「 おっ! 銀杏(ぎんなん) じゃん 」
私は道端で売られていた
橙色のネットに
たわわ
に詰め込まれたそれを目にすると同時に
隣に歩いている妻に
声を掛ける
その私たちを
冷めた表情で見ていた猫を
店の奥に見つけて
私は猫語で呼びかけてみる
「 にゃー 」
冷めた表情に
変化は見られない
「 おはにゃー 」
店主に名前を訊いてみたが
ニコニコしたまま私たちに顔を向けるだけで
しかし何も答えてはくれない
あれれ? うるさがられて何処かへ行っちゃったか?
歩き出した猫は
一度姿を消した......
と思いきや
スルスルと私の足元にすり寄って来た
この猫は
善い男を見分けられる賢い女の子
に違いない
なでなでなで
相変わらず店主は
名前を教えてくれそうにもないので
私が銀杏(ぎんなん)の店番をしていたこの娘を
銀子(ぎんこ)
と名づけて
お銀 (おぎん)
と呼ぶことに決めて
店を後にする
「 おぎん、バイバーイ 」
「 にゃいにゃーい 」
今日の感心