前日
先輩「明日 (卒業)式終わったら行ってもええ？」
私『どこに？』
「お前んち」
『………』
「それとも今日一緒に帰る？」
『 あ…（察し） お気持ちは嬉しいのですが明日は普通の日です でもありがとうございます 気持ちだけで充分です』
「あたり前にする言うたのお前やろ」
『初めに言い出したのは先…輩 です あたり前にするのは私の誕生日以外です』
｢そんなに嫌？ 俺に祝われるの」
『そうではなくて 誰からも祝って頂きたくないんです すみません ええ加減忘れろ言われたのに』
「やったらプレゼントだけ渡す」
『………』
「それもダメ？」
『だめというか…』
「家にあるから今日一緒に帰ろ」
『もう買うてくれとるんですか？』
「うん」
『……お気遣い頂いてすみません でも一緒に帰るって…』
「明日来てくれる？」
『………』
もう買うてくれとるのに断るのはどうかと思うけど
先輩の家には行けない
毎年毎年申し訳ない気持ちでいっぱいになる
ありがたいけどどうしても喜べない
誕生日なんかなくなればええのにって思う
もううんざり
いつまでも忘れられん私にうんざりする
こういうことで気まずくなるのももううんざり
『でしたら… お願いがあります』
「何？」
『本当はもう終わりにしたいのですが用意して頂いているということなので今回で最後にすると約束して頂けますか？』
「………」
『約束して頂けるなら今回限りでお受けいたします』
「………」
『ぁあの… すみません…』
「 ？ 」
『なんか言うてて随分偉そうだなと思って… ただ気持ちは本当に嬉しいんです でもどうしても喜べなくて… “お祝い”というのが引っかかるというか… すみませんいつまでもこんなんで… 自分でもうんざりするんですが…』
「なんで？ 母さんのこと思っての事やろ？ お前が謝る事なんか何もない 俺の方こそごめん 母さんのせいで
『それは絶対違います！』
「うん でも親父も言うたみたいやけど俺からももう一度謝らせて ごめんな」
『やめてください
』
「これで最後にする」
『……え？』
「最後なんやろ？」
『………』
「これで最後にするからもらってくれる？」
『……（ うん ）』
「ありがと」
何様なんやろ
ほんま自分にうんざり
（ 帰る準備中 ）
ﾌﾞﾌﾞﾌﾞ
？ 直にぃからや
迎えに来た
いつものとこ
えっ
どうしよう
今日は先輩と…
「長谷川ー」
『 Σ！？ 』
「悪い もうちょっと待ってて」
『え！？ あ…！』
「あ？」
（周りの視線）
『えっと』
「すぐすむから」
『いや！ そのっ』
「 ？ 」
なぜみんながおるところで言う！！
メールにして！ 頼むから！！
『Ｏ先生の資料のことでしたらあとでメールしますので！』
「は？」
『急用ができたので今日は帰ります！ 失礼します！（出）』
「ちょ…！ おい！」
『あとでメールしますので！（逃）』
やばいやばい！
メール！ メールしなきゃ！
えっとえっとスマホ
うお 手がふるえる
直にぃが迎えに来てくれたみたいなので先に帰ります
なんかこれ大丈夫…？
先輩と帰るのが嫌で逃げたみたいに思われんかな…
最後にするって言ってくれたのに
（ 駐車場 先輩車さんのそば ）
「わ！ ビッ…クリした…」
『………』
「何しとるんや そんなとこで」
『……草ぬき…』（２度目の犯行）
「やから！
風邪ひくやろて！」
『………』
「ったく… 直人は？ さっきのメールは嘘やったんか？」
『嘘やありません 直にぃには先に帰ってもらいました』
「……まぁええわ とにかく乗って」
（ 乗車 ）
ぶいーん
「さっきの何」
『やって… あんなとこで言うから…』
「しょうがないやろ急いどったし やないとお前勝手に帰るやろ」
『………』
「あ（車止） ちょっと待っとって」
『 ？ 』
（ 降車 ）
どこ行くんやろ
こんなとこに止めて
誰も来ませんように！
誰も来ませんように！！
「お待たせ って どうした？」
『（足元隠） ちょっと狭い所に入りたくなって…』
「意味分からん（笑） ほら」
『あっ おしるこさん！ あったかぁ…（ぬくぬく）』
「ふふ（笑）」
『 ？ 』
「前もあったよな」
『何が？』
「そこに隠れるの」
『そうでしたっけ？』
「そこに入れるの子供かお前くらいやな（笑）」
『子供と一緒にしないでください』
「ふふｗ」
『いただきます』
「どうぞｗ」
（ 飲 ）
ふぃー… おいしー…
ほっとする
おしるこさん偉大
むかむかも消してくださる
神
「くくく…（笑）」
『いつまで笑っとるんですか』
「ごめん（笑）」
相変わらずこういうとこは嫌やけど
ふたりっきりで気まずくならずにすんだからよかった
「ありがとな」
『 ？ 』
「俺と一緒に帰ってくれて」
『約束したので…』
「うん ありがと」
『……（飲）』
今日で最後
最後の誕生日
（ 先輩家到着 ）
「 ？ 上がらんの？」
『ここで待ってます』
「………」
『……あの
「今日で最後なんよな？」
『え…？……はい…』
「最後くらい一緒にいたい」
『（ どきっ ）』
「ダメ？」
『でも直にぃにご飯
「今日ぐらいええやろ」
『………』
「それともあとで来てくれる？」
『プレゼント用意してくれとるのも申し訳ないのにこれ以上は…』
「最後なんやろ？」
『………』
「ダメ？」
『………』
もう先輩の部屋には行かんって決めた
最後やからって許されない
「なぁ」
『（ びくっ ）』
「こんなこと言いたくなかったんやけど 聞いてええ？」
『なんでしょうか…』
「もしさ おじさんが俺の誕生日に亡くなって俺がもう祝ってほしくない言うたら お前どう思う？」
『………』
心臓がとまるかと思った
どう思うって
どう思うかな…
『………』
「ごめん（頭撫） 嫌なこと聞いたな 忘れて」
『………』
「取ってくるから待っとって」
『……（ うん ）』
祝ってほしくないのはおばちゃんのせいやない
でもそう思われる態度とる私が悪い
「お待たせ」
『………』
「どうかした？」
『いえ…』
「はい（渡） 誕生日おめでとう」
『ありがとうございます…』（受取）
「じゃ 送りますか」
『えっ 大丈夫です 歩いて
「そうやな 歩いて送るか」
『え…？』
「かして（荷物奪）」
『あっ』
「（ 歩 ）」
『待ってください』（追）
「あ そうや（止）」
『 ！？』（急止）
「グリコしながら帰る？（笑）」
『………』
「冗談やって」
『あの…』
「行こ」（歩）
『………』（止）
「（振返） どうかした？」
『おばちゃんのせいやありません…』
「え？」
『おばちゃんのせいやありません 絶対に 嬉しかったんです おじちゃんに私の誕生日祝いたかったからて聞いて…っ うれしかった…っ』
「うん」
『うれしかったんです…』
「うん 分かった」
『……ｯ…』
「ごめん 俺が変なこと聞いたから」
『謝るのは私のほうです… すみませんでした…』
「お前も謝る必要ないやろ」
『でも私が
「はいはいもう終わり 誰も悪くないって事で 最後なのにそんな顔見たくない」
『………』
「お前も言よったろ？ 誕生日は生まれてきてくれてありがとうってお祝いするんよて」
『………』
「生まれてきてくれてありがとう 会えてよかったお前に 心からそう思うよ」
なんで…
なんで私なんかを
私はこんなに苦しいなら出会わなければよかったて思った
生まれてこなければよかったて思った
好きにならなければよかったて思ったのに
先輩のことたくさん傷つけたのに
それでも会えてよかったて
こんなにひどい人間なのに生まれてきてくれてありがとうて
そんなこと言われたら私
おかしくなる
「留衣？」
『ごめんなさい…』
「 ？ 」
生まれてきてごめんなさい
「なんで謝るんや」
『………』
直にぃ「留衣」
私『 ？ え… どうしたん…』
直にぃ「腹減った」
私『あ…ごめん… じゃぁ あの ここで…』
先輩「………」（荷物渡）
私『（受取） ありがとうございました』
先輩「うん」
直にぃ「邪魔した？」
私『え？ あ いや 大丈夫… ごめんねさっき迎えに来てくれたのに』
「別に」
『………』
「なんかあった？」
『（( ううん )）』
「………」
こんなにつらいなら生まれてこなければよかったて何度も思った
出会わなけれなよかったて何度も思った
でももし先輩に出会っていなかったら 私は今でも家から一歩も出られずにみんなに迷惑かけまくってたかもしれない
迷惑どころやなくてもっと最悪なことやらかしてたかもしれない
先輩がいなかったら
“生まれてきてくれてありがとう 会えてよかったお前に 心からそう思うよ”
出会わなければよかったなんてどうしてそんなこと思えるんやろ
どうしてそんな風にしか思えんのやろ
何度でも謝るから どんなことでもするから
今すぐ時間を巻き戻してほしい
はじめから 全部 やり直したい
「何もろうたん？」
『……最後…』
「え？」
『最後にしてくださいって言っちゃった…』
「………」
これで最後
最後にする