匂いぞ出ずる 桜の香り | 横浜の香り教室 平安の香りと親しむ平安朝香道

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東急電鉄日吉駅3分にある平安の香りを創り楽しむ教室です。平安時代、貴族や「源氏物語」の主人公光源氏がたしなんだ香り創りや楽しみ方をご紹介。(by平安朝香道 朝倉涼香)

●匂いぞ出ずる

  桜の香り

 

 

 

ご訪問ありがとうございます

平安朝香道の朝倉涼香です

 

 

 

 

 

 

 

桜には香りがあるのでしょうか?

香りへの疑問です。

 

 

日本の古い歌として

歌い継がれてきた

 

「さくら」の歌

 

 

さくら さくら 

 やよいの空は

みわたす限り 

 かすみか雲か

匂いぞ出ずる

 いざや いざや

見に行かん

 

 

「さくら」の歌に登場する

「匂いぞ出ずる」とは?

 

 

 

 

 

 

ず~~と昔

この「匂い」は

香りのこと

 

だと思っていました。

 

後に知ったことでしたが

この「におい」は

現在は「匂い」で一般的には

嗅覚を表しているのですが

古語の「にほひ」は

「視覚」なのです。

 

 

「に」は丹(に)のこと

丹は「魏志倭人伝」にあるように

古代から日本で産出される

赤い土です。

 

 

丹塗りといえば

神社のあの朱色。

(厳密には丹と朱は違いますが)

 

「ほふ」は

古語の「秀・ほ」で

目立っていること、すぐれていること

 

「匂秀ふ」は
赤が目立つ、映える

意味の言葉でしたが

次第に、赤に限定されない

「美しい」や「映える」意味に

使われるようになったのです。

 

 

元々は視覚を表す言葉でした。

次第に、嗅覚として

使われるようになったのです。

 

 

「匂い出ずる」は

あの鮮やかな赤色が

美しく映えること

転じて

桜の花が美しく輝いている

ことだったのですね。

 

 

これが「さくら」の中の

「におい」の意味。

 

別バージョンの歌詞は

 

さくら さくら
野山も里も 見わたす限り
かすみかくもか 朝日ににおう
さくらさくら 花ざかり

 

 

やはり「におう」は

朝日に照り輝くようすを意味する

「にほひ」ととれるのです。

 

ですが

「におう」は「香り」

だと考えることも・・・

 

 

現在では、私たちは

一般的に

「匂い」「匂う」は

嗅覚を表していると解釈しています。

 

 

 

 

 

 

「さくら」の歌

元々は

江戸時代の箏曲(そうきょく)で

手ほどき曲である

「咲た桜(さいたさくら)」の

替え歌として「櫻」が収載された

とあります。

 

「咲た桜」の歌詞は

 

「咲いた桜 花見て戻る 

吉野は桜 竜田は紅葉 唐崎の松

 常盤常盤 深緑」でした。

 

明治21年に東京音楽学校の

「箏曲集」に「匂いぞ出ずる」の

「櫻」として収められ

昭和16年の国民学校音楽教科書の

「うたのほん」で

「野山も里も」に書き換えられたのです。

レファレンス協同データベース)

 

 

 

「桜」に歌われた

桜に香りがあるとすると?

 

この桜がソメイヨシノだとすると

ほんのりと淡い紅色に染まった

花の華やかな美しさを

謳ったものなのですが

 

特にソメイヨシノには

著しい香りは

感じられません。

 

となると

 

「さくら」の歌に詠まれた

桜の花はソメイヨシノではない。

 

 

ソメイヨシノは

江戸時代後期に

江戸の染井村(現材の豊島区駒込)で

栽培品種が作られ

「吉野桜」で広まりました。

後に、吉野の桜と区別するために

染井吉野と命名されたのです。

 

染井吉野が

世の中に浸透していく過程が

豊島区立駒込図書館の

桜デジタルコレクションに

記されています。


ソメイヨシノとして

知られるようになるのは

明治の後半から。

 

様々な地域に植栽されるようになったのは

昭和になってからのことなのです。

 

 

それまでは

自生する

ヤマザクラやオオシマザクラなどが

一般的

 

 

ヤマザクラやオオシマザクラには

顕著な香りがあるのです。

ヤマザクラやオオシマザクラは

ソメイヨシノが普及するまで

ごく一般的な桜だったのです。

 

 

「さくら」の歌中の「匂い」が

「香り」だとすると

ソメイヨシノではなく

どこにでもある桜なのですから

ヤマザクラもしくはオオシマザクラ

なのではないかと考えたのです。

(桜には全て香りがあるそうですが・・・)

 

 

 

 

 

 

オオシマザクラの葉は

桜餅の葉としてお馴染みのものです。

オオシマザクラの花もまた

同じように良い香りがするのです。

 

 

「さくら」の歌の

「匂い」が「香り」だったなら

 

桜の下では

 

桜餅の香りがするラブラブ

 

なのですね~。

 

 

 

 

 

 

ウ~ン

だいぶ情緒に欠けるでしょうか?

 

「香り」であってほしいけれど

「にほひ」で表す方が

やはり桜の美しさを

表現しているかも知れませんね。