その日は少し小雨のぱらつく曇りがちの少し寒さを感じ、指先がかじかむような初冬の頃だった。
一寸迷ったが昨日雨降りでストレスがたまっていた。
段々と調子が上がってきていたので、今日も頑張ろうと気合を入れて投げた一球がすべり、窓の外に張られていた鉄の格子の隙間を通りぬけて窓ガラスを直撃してしまつたのだ。
鉄格子の隙間は丁度ボールの直徑よりも1センチほど狭く大丈夫だと思っていたが、軟球なので弾性が高く通りぬけてしまったのだろう。
当然ガシャーンと大音響が静かだった周囲の空気を震わせ、それと同時に「キャアー」という女性の悲鳴がひびきわたった。
今家にいる女性は継母しかいない。
継母にはあまり口をきかなかったが、あくまでも自分の母親という認識はもてなかった。かといって嫌いとも言えず好きともいえない中立的感情しかない。特にいじめられたり、虐待されることもない。
実の母親の顔は全く覚えていない。2歳の時に死んだらしい。周囲の人達の同情や温かい思いやりを全身に感じながら何一つ不自由することなく育てられていた。
継母のほうが自分に遠慮しているとさえ感じていた。
彼女に何か強い打撃を与えてしまったのかと一瞬茫然としてしまったが気を持ちなおして玄関からとびこんだ。
次回に続く![]()