日本中央競馬会平成23年度事業計画
Ⅰ事業運営の基本方針
1.経営の基本方針について
JRAでは、事業運営を行っていく上で、具体的な施策の構築、事業執行などの指針とするために、「経営の基本方針」を定めています。「平成23年度事業計画」は、この「経営の基本方針」に基づき策定しています。
経営の基本方針 JRAは、毎週走り続けます。
○お客様とともに
私たちは、お客様を第一に、皆様にご満足いただけるよう取り組んでいき
ます。
○夢と感動とともに
私たちは、レースの迫力、馬の美しさ、推理の楽しみが一体となった競馬の魅力を高め、夢と感動を皆様にお届けします。
○信頼とともに
私たちは、快適で安全な環境のもと皆様から信頼される公正な競馬を着実に実施していきます。
○社会とともに
私たちは、皆様に親しまれる競馬の開催を通じて、社会への責任を果たしていきます。また、馬文化の発展や環境への取組みなども行っていきます。
○そして未来へ
私たちは、歴史と伝統のある競馬の発展に努め、国際的なスポーツエンターテインメントとしての競馬を皆様とともに創造していきます。
2.中央競馬を取り巻く環境について
日本経済は、平成21年より徐々に持ち直しの動きを見せてきましたが、平成22年8月以降急激に進んだ円高による輸出産業の減速等を背景に、景気は足踏み状態となっています。
一方、中央競馬を含むレジャー産業の動向については、売上げ規模の収縮傾向が続く厳しい状況に置かれており、現下の経済情勢を踏まえると余暇活動への消費が上向くにはなお時間を要するものと考えられます。また、今後さらに進行する少子高齢化や総人口の減少などにより、余暇市場における顧客獲得競争は短期的にも長期的にも厳しさを増すものと予想されます。JRAの事業運営にあたってはこうした取り巻く環境の変化に迅速かつ的確に対応していくことが重要となっています。
3.平成23 年度の取組み
中央競馬を取り巻く環境が引き続き厳しいと予測される中、JRAでは、今後も中央競馬を安定的に発展させることを目指し、平成23年度経営目標に、①開催日数288日(36開催)の競馬の着実な施行、②総参加人員対前年比100%超、③発売金対前年比100%超、の3つを基本目標として掲げています。事業運営にあたっては、この目標を達成するために必要な施策を、より一層集中的かつスピード感をもって実施していきます。
その中でも、お客様に関わる施策については、現在競馬を楽しまれている皆様はもとより、新たに競馬に興味を持っていただいた方々、競馬への参加を休止されている方々など、その多様なお客様層にお応えするために、「わかりやすさ」、「参加しやすさ」、「身近さ」をコンセプトとして、お客様の利便性及び満足度の向上を図るべく、以下の4点を中心に取り組みます。
①競馬番組の充実
②競馬ステージの整備(競馬の魅力を伝える観戦環境等の整備)
③お客様の参加意欲を高める各種施策の積極的な実施
④広報・宣伝の効果的な展開
また、今後も永続的・安定的に競馬を施行していくために、引き続き事業の効率化にも取り組んでいきます。
Ⅱ平成23年度の具体的計画
1.競馬番組等に関する取組み
競馬番組は、お客様に長期にわたって中央競馬を楽しんでいただくための根幹となるものであり、常に魅力ある競走を提供していくことが必要です。一方で、競馬番組に基づき行われる競走は、競走馬のサイクル(生産⇒育成⇒調教⇒競走⇒生産還元)の中核を成す重要なステージでもあります。こうした観点から、競馬番組の編成や改善にあたっては、
①国内生産に立脚した競馬を基本としつつ、内国産馬と外国産馬が競い合いながら、頂点のGI競走へ向かうというシンプルでわかりやすい競走体系を構築すること
②優勝劣敗の原則に基づいた競走・賞金体系を構築し、質の高い能力の拮抗した出走馬による内容・頭数の充実した競走を提供すること
③次世代に伝えるべき優良馬の選択という競走の原点を踏まえ、GI競走等において内外の有力馬が集結し、中央競馬が世界のチャンピオンホースを決定する重要なステージとして世界の競馬地図の中に位置づけられること
を念頭に取り組んでいます。
平成23年度の競馬番組については、こうした競馬番組編成の基本的な考え方を踏まえた上で、各種施策を実施します。
(1)開催計画について
①288日(36開催)の競馬開催を、スタンド改築及び馬場改修工事を行っている中京競馬場を除く全国9か所の競馬場において施行します。
各競馬場の開催回数及び開催日数は以下のとおりです。
②より多くのお客様にご参加いただくため、土・日曜日以外の祝日を利用した競馬開催を2日施行します。
(2)重賞競走の充実について
①高松宮記念(GⅠ)の施行場の変更及び毎日杯との同日施行について
中京競馬場での開催を行わないことから、高松宮記念(GⅠ)を阪神競馬場で施行します。
また、同競走当日の更なる盛上げを図る観点から、毎日杯(GⅢ)を高松宮記念当日に施行します。なお、これにより、複数の重賞競走を同日・同競馬場で施行する日は3日となります。
②重賞競走の昇格及び新規格付けについて
エリザベス女王杯(GⅠ)の前哨戦として、近年競走内容が充実している府中牝馬ステークスをGⅢからGⅡに格上げします。また、平成21年に新設したレパードステークスをGⅢとして新たに格付けします。
③重賞競走の施行日等の変更について
内容の充実した競走をより多くのお客様に楽しんでいただくため、一部重賞競走の土・日曜日の配置を見直します。また、開催日割の変更等を踏まえ、一部重賞競走の施行日や施行場を変更します。
④中山大障害(J・GⅠ)の国際競走への変更について
J・GⅠ競走の国際的な位置づけをより明確にするため、中山大障害(J・GⅠ)を国際競走とします。
(3)有馬記念(GⅠ)の充実について
有馬記念(GⅠ)への有力馬の出走を促すため、賞金を増額するとともに、当該年度のGⅠ競走優勝馬等が有馬記念で上位の成績を収めたときは褒賞金を交付することとします。
(4)出走馬決定方法の改善について
3(4)歳以上オープン競走の更なる充実を図る観点から、出走馬を決定するにあたって、GⅠ競走での成績をより重視することとします。
(5)「サマーシリーズ」の実施について
夏季競馬の振興を図るため、「サマーシリーズ」として、重賞競走を距離カテゴリー別にシリーズ化した「サマー2000シリーズ」及び「サマースプリントシリーズ」を引き続き実施します。また、騎手がポイント制で競う「サマージョッキーズシリーズ」については、平成22年に引き続きサマーシリーズ実施期間(7月3日~9月11日)における平地の全重賞競走を対象として実施します。
(6)「はくぼレース」の実施について
日没時間の遅い期間において、お客様により長く競馬を楽しんでいただける「はくぼレース」を引き続き実施します。
2.お客様サービスに関する取組み
お客様サービス施策の展開やお客様に関連する施設の改善等は、お客様に競馬を楽しんでいただく上で、大変重要な取組みとなっています。平成23年については、JRAにおいて9番目の勝馬投票法となる5重勝単勝式勝馬投票法の導入及び勝馬投票券の購入に係る決済手段の利便性向上に向けた取組みを行うとともに、引き続き払戻金への上乗せ施策を行うなど、多くのお客様にご満足いただけるようお客様サービス施策を積極的に推進します。また、中央競馬のイメージ向上やお客様の参加意欲の向上を図るため、様々な広報・宣伝活動を展開していきます。
(1)販売施策の推進
①新たな勝馬投票法(5重勝単勝式勝馬投票法)等の導入
指定した5つの競走の1着馬を予想していただく5重勝単勝式勝馬投票法を平成23年春に、インターネット投票において導入します。なお、競馬への参加拡大に資するため、勝馬投票券の購入に係る決済手段の利便性向上に向けた取組みを併せて行います。
これにより、平成23年に発売する勝馬投票法は、単勝・複勝・枠連・馬連・ワイド・馬単・3連複・3連単・5重勝単勝式(春以降)の9種類となります。
②払戻金への上乗せ施策の実施
お客様の参加を促進し、よりご満足いただくため、以下の払戻金への上乗せ施策を実施します。
ⅰ)JRAプレミアム
中山金杯、京都金杯、及びGⅠ競走当日の最終競走の合計24競走におけるすべての投票法を対象として、通常の払戻金に売得金の5%相当を上乗せして払い戻します。
ⅱ)JRAプラス10
すべての競走・投票法を対象として、通常の払戻金が100円元返しとなる場合に、売得金の範囲内で、10円を上乗せして払い戻します。
③現金投票の充実
ⅰ)新たな場外発売施設の開設
熊本県初のウインズとしてウインズ八代を八代市に開設します。(平成23年4月開設予定)
また、商圏性の高い地域における発売施設の設置や都市圏でのエクセル型場外の展開に引き続き取り組みます。(※エクセル型場外:定員型の有料場外発売施設)
ⅱ)競馬場・ウインズでのホスピタリティを高める取組み
競馬場・ウインズにおいてお客様により良質できめ細やかなサービスを提供するために、お客様の目線に立って、インフォメーション等案内体制の充実及び接客スタッフのスキル向上などに取り組みます。また、快適で安全な観戦環境の整備に向けて、競馬場等における分煙化の更なる推進などに取り組みます。
ⅲ)販売ネットワークの拡充に向けた取組み
新規のお客様をはじめとしてより多くのお客様の競馬への参加機会の拡大を図るため、従来の場外発売施設のあり方や形態に捉われない効果的かつ効率的な販売ネットワークの拡充に向けた調査・検討を行います。
ⅳ)各種販売施策の展開
これまで勝馬投票の経験がない方にも競馬に馴染んでいただく取組みとして、コンピュータが馬番号・組番号を選択する「クイックピック投票」やパーティー会場等に馬券をお届けするサービス「JRAパーティーキャンペーン」などを引き続き実施します。
④電話投票の充実
ⅰ)電話投票会員の増加に向けた取組み
インターネットを通じた利用となる5重勝単勝式等の導入も踏まえながら、電話投票会員の増加を図るため、JRAホームページをはじめとした各種媒体による募集案内を行うとともに、競馬場・ウインズ等において募集キャンペーンを実施します。
ⅱ)電話投票会員の利便性向上及びサービスの充実
普及が進んでいるスマートフォンに対応するため、インターネット投票のスマートフォン専用画面を新たに開発するなど、投票環境の改善を行うとともに、引き続き安定したサービスの提供を行います。
また、電話投票会員に対するフォローアップサービスの充実を図るとともに、各種プレゼントキャンペーンを実施し、電話投票の利用を促進します。
ⅲ)サポート体制の充実
電話投票会員の様々な問合せに的確にお答えするため、電話やJRAホームページを用いた問合せ対応体制を充実させるとともに、一部ウインズにおいてサポートデスクを設置するなど、きめ細やかな問合せ・サポート体制を構築します。