詐欺に遭う人間心理 | だれも書かない★ニューヨーク1%未満★

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日本からは見えにくい、知られざるニューヨークやニューヨーカーのこと、たまにプライベートなことを書いています。

 

今年も9月11日が近づいてきました。
世界貿易センタービルの今
 
 

 

 

 

夫の若い元部下が、不動産詐欺に遭いました。

 

アパートを探していて週末にオープンハウスを見に行ったのです。

そのうちの一軒のアパートに一目惚れ。

 

賃貸料も手頃です。

フロアプランも、ビル自体の情報を詳細に記したパンフレットももらいました。

 

立ち会いに来ていたブローカーは大手の会社の名刺を見せてくれて、知識もありなかなか親切そうでした。

 

「このアパートを借りたいんだけど」

と、その場でブローカーに伝えました。

週末ごとに何軒ものアパートを見続けて、いい加減疲れてきていた彼は早々に決めたかったのです。

 

「とりあえず名前と連絡先、会社名、年収などを教えてくれる? 他にも数人、興味を持っている人がいるから早い者勝ちになるけれど、とりあえず君のクレジットヒストリーをなるべく早く調べて返事する」

と、ブローカーに言われ、すぐにその情報をわたしました。

 

他にも候補者がいると言われて焦った彼は、とにかくできるだけ早く結果を知らせてほしいと伝えて帰宅しました。

翌日には連絡があり、無事に借りられることになったそうです。

 

「ただ、他にも気に入っている人がいてその人を待たせているから、できれば今日中にとりあえず不動産手数料(年額の15%で1ヶ月の家賃より多い)と前金1ヶ月分を払ってほしい」

「その金額が確認できれば正式な契約書をすぐに作るから」

と、言われたそうです。

 

どうしてもそのアパートで決めたかった彼はすぐに手数料と1ヶ月分を支払いました。

やっと、アパートが決まったのです!

 

あとは契約書の連絡を待つのみとホッとし、そういえば連絡がないと気づいた時は1週間が経過していました。

 

そろそろ契約書をほしいなと、そのブローカーに電話をしてみることにしました。

でも、この時点では全然疑ってなかったそうです。

 

ところがかけた電話番号は使われておらず、彼が所属するはずの会社のWEBサイトにも彼の名前は見当たりません。

 

さすがに不審に思い、その会社に連絡をしてみて初めて分かったのです。

そのアパートは確かに賃貸に出ているけれど、担当しているのは別のブローカーで、名刺の名前のブローカーは存在しないことが。

 

つまり、ブローカーになりすまし、アパーアートのオープンハウスにやってきて、勝手にショーイングして手数料と1ヶ月分を騙し取ったのです。

 

ニューヨークではこの手の被害はたまに聞きます。

 

 

でも、日本で起こったあの積水ハウスの地面士詐欺ほど大規模なのは、ホント、聞いたことがありません。

 

 

先進国では前代未聞の土地売買に関する詐欺にあってしまった積水ハウス。

業界でも3本の指に入る大手で不動産に関してはプロ中のプロなのに。

 

しかも、

何度か「怪しい・・・」と踏みとどまるチャンスはあったというではないですか。

 

例えば、

 

1️⃣契約を結ぶ前に、2度も!積水ハウスに、「偽物のオーナーと契約するな」との警告があった。

(積水ハウスが手付金支払いと仮登記を行った後に、真の所有者から「売買契約はしていない、仮登記は無効である」などと記載された内容証明郵便4通が届けられ、さらにその一通には印鑑登録カードの番号まで記載されていた)

 

2️⃣近所の方に聞き込みをした時も、写真を見せると

「あの旅館のオーナーはそんな顔じゃない」

とおっしゃる人までいた。

(そりゃそうです。顔写真は地面士が調達した偽物の顔ですもの)

 

3️⃣なりすまし所有者は、自分の誕生日を忘れる、自分の干支を間違えるなどしていた。

 

4️⃣なりすまし所有者に現住所の記載を求めた際、番地が書き間違えられていた。

 

5️⃣支払いは、銀行振込ではなく、換金が容易で引き出しなどの記録が残らない預金小切手が決済方法として利用された。

 

 

こんだけ疑っていいことがあったのに。。。

にもかかわらず、積水ハウスは1️⃣は土地売買を知った者の妨害行為と思いこみ、他は瑣末なことと判断し、逆に契約を急いじゃったんですよね。

 

なんで〜?

って、思いますよね。

 

 

 
 
ここで思い出す言葉が
ジュリアスシーザーの名言です。
 
Men are nearly always willing to believe what they wish.
人は、自分が望むことだけ信じようとする。
 
望まないことは信じない、見たくないことは見ない、都合が悪いことを信じる客観性は欠いてしまうということです。
 
喉から手が出るほどその契約を取り付けたかったがために、その障害になることは瑣末なことと考え信じなかったのでしょうね。
 
というか、ほしくてたまらない時だからこそ、都合のいいことしか見えなくなってしまう。
 
これって、辛抱強く甘い言葉や褒め言葉で攻めてくる結婚詐欺や、手に入りにくい巧妙なハイブランドの偽物を高く売りつける偽物商法も同じ手口です。
 
有能な詐欺師は、このあたりの心理を心憎いほどうまく突いてくるのでしょうね。
 
ところで、アメリカにも同レベルの賢い詐欺師がいてもおかしくないのに、なぜアメリカではここまでの大がかりな地面士詐欺は聞いたことがないのか。
 
これはですね。
 
騙しにくいようしっかり法的なストッパーがかけられているからです。
 
アメリカでは所有者が変わる際、その土地の権利について専門弁護士によるTitle Research(権利調査)を行います。
 
さらには Title Insuranceといって、日本語でいう抵当権、担保権、あるいは質権といった負の重りの鎖でつながれていないかを調査し、万が一のために保険もかけます。
 
このTitle Research(権利調査)の良い点は、この過程にはけっこう時間がかかること。
だから積水ハウスの詐欺事件のように、とにかく早く契約を済ませたい詐欺師にとっては大きなマイナスになります。
 
待っている間に、また他のところでポロポロとボロが出る可能性もあります。
さらに時間が経てば、怪しけれど「瑣末」なことと打ち消していたことに、「待てよ」と考え直す冷静さが戻る可能性もあります。
 
 
それが嫌で詐欺師たちはとにかく契約を急かすんですものね。
 
 
 

 

!別ブログでファッションや旅行などを中心に書いています。

たかが、野球帽、だれど野球帽、ハマると奥が深いってご存知でしたか?

 

!今日のエクササイズ

今日は8階からエレベーターを使わず1階まで階段で降りただけ。

フェイシャルにダウンタウンまで地下鉄で行き、20回ずつバックランジ、斜め腕立て伏せ。それだけで〜す。