藤波の花は盛りになりにけり ~奈良旅行⑨~ | そろそろ、ソロ活

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お漬物バイキングと茶粥でパンパンになった胃袋を少しでも軽くするべく、テクテク再開。

 

奈良といえばお馴染みの、春日大社を目指します。

 

お昼も過ぎて、観光客の数はピークに。

 

ただ、奈良公園は広いので、歩きにくいほど混んでいる、という感じもなく。

 

新緑の美しい木立の空気を胸いっぱいに吸い込みつつ、ゆっくりお散歩できました。

 

 

春日大社の手前にある『萬葉植物園』の前に、「藤開花」と大きく書かれた看板を発見。

 

私は植物全般、まったくと言っていいほど関心も知識もなくて…。


花束をもらうくらいなら、お菓子をもらう方が断然嬉しい、という情緒のないオンナ。

 

そんな私にも一応好きな花はあり、藤の花はそのトップ3に入ります。

 

(ちなみに、その他の2つは彼岸花と芍薬)

 

これは見る価値ありと思い、立ち寄ってみることに。

 

 

ところで萬葉植物とは、いったい何ぞや?と思われた方は私だけではないはず。

 

ホームページによると、

 

『萬葉集には約180種類の萬葉名で詠まれた植物が登場します。

 

現代の植物名とは異なるものも多く、多数の植物説があるものを含むため、約300種類が萬葉植物とされています。

 

昭和7年、萬葉集にゆかりの深い春日野の地に昭和天皇より御下賜金を頂き、約300種の萬葉植物を植栽する日本で最も古い萬葉植物園として開園いたしました。』

 

なるほど、万葉集の中に登場する草花を集めた植物園ということですね。

 

 

アヤメやスミレといった、私でも知っているような花もありますが、パッと見、雑草に見間違うような植物も。

 

全体的に、よく言えば趣のある、悪く言えば地味な(失礼...!)植物園です。

 

ただ、万葉の時代にはこういう植物を愛でて、

 

「をみなへし 佐紀沢に生ふる 花かつみ かつても知らぬ 恋もするかも」

(わたしはあなたに逢いましてから、これまで一度も経験のない、恋い焦れ方をいたしていることです)

 

などと恋の歌を詠んだのかと思うと、何とも風雅な気分になります。

 

 

途中、池の傍にちょうどよさげなベンチがあったので、万葉の時代の草花に囲まれながらしばし読書タイム。

 

なんと贅沢な時間!

 

 

お目当ての藤の花は、園内の奥の方にありました。

 

盛りは過ぎていたようですが、まだ見ごたえ十分。

 

白い藤、紫の藤、ピンクの藤などいろいろな種類があり、鮮やかな新緑とのコントラストが鮮やかです。

 

 

藤の花が詠まれた歌は、万葉集の中に多々あるようです。

 

奈良にまつわる一首といえば、こちら。

 

「藤波の 花は盛りに なりにけり 奈良の都を 思ほすや君」

( 藤の花が波うって盛りになりましたね。奈良の都を恋しくお思いでしょうか、あなた)

 

大宰府で大伴四綱が大共旅人に贈った歌だとか。

 

 

ちなみに、奈良といえば、だれでも聞いたことがある一首。

 

「あおによし 奈良の都は 咲く花の にほふがごとく 今盛りなり」

(奈良の都は、咲き盛る花のように、その繫栄振りは見事なものです)

 

この歌に出てくる花は一般的には「桜」のイメージが強いようですが、当時隆盛を極めた藤原家を称えたことから「藤」ではないか、という説もあるんだとか。

 

 

恋文だけでなく、歌でおべっかも言うとは…。


奈良時代の人たち、やるな!

 

などと思いつつ、萬葉植物園を後にしました。