだった。

 

続く
ありがとうございましたm(__)m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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そして、またどこかの時代で