動けない患者の場合、未だ自動車の数は少なく、無論、救急車等はない時代で、貨物自動車の荷台に乗せて来院できれば上々、人力車や、ガラガラと荷車に乗せたり、人が背負つてくることもあった。
その時、背負われて担ぎ込まれた人は、朝から腹痛を覚えていたが、段々間歇的な痛みが激しくなり、腹が強く張り、食物の残りや、苦い水を何度も吐き、我慢が出来なくなってきたという事であった。
腹部は、かなり強く盛り上がったようにみえ、グーとかゴロゴロというような音がすると、絞られるような痛みがあるという。
便もガスも出ないとの事だった。
院長は話を聞いた後、腹部の視診、触診、聴打診をしてから腹部の単純レントゲン撮影後、そのフイルムの現像を待っていた。
今のように、自動現像機はなく、デジタル撮影ではないので、銀塩写真フイルムと同じように、四つ切の大きなのを、暗室で現像、定着、水洗を行い乾燥させるのである。
全て人手でやる以外に方法はない。
急ぐときはまだ濡れて、ポタポタと水の垂れているフイルムを見て診断することもある。
普段は院長自身で現像するが、私が居る時には、それが自分の役目の一つとなっていた。