薬局と反対側の、診察室の壁のドアを開けると、そこは手術場でやや縦長の五坪ほどのコンクリートの床になっていた。その中央に手術台、照明は大き目のキャスターつきの無影灯、蒸気消毒器、煮沸消毒器なども置かれていた。
昭和の初めに建てられた、典型的な開業医の家であったので、薬局の裏側は茶の間兼食事の場に引き戸でつながり、八畳の畳敷きだった。
長火鉢が置かれ、大き目のちゃぶ台があり、院長の家族も従業員も食事を共にしていた。
それに続き、襖でしきられている床の間付の八畳間が院長夫婦の寝室となっていた。
住み込みの看護婦さん、お手伝いさんなどは、玄関入り口から右手の患者待合と、土間を隔てた畳の八畳一間を居室としていた。
まさに院長も、その家族もスタッフも一体となりファミリーとして毎日の診療に携わっていたのである。