「チイちゃん チイちゃん」と繰り返して叫んだが中には見当たらない。
慌てて小屋から飛び出して辺りを見回したが見つからない。
隣の警察署の運動場の方かもしれないと、急いで駆け出した。
母屋の塀に沿い流れている堀を飛び越えるとき、ふと見ると普段よりも沢山たまった水たまりの中に、白いものがチラリと眼に入った。
「あっ、チイちゃんだ!」思わず悲鳴をあげてさけんだ。
急いで抱き上げた。グッタリとしているが、まだ息はあるようだ。
夢中で飛ぶように新館の診察室へ向かい走った。
ガラッと、ガラスの引き戸をあけると、祖父が患者さんと話しているところだった。
「おじいちゃま、カンフル注射してください」とまだ水がポタポタと垂れている小さいチイちゃんを差し出した。
祖父をはじめ、その場にいた人はビックリして息をのみ言葉が出なかった。