●萩の花が風に揺れると・・・ 秋ですね~
萩に香りがあったなら
ご訪問ありがとうございます
平安朝香道の朝倉涼香です
とても過ごし易い陽気となりました
ススキが風になびき
萩の花が心地よい風に吹かれて
視覚と触覚とで
秋を感じるようになりました。
五感で感じる秋が
揃い始めましたね
味覚では
店頭に栗や松茸が並び
触覚では
吹く風に
視覚では
秋の七草
聴覚では
木から葉がヒラヒラと散る
葉擦れの音
これはまだです
秋を耳から感じる
今は何でしょう?
視覚では
ススキとハギが風になびいて
揺れる様
人それぞれ
五感で感じる
秋の訪れがあることでしょう。
以前も記事にしましたが
「万葉集」で
歌に詠まれた花の
第一位は
萩
とても愛される植物でした
「源氏物語」では
萩の存在には
華やかさが見られません
「萩におく露」のような
はかなさや虚しさの象徴として
登場します。
最もそのはかなさを著しているのが
源氏の君の正妻と言って良いほど
源氏に愛された紫の上の
最期が近い場面での紫の上の歌です
おくと見る ほどぞはかなき
ともすれば
風にみだるる 萩のうは露
私がこうして起きているのをご覧になっても
もう後わずかの命です。
萩の上に置く露が、見ている間もないほど
たちまち風に乱れてしまうように
萩の上露のように命が消えてしまうでしょう。
命の灯火が消えゆく
虚しさと哀しさを
萩におく露に例えて詠んでいます。
秋風に揺れる萩の
なんと虚しく哀しいこと。
萩の花に香りはありません
香り好きの紫式部のことです
もしも萩に芳香があったならば
紫式部は萩をただ虚しく儚いもの
としてだけでなく
「萩」
の帖もあったかもしれません。
萩の花はとても小さく
上から下へと赤紫色の灯が
ポツッ、ポツッ
と点るように咲き進みます。
花は可憐でひ弱そうに見え
今にも散りそうな風情で
風任せに揺れています
がしっかりとしがみついているのです。
簡単には落ちません。
冬にはすっかり枯れてしまいます
でも、でも騙されてはいけません
春になると
その生育ぶりには目を見張ります。
伸びすぎた
と
切っても切っても
「それではこちらから失礼」
とばかりに上へ下へ
左から右へ、右から左へ
と伸びてくるのです
とっても強健な植物なのです。
ですから香りにこだわった
紫式部が「萩」の帖を書いたなら
とても楽しく面白い帖ができたのでは
と思うのです。
香りが無いばかりに
同じ系統色の藤や藤袴より
扱いが悪くなってしまったのでは
と風に揺れる萩を見る度に
残念に思うのです。
まだまだ萩は咲き続けています
散る花の後から後から
咲いてきています。
萩に香りがあったなら
「源氏物語」は
五十五帖になっていたかもしれません