これは私が以前、とある場所に行ったときの話です。
前日に現地に入り、新しく出来たホテルに宿泊しました。夕食をスタッフと一緒に食べることになり、そのホテルのレストランに行ったのです。そこで私は、人間の心の在り方を痛感しました。
席にそれぞれが座って、料理の注文をしたのですが、居合わせた黒服のマネージャーが、咳をして鼻水を出しているので、呆れてしまいました。
私はたまりかねて「明日とても大事な仕事で来たので、あなたの風邪が伝染ったら困ります。他の方に代わって下さい」と再三頼んだのですが、返事はしても代わろうとしないのです。本人は一生懸命にしているつもりなのでしょうが、立場をわきまえないサービスはとても迷惑です。案の定、私とスタッフの何人かは風邪を伝染され、夜中に大変な思いをしました。
地方に行っていつも感じることは、ホテルなど建物は立派になっているのですが、どうも内容がもう一つ建物と一対になっていないようです。
それに比べ、ヨーロッパに行くと、とても感心させられてしまうことがあります。一見レストランなのかホテルなのかよく分からない古い建物に入っても、一歩足を踏み入れると驚かされてしまいます。荷物係のボーイさん。フロント係の女性。レストランのウエイトレス、ウエイター。そのどの方々も自分の仕事にプライドを持ち、胸を張り、実に爽やかなマナーで迎えてくれます。
年配の従業員に、「もう古いんですか。このホテルで働き始めて」こう尋ねますと、「30年ちょっとです。このホテルは格式もあり、自分が働いていることに喜びを感じています」と、とてもいい言葉で答えてくれました。
そんな話を耳にしますと、見かけだけ派手な看板や、目立ったデコレーションをする必要などないことがわかります。中に働く人々の質の問題、働く人々の心掛け一つで、一流と言われるのです。決して、立派な建物や施設などが問題ではないと痛感しています。