男子セブンズ日本代表候補 SDS浦安合宿@浦安Dパーク | ラグカフェ編集部の取材メモ

ラグカフェ編集部の取材メモ

ラグビースタジアム専用マガジン『ラグビーカフェ』
準オフィシャルブログ

●取材班
(尾)おもに男子 (さの)おもに山梨
(匂)おもに美人 (有働)おもに代表
(岡)おもにタグ (夏)おもに栗田工業
(編集長)おもに世界

パリオリンピックの開幕まで約1カ月。男子セブンズ日本代表候補は準備の最終段階を迎えている。

アメリカ遠征を前に浦安Dパークでの合宿が開催され、13日の練習は公開で行われ、報道陣やファンがその様子を見学した。

今回の合宿にはサイモン・エイモーHCは不在。練習はフィットネス向上(コンディション調整?)のメニューが中心となった。ボールを使ったメニューは、ポジション、役割別に分かれたプレーの確認が主体でゲーム形式のものは行われなかった。

シャトルランは見ているだけでもキツさが伝わります。

個々のスキルトレーニングやプレーの確認も行いました。

練習後には見学に訪れたファンにも挨拶を。

 

女子セブンズ日本代表(サクラセブンズ)がHSBCセブンズワールドシリーズのコアチームに残留したこととは対照的に、男子セブンズ日本代表はコアチーム昇格を逃している。サイモン体制となり、ある程度選手が固定された状況で強化を続けてきてはいるが、その成果が成績として見えていない。パリオリンピックへの出場権は獲得したものの、本大会での戦いは厳しいものになることが予想される。

 

もちろん、練習後の囲み取材に登場した林大成、丸尾崇真、石田吉平たちも自分たちが置かれている状況は理解していた。

林大成

「オリンピック予選後、1月からはアジアで勝つためではなく、オリンピックで世界の強豪相手に勝つためのラグビーへスタイルを一新して積み重ねてきた。それはサイモンHC自身も経験のないラグビーで、いつ完成するのかわからない状態で自分たちも最初は全然うまくいかないところからスタートした。4月5月は良い形でこれていたがドイツ大会(ミュンヘンでのHSBCセブンズチャレンジャー2024)で結果が良くなかった。自分たちでも完成が見えない状態ですが、日々のプロセスをやり切って自分たちのベストを毎回積み上げていくことで確実に勝つ確率を上げてこられていると思う。リスクを取って勝ちに徹するマインドセットを持って臨めば、いい結果を得る確率を最大限にあげられると思う」

 

セブンズの世界は変化が激しく、正式競技に加わったリオ大会で通用した戦術で今も勝てるかどうかはわからず、その可能性は低いだろう。ブレイクダウンに対する考え方や、キックオフの処理、ボールの展開や攻守における人の配置など、挙げればキリがない。

コアチームは定期的に勝つ確率の高い方法論を試しあいながら、しのぎを削っている。一方の日本はその舞台にあがることができておらず、サイモンHCも含めて想像の中で勝つ確率を高める「正解」を探し続けている。

 

それでもチームの目標は「メダル獲得」だ。

林は続ける。

「メダルを取るために、リスクを背負わないといけないことは明白。リスクを背負った結果、どうなるかは誰にもわからない。そこで自分たちが安定を求めてしまったり、今、上手くいっていないから元のスタイルに戻して、チャレンジャーシリーズで結果を出すためのラグビーにしてしまったりしているとオリンピックでメダルを取る確率は限りなくゼロに近づくと思う。そこは自分たちでメダルを取ることだけをターゲットにして、リスクを取らないといけないことは全員わかっているしそこにブレはない」

あくまでも前向きに準備を進めていることを強調した。

セブンズは15人制とは異なり、試合の間隔が短い。数時間の準備で相手チームに対する充分な対策が取れるわけではない。この点は未知のチームである日本に有利に作用させることができるのではないかという私見にも触れていた。

丸尾

「最近、個人として思うのは、メダルもそうだがいかに自分たち、個人がベストを尽くすか。個人が最大限ベストを尽くしたときに結果が最大化されると思う。メダルというと抽象的というかボヤッとしていますけど、自分が目標として掲げるのは最大限ベストを尽くして出し尽くす。それこそが結果を最大限にしてメダルにもつながると思っている」

英国での進学を目指して渡英していた丸尾は、現在も現地での大学入学を目指して勉強中だという。パリオリンピックはラグビーへ復帰した丸尾にとって一つの区切りとなる。

もちろん、大会後もセブンズを続けることも選択肢のひとつながら、長い人生を考えてもその選択肢の優先度は低そうだ。メンバー入りに向けて、最大限のベストは実を結ぶだろうか。

石田

「チームとしては一体感が出てきたので、チームのまとまりが最近増してきたのが良いところ。個人的にも100%ではないが、残りの時間で上げていきたい。東京大会に出場したという実感はないので今回が初めてというフレッシュな気持ちでいますし、パリ大会はパリ大会なので自分の力を出して勝負をしたい。」

 

東京大会に出場した実感がないという石田、パリ大会にかける意気込みは強い。

代表活動優先を条件のひとつとして選んだ横浜キヤノンイーグルスに対しても、本大会出場とその成果は最大の恩返しとなるはずだ。

東京大会を経験しているのは、現在のメンバーでは石田をはじめ加納遼大、本村直樹(トレーニングメンバー)と少ない。

4年間で選手は大幅に入れ替わった。SWSのスポット参加やチャレンジャーシリーズで実戦経験は積んでいるものの、実績としては心許ないことも事実だろう。

石田はオリンピックにおけるラグビーの認知度は低く、注目もそれほどされないのではと話しながら「信じてハードワークしたい」と決意も口にした。

リオ大会で瀬川智弘HCに率られ、「明るく、楽しく、元気よく」を体現し4位の結果を残した男子セブンズ日本代表。以降の強化が順調だったとは言い難い。サイモンHCとともにパリに挑むチームは自分たちが積み重ねてきたものを信じて、その先にどのような成果を得るのだろうか。

 

(尾)