●日本へ香をもたらした鑑真和上と唐招提寺。
そして蓮のお線香
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平安朝香道の朝倉涼香です
7月、8月の課題の香は、夏の薫物の「荷葉」(蓮の香りを模した香) でした。
2回も「荷葉」が続いてしまいましたが・・・
以前奈良の唐招提寺へ行った折、
3種類のお線香を求めました。
そのことを思い出したのです。
「唐招提寺のお線香、確か蓮だったわ」
蓮の香りを写したお線香だったことを思い出し
折角蓮の香りの薫物をお稽古に使っているのですから
と急遽思い立ったのです。
蓮のお線香のお話をする前に
唐招提寺と言ったら~
鑑真
ですよね
鑑真和上は、唐から日本に初めて正式に仏教の戒律を伝え
唐招提寺を開山しました。
鑑真は688年唐の時代に揚州江陽県に
生まれました。
14歳で揚州大雲寺へ出家し
21歳の時、長安実際寺で具足戒を受け
正式な僧侶となりました。
742年揚州大明寺で遣唐使として訪れていた
興福寺の僧の栄叡(ようえい)、普照(ふしょう)と会い
聖武天皇の招請を受けました。
743年第1次、第2次と渡航に失敗
744年第3次、第4次も失敗しました。
748年第5次渡航も振州(海南島)に漂着し、北へ進む途中
失明することとなりました。
(東征伝)
743年から日本への渡航を試みましたが
5度の挫折。
(井上靖「天平の甍」でその難行辛苦がわかります)
視力を失いながらも
753年6度目に密かに遣唐使船に乗り薩摩の坊津に着いたのです。
754年には東大寺で聖武上皇・考謙天皇・光明皇太后らに戒を授けました。
759年唐招提寺を開山、
今では律宗の総本山となっています。
鑑真和上が日本にもたらしたものは、
仏教に関する仏論や仏画、仏像の他、
医薬や香の調合方など多岐に渡っています。
蓮の花まで携えていらしたとは・・・
香を聞いたり創作する者にはとても重要な方なのです。
医薬=香
もしも鑑真和上が渡来していなければ香を合わせる薫物は
ずっと後のことになったでしょう。
そこで
8月のお稽古の後で生徒さんに「唐招提寺青蓮」のお線香を聞いていただきました。
ブルーグリーンのパッケージの「唐招提寺青蓮」と
ローズピンクのパッケージの「唐招提寺蓮」
どちらもお線香には、蓮の種子を練り込んでいるとのことです。
唐招提寺青蓮も唐招提寺蓮も唐招提寺の開祖である鑑真が自ら携えて来た蓮なのです。
2千年前の古代蓮も驚くべきことですが、
天平時代から唐招提寺で開花していた蓮
今でも咲き続けているのです。
唐招提寺蓮は八重咲きの紅蓮
唐招提寺青蓮は一重咲きの青蓮(青みがかった白)
この二つの蓮の香りを模したお線香です。
今回は唐招提寺青蓮を聞いてみました。
清々しくほのかに甘い香り
白蓮を表現するような透明感と清々しさ
天平の甍のそびえる唐招提寺にふさわしい蓮の香りでした。
このような香りが作れたらいいな~
人間の英知と化学の力が融合して出来ているものでしょうから
敵うはずはありませんね。
でも香を合わせて出来る薫物は、香の種類や微妙な香の量で違ってきます。
私もがんばらなくちゃ
出来れば来年は奈良に行って唐招提寺の蓮の花を観て、その香りも確かめたいものです。