数年前、パリであっと驚愕する「大事件」がありました。
エルメスのケリーやバーキンを本店のあるフォーブルサントノーレ通りに「専門店」を構えて2、3倍の価格で売って、暴利を上げていたグループが摘発され、有罪判決を受けたのです。
しかも!
この詐欺行為にはなんと、エルメスの従業員数人も関わっており、有罪判決を受け懲役となりました。
photo/pinterest
ケリー25
今日は、こちらの続きです。
ハイブランドの模造品を作って売るという詐欺行為は今に始まったことではありません。
何十億とする絵画の偽物を作り、世界のトップ画廊が見抜けなかった事件が数年前、ニューヨークでもありました。
信じられないほど中世の大作の模造品を作るのが上手いアーチストが、ブルックリンにいて、オークション会社の専門家すら見抜けなかったのです。
80年代バブルの時代、香港は偽物作りのメッカだったと言っても過言ではありませんでした。
90年代に入っても、パリに住む知人からこんなお話を持ちかけられたことがあります。
「エルメスと同じ素材を使って刻印までちゃんと入ったバッグが5分の1の値段で用意できるよ」
「え? どうやってそんなことができるの?」
「エルメスで働いていた職人さんが同じ素材を調達して作ってくれるんだよ」
それを聞いて、それが本当なら確かに美味しいお話だなと思いました。
その当時だってエルメスはやっぱり超高値の花でしたから。
しかし、わたしはよ〜く考えた結果手を出しませんでした。
「刻印まで入るとしたら、それは犯罪じゃないの?」
と、妙に真面目な性格が邪魔をしてしまったのです😩
それからオンラインで知り合ったエルメスを専門に売るディーラーが実はうちの近所に住んでいたということがありました。
彼女もオーセンティシティには太鼓判を推していました。
お値段的には、新品同様で直営店で買うより若干高いという感じでした。
わたしは元々がファッション誌のジャーナリストです。
ついつい、取材してみたいという気持ちが先立って、近所でその方とお会いしてみました。
彼女は、ご自身愛用のバーキンを持ってやってきました。
30代ぐらいのきれいな方でした。
N Yのエルメス直営店で当時お修理を担当していたクロードというフランス人とも親しいようでした。
長い話を短くすると。。。
彼女がどうしてエルメスのバッグをたくさん扱えたのかというと。。。
どうやらニューヨークのエルメスで働いている人が、自分で社員割引で買ったのを流してくれるか、ほんの少し不良があり売れないと判断したものをどうにかして入手して売っているという感じでした。
そうそう、そのあと、日本人コミュニティでも、精巧によくできたエルメスの偽物バッグをしばらく売っていた人がいました。
けれど、それは犯罪行為だと気づき、すぐに販売はやめたと記憶しています。
わたしが知るだけでもこんな歴史があるのです。
やはり、ハイブランドの商品は手に入りにくければ入りにくいほど、巧妙な手を使って偽造する人が出てくるものなのですね。
しかし、今回パリで摘発されたのは、もっともっと巧妙な分悪質でした。
最初は、女優の卵やインフルエンサーたちを雇って、顔を覚えてもらうぐらいお店に通ってもらい、きちんとウィッシュリストに載せてもらって待つ期間も経てバッグを購入し、それを正規値段の2、3倍で売っていたのです。
これだけなら、まあ、日本にもある「専門店」と同じかもしれません。
けれど、それだけでやめておけばよかったのですが、とうとうエルメスの従業員たちも巻き込んだのです。
たとえば、皮革素材や金具などを扱っている人に、こっそり横流ししてもらい、職人さんも雇い、なんと刻印まで全く同じようにする。
ロンバルディア地方から特別のワニの皮を取り寄せていた人までいたそうです。
そしてよせばいいのに、パリのエルメスの本店のあるフォーブルサントノーレ通りにショールームと称したお店まで構えて、堂々と見た目には違いがわからないバッグを売っていたのです。
これで1年の年収が4、5億円だったとか。
本店のお膝元でこれを4年間も続けていたというのがすごくないですか?
ではその商売、どこから足がついたのでしょう。
二つありました。
一つは、フェイクバイヤーの女の子たちは全てキャッシュで購入していました。
しかし、フランスでは1000ユーロ以上の物は現金では買えないのだそう。
それで、「あんた、パスポート見せなさい」ということになって、そこから何だか怪しいということになっていったようです。
もう一つは当然ですが、社員である職人さんたちがそんなことをしていて、それでもずっとバレないとしたら、それこそ経営があまりにずさんということになります。
当然、いつか足はつきますよね。
これを聞いて、わたしが感じたのは、100%絶対に本物であると保証できる商品は、今や直営店で買う以外にはないということです。
有名なリユーズドのサイト「Real Real」でも一度、偽物を見抜けずに売ってしまい問題になったことがありました。
まして、「専門店」も、厳密に言えば、100%本物とは言い切れないのが辛いところ。
結局、元従業員や現従業員が、同じ素材を使って作っていたとしても、厳密にいうとクオリティは本物と一緒にはなりません。
使い込んでくると、やはり消耗が早かったり、ベルト部分だけふにゃふにゃになったり、取っ手の部分の手垢がつきやすかったり。。。
長期的に見るとどんどん綻びが出てくるのです。
次回もこの続きを書いていきたいと思います。
もうすぐお盆ですね。
少しは暑さは和らいできたでしょうか。
どうぞご自愛の上、良い週末をお過ごしくださいませ!
別ブログで主にファッションや旅のこと、日常のプライベートなことなどを書いています。
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