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【本編】
ネロは、木刀を持って家から飛び出した。
ーーまさか、御徒町さん・・・ちえモン先生を車道に突き飛ばすつもりじゃないだろうな?クッソ!嫌な予感しかしねぇ・・・
ネロは血相を変えて走り出した。
「ちょい待ち・・・」
ネロの行く手を阻むかのように、恋華が現れた。
「・・・!!恋華か、ワリィ・・・今急いでるんだ。そこを退いてくれ。」
「・・・どうやら、ヤンデレの彼女がなんかやらかしそうだから、止めに行くつもりなんでしょうけど・・・アンタ、そんな鬼の形相で木刀持って走ってると、ヤンデレに会う前に警察に捕まるわよ?」
恋華は、目を細くして言った。
「あ、そうか・・・勢いで持ってきちまったけど、木刀は不味いか・・・・これ、そーいやお前が以前落とした奴、返そうと思って、返すの忘れてたんだ。・・・ほら☆」
ネロは、木刀を恋華に返すと
「じゃあ俺行くわ・・・」
ネロは再び走りだそうとすると恋華は再び呼び止めた。
恋華は、服の下から・・・
ヌンチャクの様に繋がっている、3つの棒を出した。
「ん?カンフー映画に出てくる三節棍か?・・・って、おぉ!」
ビュビュン ブンブン
恋華は、ヌンチャクの様に繋がっている3つの棒をヌンチャク同様に2~3回空を切りブルー●=リー様にふるって見せてから、
カチャ
3つの棒を、真っ直ぐの1つ棒状に繋げて見せた。
「お兄ちゃんが、中学時代に修学旅行でお土産に買ってきた・・・組み立て式の護身用の棒。安物だから強度はオモチャ並だけど、携帯には便利よ・・・・持ってくと良いわ。まぁ・・・使う事は無いだろうけど・・・ヤンデレ相手に丸腰じゃ・・・」
恋華は、再び長い棒状の形態からヌンチャク状の形に戻しネロに手渡した。
ーー服の下に忍ばせて携帯するのか・・・・服の下に、アイツ(恋華)こんな凶器を常時入れてたのか・・・
ネロは、無意識に恋華から渡されたヌンチャク状態の護身用の棒を鼻の近くまで持ってきた。
クンクン
ーー服の下・・・・・・・////割りと匂いが・・・
「嗅ぐな!エロ犬!!」
ネロは、恋華から飛び蹴りを食らってしまった。
「ぐぁ・・・・・痛て!・・・おう☆サンキューな・・・」
ネロは、飛び蹴りを食らって少しふらつきながら、ヌンチャク状の護身用の棒を自身の服に忍ばせて、そのまま走って行った。
ーー恋華に訳を話して一緒に探せば早く見つかるかもしれない・・・でも、その代わり今度は御徒町さんからの嫉妬のターゲットが、ちえモン先生から、恋華に移る事は間違いない!御徒町さんの件に関しては、女性に助けを求める事がそもそも論外だ!今回は一人で何とかするしかねぇ!!
ーーまずは、御徒町さんから送られてきた写真だ!写真の中に見覚えのある建物が写っていた・・・その周辺を探すしかない!無事でいてくれよ・・・ちえモン先生!!
ネロは、靴を脱いで(手に持って)走った。少しだけ足が軽くなり、足が速く動いた。
ネロは、写真に写っていた見覚えのある交差点まで行って見ると案外早くに知恵が無事である事が確認出来た。
知恵は、霧恵と二人で喫茶店の中におり、二人仲良くコーヒーを呑んでいる姿が、窓の外から確認出来た。
ーー無事だ・・・っていうか、なんでこうなった??
ネロは、すっかり霧恵に知恵は襲われているとばかり思っていたので、状況が理解できない。
呆然と喫茶店の窓の外から、知恵と霧恵を見ていると、中から知恵が「新宿くん☆こっちよ・・・」というかのように手招きした。
ネロは、喫茶店の中へ入り知恵と霧恵の座っているテーブル席へ向かった。
知恵は、ネロに霧恵の隣に座るように声をかけ・・・「何か頼まない?奢ってあげてマス☆」と伝えた。
「あ・・・じゃあ、コーヒーを・・・」
ネロは少し遠慮気味でコーヒーを頼んだ。
ネロの隣では、霧恵はフルーツパフェを美味しそうに食べていた。甘いものが好きだったのか?カナリ機嫌が良さそうだった。
どう考えても、さっきまでコイツ・・・ちえモン先生を狙ってストーカーしてたよな?餌付けされたのか?とネロは霧恵に目を配りながら知恵をみた。
「うふ・・・子供は遠慮するもんじゃないぞ☆御徒町さんにも奢ってあげたから・・・アナタも何か食べなさい?男のコだから・・・ガッツリ系が良いかしら?ナポリタンとかBLTサンドとかあるわよ?・・・・あ、チキンカレーもあるわね?新宿くん・・・カレー好きだったわよね?恋華ちゃんから聞いたわよ??☆」
知恵は、クスっと笑いながら目の前の鼻をつついた。
今日の知恵は、白衣姿ではなく・・・黒い襟付きのワイシャツと、少し開いた胸元にシルバーのネックレス。眼鏡は外していた為、クリっと丸い目が強調されており・・・見つめられると吸い込まれてしまいそうな・・・・そんな魔力を感じさせる。
ネロは、知恵の胸の谷間が見えてしまい顔を赤くして・・・・「あ、BLTサンドでお願いします!」と伝え、全力で目を逸らした。
「まぁ、今日はカレーじゃないのね?」
「はい!俺、やっぱりカレーは自分で作るのが一番だと思ってるので・・・」
「うふふ・・・今度先生も、食べてみたいな☆」
「あ・・・はい!機会があれば、お作りします!」
ネロは、顔面を真っ赤にしながら必死で照れ隠ししている所がバレバレの状態でコチコチに固まった不自然な日本語で話していた。
そんな様子を霧恵は、黙って上目遣いでネロを見ていた。
「今日はねー☆交差点で赤信号が中々変わらなくて、退屈だなー・・・って待ってたら、偶然後ろを振り返ると・・・御徒町さんが居てね☆」
「まるで、御徒町さんも・・・私に声をかけようとしてくれたみたいで・・・手を前に伸ばしていてね・・・☆」
知恵は、笑顔でここにきた経緯を話した。
「せっかくいい天気だから、近くの喫茶店でお茶しない?☆って誘ったデス☆会えてよかったデスね☆」
ーー先生!!それ、偶然じゃなくて・・・・
交差点で赤信号 の時に
後ろから ・・・ずっと後からつけてきた
御徒町さんが!
手を伸ばして
貴方を車道に突き飛ばしそうとしたんです!!!
コロされそうだったんですよーー!!!!
「えぇ・・・ホントに偶然でした・・・私も、もしかしたら大塚先生じゃないかな?って思って・・・声をかけようかと思った時に・・・先生が突然後ろを振り向いたから・・・ビックリしちゃって・・・」
霧恵は、フルーツパフェを美味しそうに食べながら、棒読みの話し方をしながら知恵の話に合わせた
・・・口元が笑っているが、目が笑っていない。
「さて、せっかく・・・新宿くんもいるしぃ・・・ちょっとお節介かもだけど、生活指導しちゃおっかな☆うふふ・・・ゴメンなさいね☆」
知恵は静かに笑った。
「え??生活指導??」
ネロは、頭上にクエスチョンマークが浮かぶようにキョトンとした。
「新宿くんと御徒町さん・・・二人とも、最近・・・LINEしてるわよね?・・・それでね、新宿くんがいるトコで話すのも悪いんだけど・・・あえて、今言うわ・・・」
ーーあ、
「LINEってね・・・お互いに仲良しの人同士でするモノだと思うの・・・二人は、どんな関係かは先生も知らないし、二人の仲にとやかく言う資格もないけどね・・・・でも、やっぱり・・・・お互いに生活リズムがあるからね☆」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
霧恵は、知恵の話を黙って聞いた。
「うー・・・ん・・・御徒町さんは、新宿くんの事好き??」
「・・・え//////」
突然の知恵の質問に霧恵は顔を赤くした。
「先生は・・・・新宿くんの事好きです。」
「あ////////」
ネロは、ドキっとして固まった。
「そして、御徒町さんの事も同じくらい大好き☆」
「・・・え!」
「・・・・好きじゃなかったら、こんな風にご馳走なんかしませんよ☆・・・ここの喫茶店結構値段が高いデス・・・・へへへ・・・・」
「学校の生徒はみんな好きです!ホントは、みんなご馳走したいけど・・・先生のお給料じゃ、みんなご馳走できないので・・・今日ご馳走した事は、内緒にしてほしいデス・・・・そーじゃないと、先生・・・クビになっちゃうデス☆」
「先生は、みんなともっと仲良くしたいデス!・・・・でも、LINEは・・・しなくてもいいです☆」
「・・・・・・どうして、先生はLINEはしないんですか??」
霧恵は不思議そうに聞いた。
「うーん・・・やっぱり、みんなそれぞれ自分の生活があって・・・そこで、それぞれの幸せな時間があるです☆・・・ひとりでお風呂に入ったり、テレビドラマを真剣に見ている時間や、読書に熱中する時間や・・・トイレだってあります☆・・・・夜は沢山寝て、次の日健康な状態で学校に行って欲しいです☆・・・・一人一人が、自分の生活を持ってます・・・・だから・・・・・」
知恵は、霧恵の片手を握り・・・もう片方の手でネロの手を握った。
「大好きな・・・ホントに大好きな相手に自分の気持ちが伝わらなくてもいいの・・・・」
知恵は目を閉じてゆっくり話した。
「・・・・どうしてですか?・・・・自分のキモチが伝えられないと、辛いだけじゃないですか?」
霧恵は、少し大きな声で聴いた。
知恵は、目を開けてゆっくり話した。
辛くなんかないわ・・・・
ホントに好きな人には、いつだって・・・
幸せで居て欲しいから・・・・
ネロの注文したBLTサンドが届いてからは、他愛もない雑談をして、
お互いに笑いあって・・・
最初のわだかまりが、嘘のように消えて・・・・
ネロと霧恵も、自然に笑いあえた。
まるで、始業式の当初の時に戻ったかのように・・・・
日が暮れてから、3人は店を出た。
ネロは、良い休日を送れたな・・・と思い、思い切り背伸びして、両手を上にあげてあくびした。
「今日は・・・ありがとうございました・・・大変参考になるお話しが聴けて、ご馳走までしていただいて・・・」
霧恵は、知恵に丁寧にお礼を言った。
「いえいえ・・・・まぁ、この事は内緒デスよ?」
知恵は、可愛らしくウィンクをしてみせた。
「はい☆・・・・・それと、キリエ・・・・もぅ、新宿センパイにLINEはしません!」
「え???」
霧恵の突然な告白に、ネロは自分の耳を疑った。
「キリエ・・・新宿センパイの事がホントに好きなんです!愛しているんです・・・・」
「////////////////////」
「だから、新宿センパイには・・・幸せになってもらいたい!・・・・もぉ、困らせたくない・・・・」
霧恵は、自分のキモチを素直に打ち明け、ネロにLINEはしないと誓った。
嘘のように全てが解決した。
やはり・・・大塚知恵の真剣な語りかけが、霧恵の心に響いたらしい・・・
霧恵自身は、元来素直で真面目な娘である。ただ思いが募り過ぎた為、自分でコントロールが効かなくなり、
相手の気持ちを考える事が出来なくなってしまったのだ。
「新宿くん!!モテるですねーー☆」
バン
知恵は、ネロの背中を思いっきり平手で叩いた。
「うわっ////」
ネロは、少しふらついて前傾姿勢になった。
カラン カラララン・・・・・
「!!!!!しまっ・・・・・た・・・・」
ネロのシャツから、恋華からもらった組み立て式の護身用の棒が大きな金属音を響かせ床に落ちた。
ネロは、慌てて隠そうとして床に転がる、組み立て式の護身用の棒を拾おうとしたが・・・・手で掴むと、さらにバラバラになり、脆くも壊れていった。
-強度はまるでオモチャ並みなの-
ネロは、恋華の言葉を思い出した
ーーって、脆すぎだろ??
「せ・・・・センパイ・・・それって・・・・もしかして・・・」
霧恵は、ネロが慌てて落としたモノを拾おうとする姿を見ながら、少し声を震わせて言った。
「あ・・・・・」
知恵は、片手で自身の顔を隠すように「あちゃー・・・・もぅ、なにやってるのよー」と言わんばかりなポーズを取った。
言葉を失った・・・という表現が適切である。
ネロが落としたのは、どう見ても、誰が見ても、間違いなく・・・武器!といえる物だった。
「新宿センパイ・・・・・その、落としたモノ・・・・なんですか?」
霧恵は、涙ぐんでいた・・・・
霧恵にとって、「愛している・・・幸せになってほしい」とまで口に出していった相手の落としたモノは、どう見ても隠し持っていた武器・・・・
「あーーーー・・・・これは・・・・・・・・・」
ネロは、全力で言い訳を考えた・・・・
ーー駄目だ!!
せっかくハッピーエンドで終わるハズだったのに・・・
俺のワンシーンで、全てがぶち壊し・・・・
なんでもいい!
この場が丸く収まる言い訳を考えないと!!
「新宿センパイ!!・・・教えて!!」
「これは、なんなんですか???」
「キリエは・・・
キリエは、新宿センパイの傍に居ちゃ・・・
ダメなんですか??」
つづき
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