その診療所は普通の社宅と同じ、部屋数は四間しかなく、玄関を入ったとっつきが待合室、その先が診察兼治療室、その隣になぜか、歯科治療室があり、茶の間とキッチンの続きがスタッフの休憩室兼食堂、小さい土間から裏口へ続いている。
まことに、お粗末なものであった。
アルバイトのドクターが毎日入れ替わり診療にあたっていた。
歯科医師は隔日ではあったが、同じ先生だった。
診療科目は、内科、外科、歯科で誰が院長か教えてもらわなかったので知らない。
30歳過ぎで若い男性の事務員風の人が取り仕切っているようだった。
まだ戦後の混乱期が続いていて、医療関係もまだ法的整備が整っていない時代だったから、
『診療可能なことになっていたのかもしれない』怪しげな診療所だった。
私は、例の事務員風の男から言われるままに働かされていたのである。