
人間の肉体にとって何がいちばん大切かといえば、それは生命力です。言い換えれば、肉体の創造力ということになります。しかし、この生命力は、みなさんが思っているよりも、はるかにすごいものなのです。
何度も言っていますように、人間というのは偶然この世に生まれたわけではありません。私たち一人ひとりの生命は、悠久の祖先の生命の営みの結果、現れてきたものなのです。ですから、いま自分がいるというのは、自分の存在の前に、長い長い祖先の遺伝的・潜在的生命力があったからなのです。
親はたった二人ですが、祖父母、曾祖父母とたどっていって、二十代さかのぼると親の数は百万を超え、三十代さかのぼると十億を超すという驚くべき数になります。こうした天文学的な数の親たちが、長い歴史と生命を持続してきて、その果てに私たちが存在しているのです。その中で、たった一人が欠けても、今の自分という存在はありません。私たちの生命には、無数の祖先から受け継がれてきた無限の生命力・生命の可能性が含まれているのです。
しかし、そのような無限の生命力、可能性といったものを自覚している人は、周囲を見渡しても残念ながらほとんどいないといっていいでしょう。人間の生命には、素晴らしい力や可能性が秘めています。なぜ、自覚できないのでしょう。理由は一つ、それを引き出す方法を知らないからです。
それでは、その方法とはいったい、どのようなものでしょうか。これこそ、私が何度もお話している先祖供養なのです。
たとえば、植物は根の力がいちばん大切です。木や草が立派に生い茂り、青々とした葉をつけたり、きれいな花を咲かせるのは、根がしっかりと張っているからです。根が地面の中で深く広く張っていれば、十分な水や養分を幹や枝葉に送ることができます。そうすると幹は丈夫になり、多少の風雨ではビクともしません。
人間に当てはめてみると、根が生命力になるわけですが、根というのは、自分という幹を与えてくれた、両親をはじめとする無数の祖先のことなのです。ですから、根を丈夫にする、つまり生命力を旺盛にするためには、先祖供養する以外ありません。この生命を与えてくれた祖先に対して感謝し、大切にすることは、ほかでもなく自分の生命力を強くすることでもあるのです。さまざまな困難にも負けず、幸福な人生を送るために、先祖供養はどうしても欠かすことはできないものなのです。