太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2024 花園大会 & 年間表彰 | ラグカフェ編集部の取材メモ

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太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ第4戦花園大会は、5月25日(土)と26日(日)の2日間、大阪府東大阪市にある花園ラグビー場で開催された(太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ大会全体概要については、こちらの記事よりどうぞ)。

 

東花園駅から徒歩8分ほどの場所にある花園ラグビー場は、言わずと知れたラグビーの聖地だ。駅からスクラムロード花園と呼ばれる通りを抜けると、突如巨大なスタジアムが出現する。

取材に向かった大会2日目は、日差しがあり気温は高め、乾燥しているものの駅から歩くあいだに汗ばむほどだった。

 

 

この日はインターバルにラグビー体験やトークショーなどのイベントが開催されたこともあり、スタジアムのまわりに並んだフードトラックや、子ども向けのふわふわドームは列ができるほどにぎわっていた。

 

 

 

第4戦となる花園大会は、太陽生命ウィメンズセブンズシリーズの最終戦。ここまでの3大会で、2大会を制したながとブルーエンジェルス、1大会優勝の東京山九フェニックスラグビークラブ、常に上位につけたPEARLSが総合ポイント52で並び、総合優勝決定は最後までもつれこんだ。

 

 

 

大会初日に、第3戦鈴鹿大会で準優勝だった東京山九フェニックスがプール戦6位に沈み、さらに大会2日目の準々決勝で、初日から勢いのあったYOKOHAMA TKMに敗れる波乱の展開。

プール戦1位のながとブルーエンジェルスは、2日目の2試合を勝ちきり順当に決勝へと駒を進めた。

一方、PEARLSは2日目の2試合目にTKMと対戦。突破力を見せつけリードしたものの、ホーン後に粘りのトライを決めたTKMが同点に持ち込み、得点した時点で試合終了となるゴールデンポイントによる延長戦に突入。わずか開始30秒でTKMが左隅にトライを決め、鈴鹿大会5位だったTKMが決勝に進出した。

 

この時点で、ながとブルーエンジェルスの総合ポイントが山九とPEARLSを上回ることが確実となり、総合優勝が決定した。

尚、決勝は、ながとが2022年の熊谷大会以来に決勝の舞台に立ったTKMを1トライのみにおさえ、24-5で快勝した。

 

 

ながとブルーエンジェルスの藤崎春菜キャプテンに話を聞いた。

まず、優勝したことの率直な気持ちとして「ほんとうに嬉しくて、チームメイト全員がハードワークしてくれたので、ありがとうと言いたい。それに、会社やスポンサーの方もたくさん応援に来てくれて、その声もグラウンドまで聞こえていて、そうした応援が私たちの力になったので、皆さんにもありがとうという気持ちを伝えたいです」

 

試合後のピッチインタビューでは涙があふれていた藤崎選手。「太陽生命は人生賭けて戦ってきたので、これまでハードワークしてやってきてよかったと思いました。各チームが強いので、私たちも簡単に優勝できるとは思っていなかったし、運も味方についてくれたのかなと。私たちが目標としていたところに、笑顔で立てたことがほんとうに嬉しい」と振り返った。

 

 

今シーズンはキャプテンとしてチームをまとめ、年間MVPにも輝いた。

「年間MVPをもらえると思っていなかったので、名前を呼ばれた時はびっくりしました。でも、個人のものではなく、チームメイトやマネジメント、NBAファミリーがわたしを支えてくれた結果。勝ちたいという気持ちのあるチームが優勝できるから、勝ちたい気持ちを存分にグラウンドで出そうとずっと声かけをしていました。グラウンド外でも、外国人日本人、言語も関係なく、コミュニケーションをとれていたことはよかったと思います」

そして「まずは今日、全員で喜びあいたい。チームとしてはすこし休んで、外国人選手は帰国する選手もいるけど、ながとに残る日本人選手は、コミュニケーションをとりながらハードワークしていきたい」と笑顔で話した。

 

 

ここからは、出場12チームのうちラグビーカフェで取材を続けているチーム、選手のレポートをお届けする。

 

まず、追手門学院大学女子ラグビー部VENUS。

大会初日は、前回大会の順位もこれまでの総合ポイントもVENUSを上回る日本体育大学ラグビー部女子から1勝をあげ、2勝1敗としてプール戦を4位で終える。日体大との試合後、ピッチインタビューで徳永結羽キャプテンが涙したのは、これまでなかなか勝ちきることができなかった相手だったから。大きな1勝となった。

 

大会2日目、初戦はナナイロプリズム福岡との試合。なかなか自陣を抜けだすことができず、0-27で試合終了。

続く2戦目、日本経済大学女子ラグビー部AMATERUSとの対戦では、連携のとれたアタック&ディフェンスで6トライをあげ、34-5で5位決定戦へと駒を進めた。

 

VENUSにとって最後の対戦相手は初日に貴重な勝星を奪った日体大。大学生チーム同士の対決、どちらが意地を見せるか。試合が動いたのは前半1分すぎ、先制したのは日体大。そこから約2分おきにトライを重ね、その勢いは後半も止まらず。前日とは別のチームかのように気持ちを入れ替えてきた日体大に、VENUSは得点すらできず0-38で今大会を6位で終えた。

総合順位は9位。昨年の8位から順位をひとつ落とす結果となった。

 

 

まず話を聞いたのは、4大会のうち前半2大会を欠場した小西春菜選手。

前回の鈴鹿大会から復帰し、いきいきとピッチを躍動する姿が印象的だった。客席からも「春菜、おかえり!」と大きな声援があがっていたが「トライしたときなどに、その声はよく聞こえていました。戻ってこられてよかったなと、ラグビーが楽しいとまた思えた大会でした」と小西選手。

今大会については「今シーズン初めて上位リーグに行けて、強いチームと戦えたのはよかったと思います。ただ、強いチームと当たったときに勝てない悔しさが残りました。5位決定戦では初日に勝った相手にボロボロに負けて、体力面も含めて見直さないといけないところがあると改めて思いました」と振り返った。

 

初日をプール戦4位で終えたことについては「自分たちがいちばん驚きました。初日はいいかたちで終われたけれど、2日目は今までの準備不足を身にしみて感じました」

 

欠場した2大会を含めた2か月で成長した点について「ひとりで戦っているのではないということを学びました。今まではうまくいかないときに自分がこうすればいい、こうしなければいけないと精神的に追い込んでしまって怪我にもつながってしまっていたけれど、すこし休部して戻ってきたときに、ひとりで背負わなくていいんだと思えるようになって、チームスポーツをやれてよかったと思えました」と精神面での成長を挙げた。

小西選手が目指すのは「小さな巨人」。その理想像には「まだまだ」と言うが、大好きな漫画『ハイキュー』でも、身長の低い主人公がバレーボールの世界で強いメンタルをもって成長していく姿が描かれていて、励まされているとのこと。

 

総合順位9位については「今大会ではじめて上位にいけたけれど、結局は大会6位。これは、強い相手と戦えたうえでの悔しさです。すごくいい刺激になったと思うので、これをバネに来シーズンは総合で9位よりも高く上に行けるように、練習からがんばっていきたい」と前を向いた。

 

 

続いて、今大会も2日間通して攻守とも活躍が目立った、松田向日葵選手。4月の熊谷大会で話を聞いた際にも印象的だったのが、上位チームへのこだわり。

 

まず「目標としていた上のリーグに今大会で初めていけたので嬉しかったけれど、最終戦の終わりかたが、気持ちも含めて残念でした。日体大さんの修正力には、学ぶものがあった。自分自身のプレーとしても、日体大さんの圧に押されてしまった部分もあったけれど、次の学生大会までに気持ちを切り替えてレベルアップして、優勝を目標にがんばりたいです。チームもすごくいいチームだから、勝って終わりたい」と2日間を振り返った。

年間の大会数が少なく、7月に開催される学生大会が他チームと公式に戦える年内最後のチャンスとなる。現在2年生、初めに話を聞いた小西選手同様、中心選手としてチームを支える立場だ。その小西選手については「爆発力があって唯一無二。ポテンシャルの高い選手」と評価する。

 

今後のラグビーとの向き合いかたについては「応援してくださる方への感謝の気持ちを忘れずに、日ごろから自分勝手な行動はせずに、一つひとつ意識したい。プレー中は自分だけではなく7人全員のことを考えて、チームで勝てるようにがんばっていきたいです。いきなりうまくはなれないから、ウェイトも自分と向き合って、日々の練習からしっかり取り組んで、少しずつでもレベルアップしたい」と話した。

インタビューではごく真面目な回答をしてくれるが、客席には「不思議ちゃん、松田選手」と手作りのパネルを掲げるファンも。先の小西選手は「妖精」と呼びかけるほど。近いうちにそんな一面が垣間見えるようなインタビューをお届けしたい。

 

 

尚、松田選手は女子セブンズ学生日本代表に選出され、6月10日からフランスで開催された世界学生選手権2024に出場、日本としては初となる優勝に輝いた。松田選手自身は、決勝戦では先発フル出場。BKとFWどちらのポジションでも活躍し、VENUSでプレーする時とはまた違う立ち位置でチームに貢献した。

 

 

 

続いて、元セブンズ男子日本代表の桑水流裕策HC率いるナナイロプリズム福岡。

初日はプール戦5位。2日目の2試合目、準決勝では、プレーに安定感のあるながとのチームプレーに圧倒され7-35で敗戦、3位決定戦に進んだ。

対戦相手はPEARLS。試合開始40秒ほど、先日通算100トライを達成したジャネット・オケロの先制トライにはじまり、モニーク・コフィが3トライをあげるなどこちらも安定した突破力を見せつけトライを量産、さらにグレイス・オクルは相手陣内22m付近から独走してトライを決めるなど、体力の差も感じさせた。ナナイロの得点は白子未祐のトライのみで、5-36でPEARLS勝利、ナナイロの大会順位は4位。総合順位は6位で終えた。

 

話を聞いたのは、これまでサクラセブンズの一員としてインタビューを続けてきた、吉野舞祐選手。

熊谷で行われた代表合宿には招集されていたが、5月末から開催されたワールドシリーズグランドファイナルとなるマドリードセブンズはメンバー外となり、ナナイロプリズム福岡のメンバーとしてこちらに出場していた。HSBC SVNSは前回のシンガポール大会に続きノンメンバーで、太陽生命ウィメンズセブンズには鈴鹿大会から参戦。7月のパリオリンピックに向けて、「まずは代表チーム内でのポジション争いを勝ち抜くこと」を前提としていた吉野選手にとって、やや厳しい状況だ。

 

「太陽生命は2戦目で、もっと自分の強みを出したかったけれど、チームもいい結果で終わることができなかったので心残りのある大会でした」と今大会を振り返った。そのなかで自分の役割としては「ナナイロでも代表と同じくセンターをやっていて、太陽生命の出場チームには外国人選手で早いランナーが外側にいるチームもあるので、すこしでも味方のウイングが楽にディフェンスできるように、横と連携とりながらしっかりできたかなと思います」

 

3月に日本体育大学を卒業し、4月からは故郷に戻りナナイロプリズムの一員として生活をスタートさせた。「代表の合宿が多くて、ナナイロの練習にあまり参加できない中での大会だったので、試合を通して自分の強みをまわりに伝えて、みんなも合わせてくれて、すこしずつコネクトできているかなと思います。HCからは、国内の試合であってもサクラセブンズの一員としてやるべきことをやっていく、それを見ているから、と言われて、どこの試合であっても変わらず代表としての意識でプレーを全うできたかな」

 

吉野選手は、オリンピック出場メンバーとしてスコッド入りしており、今後は6月のオーストラリア遠征に参加する予定だ。ここで最終メンバーが決定する。「自分は少ないチャンスをつかまなくちゃいけない立場だと思うので、一つひとつのプレーの精度を上げて、最終14人の中に入りたい」と目の前の目標を語ってくれた。最後まで諦めない姿を見せてほしい。

 

 

 

15人制に比べて7人制のほうが、男子に比べて女子のほうが、いわゆる公式戦と呼ばれる機会は少ない。そうした状況のなかで、この太陽生命ウィメンズセブンズシリーズは、女子セブンズの選手たちにとってはとても貴重な場だ。だからこそ、ながとの藤崎キャプテンが言うように、人生をかけるほどの想いで大会に臨む。それはまた、競技を続けることのモチベーションにもなる。数はすくなくても長く続いていくように、関わる人がそれぞれの立場でエネルギーを注いでいくことが鍵となる。最終戦だった花園大会は、ラグビー界としてはリーグワンのプレーオフトーナメント3位決定戦、決勝の試合日と重なった。こうしたスケジュール組みひとつ取っても、緻密に、時には計算高く、環境を整えることが、ファン層を広げることにもつながると思う。

個人的には初めて太陽生命ウィメンズセブンズシリーズを追いかけたが、来シーズン以降も丁寧に取材を重ねていきたい。

 

 

(夏)