運命が決まった!: 残酷なロマンス(持参金のない娘)(9)
Жестокий романс(9)
Эпизод 8-9: У огудаловых, На кладбище
エピソード8-9: オグダーロフ家で、墓地で。
パラートフを待つラリーサの様子をバックに流れていた歌「愛は 魔法の国」は、
オグダーロフ家のパーティ会場へと続いて終わります。
時の流れを自然に美しく伝えるシーン展開。
Лариса: Вася! Я сейчас заплачу. Он мне предложение сделал.
Вожеватов: Предложение?
Лариса: Да!
Вожеватов: А кто этот Гуляев?
Лариса: Я не знаю, директор банка, кажется, из Москвы. Матушка его где-то отыскала.
Вожеватов: Так противный...
Лариса: Понимаешь, он деньгами так и сыпет. Вот она перед ним и стелется.
ラリーサ:ヴァ―シャ!わたし、今にも泣き出すわ。彼が結婚を申し込んだの。
ヴォジェヴァートフ:プロポーズ?
ラリーサ:そう!
ヴォジェヴァートフ:ところで、このグリャーエフは何者?
ラリーサ:知らない、銀行の頭取らしいの、モスクワの。ママが何処からか探し出して。
ヴォジェヴァートフ:虫が好かないな・・・
ラリーサ:彼はお金をばらまいているの。ママは彼にへつらって。
Я сейчас заплачу.
заплакать (запла́чу, запла́чешь....)(完)泣き出す。
この台詞、一瞬「???」、「支払う」と混同しました。
заплати́ть (заплачу́, запла́тишь...)(完)払う。
「泣く」と「支払う」の1人称単数はアクセントは違いますが
綴りは同じです。
плакать (пла́чу, плачешь.... плачь)(不)泣く
платить (плачу́, пла́тишь...)(不)払う
отыскать 探して見つける
一般には、探すискать =найти見つける
Противный
これも、要注意です。
反対の・対立する、という意味:
противный вечер 向かい風、逆風;
противная сторона 向こう側、敵側、
で使われることが多いのですが、
「嫌な、不快な」の意味もあります。
сы́пать (сы́плю, сы́плешь...сыпляют)
振りまく、まき散らす。
Он деньгами сыпет.
お金をばらまいている、
ここで、辞書にある変化形сы́плет、ではなく、
сыпетと話しています。
日常、2人称以下の変化でлが抜ける
сы́плю, сы́пешь... сыпяют、の変化で
話されることが多いようです。
これ、日本語の「ら抜き言葉」みたいですね。
Вот она перед ним и стелется
стлаться (стелю́сь, сте́лешься ...) 広がる
сяのない、стлать (стелю́, сте́лешь...) は、敷く・広げる。
стлаться перед кем(イディオム) へつらう、ご機嫌をとる。
今でも普通に使われる表現です。
楽隊が呼ばれて、踊りが始まるというときに、
Пристав: Вы будете господин Гуляев?
Гуляев: Я.
Пристав: Вы арестованы!
Гуляев: За что? Вы не имеете права!
Пристав: Сами знаете, за что.
Огудалова: Одну минуту, господин судейский, объяснитесь! Господин Гуляев – директор банка.
Пристав: Кассир! Кассир... Сбежал из банка с большой суммой.
Гуляев: Прощайте, отгулял я. Лариса Дмитриевна, не держите зла!
Музыкант: А нам-то кто заплатит, господин хороший?
Гуляев: Как-нибудь в следующий раз. У меня сейчас и руки-то заняты.
Пристав: Можете продолжать, господа!
Семёновский: Какой скандалище!
執達史:あなたはグリャーエフ氏でいらっしゃいますか?
グリャーエフ:はい。
執達史:逮捕します!
グリャーエフ:どうして?そんな権利はないだろう!
執達史:ご自身が知っているでしょう、どうしてかは。
オグダロヴァ:ちょっと待ってください執達史様、説明してくださいな!
グリャーエフ氏は銀行頭取です。
執達史: 窓口係!窓口係・・、銀行から大金を持って逃げたんです。
グリャーエフ:さようなら、豪遊したよ。ラリーサ ドミトリエヴナ悪く思わないでくれ!
楽師:ところで、どなたが支払ってくれるので、良い旦那さま?
グリャーエフ:どうにか次にな。今は手がふさがっているんた。
執達史:続けてください、皆さま!
セミョーノフスキ:ひどいスキャンダルだ!
пристав = судейский пристав(帝政時代)裁判所の執達吏
Вы будете господин Гуляев?
人の名前や身分などについて推量するときの
быть の未来形が使われています。
「グリャーエフ氏でいらっしゃいますか?」
отгулять 遊んですごす、休んですごす。
愛らしさや小ささを表現する「指小形の 名詞(指小語)」はおなじみですが、
「指大語」もあります。でもこれは今ではほとんど使われていなく、
民話などに出てくるぐらいです(дом – доми́ще, нос – носи́щеなど)
скандалищеには、
скандал + ище、大スキャンダル
この「指大」の意味の接尾辞が付いています。
Огудалова: Сначала Паратов ездил-ездил, всех женихов отбил. Исчез неизвестно куда. Теперь этот кассир проклятый! Нигде показаться нельзя, все пальцем тычут.
・・・
Лариса: Ладно, мама, со мной больше хлопот не будет. За первого, кто посватается,за того и пойду. Богат ли, беден ли, без разбирательства...
オグダロヴァ:始めはパラートフが足しげくやって来て、婿を全部叩き落した。何処かへ消えてしまった。そしてあの窓口野郎!どこにも出られない、皆が後ろ指を指す。
・・・
ラリーサ:分かったわ、ママ、私のことでもうこれ以上走り回らないで。最初に申し込んだ人の所に行く。お金持ちか貧乏かも見極めないで。
проклятыйいまいましい、「…な奴め」という罵り言葉。
Нигде показаться нельзя, все пальцем тычут.
нельзя+完了体=不可能、です。
тыка́ть (ты́чу, ты́чешь...)
тыкать пальцем (пальцами) на кого-что
後ろ指を指す。
冬のお墓参りの光景。おそらく修道院の敷地内でしょう、柵をめぐらした立派なお墓。
墓碑銘は「Дмитрий Степановъ Огудаловъ 」
1918年の正字法改革前なので、語末子音には「ъ」硬音譜が付いています。
потомственный дворянинъ 世襲貴族、とあり、申し分のない家柄。
Потомственный 世襲の、は古い用語で、
今では使われるのは「先祖代々の」くらいです。
Пото́мок子孫⇔ пре́док 先祖
Потомствоも、子孫、です。
読みづらいのですが、生年は「1938年10月9日」、没年「1974年3月3日」
若くして亡くなっています。
墓地 кладбище
墓 могила
世襲貴族ですから領地はあったのでしょうが、夫
亡き後に3人の娘を育てる中で手放さざるを得なかったのか、
今では家も抵当に入っています。
古くからの名家ということで、クヌーロフなどの新興商人たちは
オグダーロフ家の人々に暖かく接しているのでしょう。
季節が合うので、セリフには何もありませんが命日の墓参と思われます。
19世紀の冬の服装、муфта マフ、が優雅です。
そして、
Лариса: Ну, вот судьба моя и решилась.
ラリーサ:そう、ほら私の運命が決まったわ。