雑念を払い
無心になる作業
ご訪問ありがとうございます
平安朝香道の朝倉涼香です
大雪情報とは相反して
春の兆しも聞かれるようになりました。
沈丁花の蕾
先日
今月のお稽古で使用する
基本の香料造りをいたしました。
香道で使用する
最も重要な香料は
沈香です。
沈香は
日本では採取できない
希少な香料で
産地はベトナムを主とし
タイやインドネシアなどの
東南アジアの山岳・密林地帯
ベトナム戦争終決後に
海外に大量に持ち出されたり
乱獲などにあい
今ではたいへん希少なものとなりました。
そのような沈香ですので
もったいない思いと
無駄にしてはいけない思いと・・・
平安朝香道のお稽古用としては
植樹されて人工的に採取された
栽培沈香で、と思っております。
(特別な沈香もお聞かせいたします)
自然に採取された物より劣る
と言われますが
それでもやはり大事な香料です。
奈良時代や平安時代より
芳香のする香木は東南アジアから
もたらされた香木でした。
芳香の樹木が
日本にないわけでは
ありません。
弥生時代にも現在もおなじみの
香りのある樹木が存在しています。
その最も古い文献は
三世紀に西晋の陳寿(233~297)
によって著された「三国志」の中の
「魏書東夷倭人条」(魏志倭人伝)です。
弥生時代の邪馬台国や
卑弥呼について記されており
日本列島の地理や風俗などが
詳しく著されています。
当時の日本人ががどのような生活をし
どのような存在だったのかが理解できる
興味深い文献です。
そこには、もともと日本に自生していた植物 が
数多く登場するのです。
クス(楠)・シイ(椎)・クヌギ(櫟)
・カシ(樫)・フウコウ(楓香樹か)など
とてもお馴染みの樹木たち
クスノキからは採れる香料は
皆様良くご存じの樟脳です。
甘い香り、苦い香り、酸っぱい香り
辛い香り、塩の香り、涼しい香り
すべて併せ持った香りでしょうか?
残念ながら楠やその他の樹木では
主役を成す香料としては
最適ではなかったのです。
様々な香りをバランスよく
持っているのが良質の沈香なのです
説明が長くなりましたが
その沈香木を粉砕して
お稽古用の香料を作ったのです。
香木を切り刻み
細かく粉砕し
抹茶状になるように
何度も粉砕します
結構力仕事なのです。
門下生の方々に提供できるよう
心を込めて作業をいたします。
奈良時代や平安時代には
この作業をするには
とてつもない時間を要したことでしょう。
香木を切って割って砕いて
大量粉砕できる機械や
簡便な器械もなく
鉄臼で何度も何度も
砕いてつくのです。
その後
細かい粉にするために
絹の布で何度も篩ったのですから・・・
全工程を天皇や皇后
その他の貴族が
行なったとは思えません。
今では便利な器械がありますので
それで粉砕いたします。
それでも相当の時間を要します。
篩にかけ、繊維などを取り除き
粉砕し、また篩にかけ
これを何度か繰り返すのです。
砕いたり、ついたり
この単純作業が
心を落ち着かせ
無心にさせるのです。
雑念を払い
出来上がると
スッキリ
いたします。
悩み事も心配も
砕いて粉にし
その後には
薫物を薫いたような
芳香が漂っておりました。
土のお団子作りに似た
薫物作りにも似て
とても爽快な気分
このような作業をしなくとも
もちろん粉末の香料も
販売されています。
香料作りも
薫物作りも
単純作業の愉しさがあって
良いものです。
門下生に提供できるよう
一心に作りました。
今どき?
とお思いでしょうが
結構楽しかったのです。