改めて標本をじっくりと見直すと、潰瘍の周りの縁が強く盛り上がり、底にむかって急激に崩れている。
本でみると胃潰瘍では、これほど縁の盛り上がりは見られないようだ。
「癌性の潰瘍ではないかとおもわれますが。」と叫んでしまった。
「ほう、何故そうのように判断されますか?」と教授。
「潰瘍の縁のもりあがりが、極端に強いようにみえますから、通常の胃潰瘍とは違うと思いました。」と僕。
「それでは、顕微鏡で病理組織をみてください。」
ちょっと、間をおいて教授が、言われた。
「しまった!」心の中で、私は叫んだ。
顕微鏡でみる病理組織学的所見について、自信があるとは言えなかったからだ。
しぶしぶ、顕微鏡の置いてある机の方へ歩き始めた。