「子供はうちに長期滞在する大切なお客様だと思っているの」
とおっしゃったのは、20代のファッション編集者時代、大変お世話になった女実業家の方です。
彼女は25歳で起業され、40年以上経った今もカリスマ的存在です。
起業されて間もない頃、すでにご結婚されていて、何度も流産を繰り返されていました。
一度などヨーロッパ出張の時に、慣れない土地の病院に運ばれたそうです。
しかもそんなことが、一度や二度じゃなかったと記憶しています。
「またですか?」
そんな感じでした。
けれど諦めるという文字は彼女の辞書にはなかったのです。
いつも妊娠されるたびに、お仕事でお会いしハラハラするのはこちらです。
けれど、「弱い子ならどんなに大事をとっても流産なのよ。だからわたしは普通にしているの」
そんな感じでとうとうご出産されたのは女の子でした。
それからお嬢さんが3歳ぐらいの時、一緒にハワイに行ったこともあります。
その時のお嬢さんとの接し方を間近に見て、わたしはものすごくインスパイアされました。
それまで子供には全然興味がなかったのですが、もし万が一、わたしにも子供が生まれることになったら、彼女の子育てを参考にしよう。
そう決意しました。
一つ今も忘れられないエピソードがあります。
ハワイにご一緒したある晩、みんなでレストランに食事に行くことになりました。
1台の車に数人で乗り込んで走り出した頃、お嬢さんが
「H(自分の名前)の大事なもの、忘れちゃった」
と、泣きそうになるのを必死でこらえて言ったのです。
おしゃぶりを忘れて出発してしまったのです。
お嬢さんは3歳半ばぐらいだったと思います。
「あら大変。じゃあ、取りに戻りましょう」
すぐに彼女はそうおっしゃいました。
「Hちゃんにとっておしゃぶりはとっても大切な心の拠り所だもんね。大人の都合で行くレストランに連れていかれるのに、大切なものなしというわけにはいかないわ」
もしわたしが母親なら、
「なるべく早く帰るから我慢できる?」
と聞いちゃうんじゃないかと思いました。
それに、3歳ならもうそろそろなしでいられるよう訓練する年齢です。
大きくなって、いつまでもおしゃぶりをしているのは、見た目的には可愛いものではありません。
ところが彼女は違います。
「Hにとってはとっても大切なものなんだから。それを大人目線で取り上げる気はないの」
とおっしゃるのです。
「それに、小学校に上がるまでおしゃぶりしている子はまずいないし」
「きっとそのうち、必要がなくなるときはくるから。それまで待ちましょう」
この考えにわたしはびっくりしました。
その後、わたしも子供を授かって、アメリカで評判がいい育児書をどんどん読むうちに、おしゃぶりを早い時期に取り上げられた子は、指しゃぶりをするようになる、指しゃぶりよりはおしゃぶりの方が衛生的でいい、と書かれているのを読みました。
また、
指しゃぶりをするようになると、大きくなってもやめられない。
大きくなるまでやめられないと、しゃぶった時歯を指で押す関係で歯並びが悪くなる。
歯並びが悪くなると矯正が大変。
一方、おしゃぶりをしている子は、時期が来てやめた時、指をしゃぶる習慣にはつながらない。
スパッときれいにやめられるのです。
確かに、大人になって会ったHちゃんはアメリカ人みたいにきれいな歯並びでした。
なるほど、子供を親の付属物のようには考えず
本人の意志や意向をしっかり尊重して
長く滞在する大切なお客様として接する。
そう考えれば大切なお客様である子供に
あれこれ指図したり、うるさいことを
上から目線で言うことはないでしょう。
思春期になるとこの教えを守るのは
決して言うほど簡単ではありません。
でも、ついお小言を言いたくなった時は
「娘はいずれ出ていく大切なお客様」
そう自分に言い聞かせました。
今日(アメリカ時間で)娘は25歳になりました。
長い間、我が家に滞在した大切な大切なお客様は、昨年独り立ちをしてうちを出て行きました。
もちろん今もそしてこれからも、最高に大切なゲストであることはいうまでもないことです。
子供が思春期にさしかかった時、こんなふうに対応を変えて劇的に関係が改善しました。
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娘が3歳から4歳になる頃、一大決心をしてしたことについてです。
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