ある日の中山先生の臨床講義の事であった。
外科学会での発表の準備のため、臨床講義の手術を、18mmの映画やスライド写真撮影しようとして、臨床講堂のUの字にくびれた部分へ木造の太く頑丈な梯子をかけ渡し用意してあった。
その上に厚い板を置き、写真撮影技師らはその部位、つまり手術台の略真上から最高の視角で手術の良い画像をキャッチしようとかまえていた。
「始めるぞ。用意O.K.か」
中山教授の声が手術講堂に響いた。
みな声なくうなずく。
先生の右手のメスがキラリと走った。
学生たちはこの機会に手術を詳しく、よく見ておこうと知らず知らずの間に夢中になって身を乗り出していった。