写真のマカダミアハニーは、タイの最北のチェンライ県ドイトゥンで生産された蜂蜜です。
この地域は、川を隔ててタイ・ラオス・ミャンマーの3カ国の国境を接する地域です。
かつては、ゴールデントライアングル(黄金の三角地帯)と呼ばれ、チェンライに住む、種族を異にする数十の山岳民族が暮らしていました。
多くは、ケシの栽培による阿片で生計を立てていました。
ケシ栽培をするための焼畑農業により、美しかった山岳地帯の自然も徐々に破壊されていきました。
現在のタイの国王であるプミポン国王の亡き母シーナカリンタラー=ボーロマラー チャチョナニー王太后(1900年~1995年)
(タイの名前はなんて長いんでしょう~)
故チャチョナニー王太后は、晩年この壊滅状態の山岳地帯を自然豊かな元の姿に戻し、地域の人々を貧しさから救おうと、ドイトゥン開発プロジェクトを誕生させました。
美しい森林を復活させ、水資源を確保する目的はもちろんですが、何よりも地域の人々が貧困から抜け出し人間らしい生活ができるようにとの願いが大きかったのです。
ケシの代わりに工芸作物が植えられました。
コーヒーが植えられ、今ではタイコーヒーの最高ブランドとして知られるドイトゥン・コーヒーが。
そしてマカダミアが植えられ、マカダミアナッツやマカダミアハニーが生産されているのです。
(コーヒーはちみつもありそうですね)
その他数々の工芸作物によってハンディクラフトの生産と販売ができるようになりました。
その結果、収入を得ることができるようになり阿片の売買で生計を立てずにすむようになったのです。
1987年から30年計画で始まったドイトゥン開発プロジェクトは現在第三次実施計画(2003~2017)に入っています。
最終的には森と人とが共存し、地域の人々の自立した生活が持続的にできるようになり、タイの一般国民と同じように国に納税できるようになることなのだそうです。
チャチョナニー王太后は元々王族ではなく平民の出身です。
父は金細工職人で、サンワール(チャチョナニー王太后)が幼いころに他界しました。
サンワールは母の手で育てられ看護学生となりました。
17才で奨学金をもらい看護学の勉強のために渡米しました。
そこでタイ王族のチャオファーマヒドン王子と出会い結婚したのです。
その後二人の男の子と一人の女の子に恵まれましたが、夫を早く亡くし、タイ王となった長男も失いました。
幼いころから聡明であったのですが、チャチョナニー王太后は、3度も大きな柱を失ったのでした。
そのような運命が単なる王室の慈善事業と言うのではなく、彼女を大きなプロジェクトへと導いたような気がします。
このプロジェクトによって貧しさのために阿片に関わった山岳種族が救われたのです。
こんな深い物語のあるマカダミアハニーだったのです。
単なるハチミツではなかった!
大切にしまっておくべきだったか?
いえいえ早く食べて消費してしまう方がいいのです。
たった一瓶のハチミツですが、ほんの少しプロジェクトに参加しているような気にさせられてしまいました。
なんだかハチミツがタイの寺院のように黄金に輝いているように見えてきたのです