脊髄麻酔はその時代には、お腹より尾側つまり、腰や足などの手術に多く使用されていた。
普通は腰椎(背骨の下の腰の部分)でも下の方に針を刺して、麻酔薬を注入すると、其処よりも下の体部の感覚がなくなり、筋肉にも力が入らなくなる。此れで足などの手術には充分やくだち、問題ないのである。
お腹となるとそうはいかない。胃の手術なども当時はこの麻酔で行っていたが、その時には腰椎でもかなり上の部位に針をさして、麻酔の薬液を胸のあたりまで効かせないと充分な無痛と筋肉を無力化する効果が得られない。
ここで問題となるのは呼吸筋にあたえる影響である。
息が止まると当然まずいので、その兼ね合いを考えつつ、針を刺す部位と、麻酔薬の量、手術台の傾斜角度などを微妙に調節するのであるが、何といっても最も大切なことは患者さんの全身状態を考慮することである。
勿論血圧を測り、点滴をいれ、酸素も用意してはあるのだが、突然ショツク状態に陥る事があるのだ。