いよいよ、私に試問の順番が回ってきた。凄く緊張して、手に汗をかいていた。
「この標本を見てください」と教授。ガラスの容器に入ったホルマリン漬けの臓器を指差した。
良く見ると、中山外科の臨床講義で見せてくれた、切除した胃を開いた物のようにみえた。
「マーゲン(ドイツ語で胃のこと)だと思います。」と答えた。
「そうですね」と教授。ほっとする私。
「ところで、この胃に何か病変があると思いますか?」
唾をのみ込んで、よくじっと観察した。
胃の真ん中のところが、深くほじれていて、その周りが盛り上がり丁度火山が噴火して噴火口のようになっている。
教科書でみるような単純な胃潰瘍の様子とは、少し違って傷の周りの盛り上がりが、いかにも強く見える。
「潰瘍があります!」と得意げに僕は答えた。
「確かに潰瘍がありますね。」と教授は言われたが、更に言葉をつぎ「ちょっと普通と変わっているところがありませんかねぇ」
「・・・・・・」言葉に詰まる僕。