「それでは、始めよう」
中山恒明教授は学生に、一通り手術の説明を終えてから周囲に声をかけ、ちょつと会釈してからメスを持ち、一気に上腹部正中切開(胸骨下端から臍のやや左までの中心線の切開)で皮膚を切る。
術者(教授)は、仰臥している患者の右に立って居り、助手は3人、第一は教授の正面に相対し、第二は教授の右脇、第三は第一助手の左脇に立ち、夫々吹き出る血液を器具で血管を挟んで止めたり、ガーゼで拭いたり視野を確保に努めるが、決して術者の動作の妨げにならないようにしなくてはならない。
第二外科の臨床講堂は緊張にピリピリして、学生たちも息を止め目を凝らしている。
今日は中山先生が独自に考案して編み出した胃切除術についての臨床講義が行われる日なのだ。