正直、まったくやる事がなく完璧に飽きてしまっている機内で、ただただ目の前のシートテレビ画面のフライトマップで現在の飛行位置を穴が空くほど見つめてはいるが、気持ちとは裏腹に時間は哀しいくらい過ぎて行かない。
アメリカ中央部のシカゴから南下してブラジルに向かう航路は、マイアミ上空を通過後、アトランティック海上空、カリビアン上空、そしてやっと南米大陸までやって来るが、実はここからが長い路のり。
やっと半分の時間が経過しただけで、ブラジル大陸はヨーロッパ大陸全体よりも広く、近そうでもまだまだサンパウロまでは、とてつもなく遠い。
日本の国内線のシートマップ感覚で見てしまうと、数時間後には到着するような錯覚に陥るが、極限の我慢数値に近づいているみたいで、機内の気圧の低さから若干息苦しささえ感じる。
ロングフライトの狭い機内ではどんなに疲れていても、目を瞑って羊を数えても、今更眠れるわけでもなく
、まるでそこは我慢大会状態。
出来る事なら、今すぐにでも脱出したい心境だが、好きなファッションにたずさわり、先駆けてものを探すことが当たり前の今、他のひとに比べると恵まれた環境かもしれないと思うと、この辛さも一瞬でしかないはず。
強い人間に魅力を感じるし、憧れる。
信念を抱え、個性を重要視して人と違うファッションスタイルにこだわっているからこそ、古くさい言葉かも知れないが、辛抱することも数知れずある。
そう簡単にひとに理解してもらえないし、簡単に結果も出るはずがないことは承知の上でやっていること。
が、常に先を見て挑戦して行かなければ、いつまでたっても日本人が大好きな皆同じスタイルの人間ばかりが勢揃いして、面白味に欠ける。
知性と理性を持って、毅然と自己主張出来る人間に憧れる。
険しい路にはくじけそうになることも多いが、耐えた後に以前より強くなった自分がそこに居て、少しだけ前に進める。
この繰り返しにはなるが、世の中、こういうものだと受け入れて、あきらめずに頑張るしかない。
ぐちグチといっている間にそそろろサンパウロ上空へ。
窓の外に見える曇りがちなブラジルの空も、いつもの青空に変わる。
光明がさすことを祈りながら、5ヶ月ぶりにブラジル上陸です。
Obrigado !