物語は安元元年(1175)、大番役を終えた北条時政坂東彌十郎)が京の都から伊豆に帰国するところから始まる。

 第一回(「大いなる小競り合い」)は前半オールキャストの顔見世といったところか。

 話は北条ファミリーを軸に、千鶴丸太田恵晴)の悲劇も交えつつ、全体的にはコメディ タッチに展開していく。

 

 いささか無理のある感もする、畠山重忠中川大志)と和田義盛横田栄司)の登場はさしずめ源平の関羽と張飛が揃い踏みといったところだろうか。

 最後に大泉洋さん演じる鎌倉殿[源頼朝]のライバル・木曽義仲青木崇高)が巴御前秋元才加)とともに姿を見せ、序盤に退場するラスボス級ヒールの平清盛松平健)や、日本一の大天狗こと後白河法皇西田敏行)、更に菅田将暉さん演じる悲劇のスーパーヒーロー牛若丸[源義経]や、奥州の王者藤原秀衡田中泯)までもが顔を見せて、いやが上にも期待感を煽った。

 

 第二回(「佐殿の腹」)もコメディ色強めで、比企ファミリーも初登場し、前回からの顔見せも楽しく進行する。先週の「くびちょんぱ」はさすがにどうかとは思ったが、そもそも今の若い人たちに通じたんだろうか。個人的には、四十年前の『草燃える』では見られなかった八重姫新垣結衣)や比企尼草笛光子)を見られて、いまのところは満足。

 最後は、頼朝が義時(小栗旬)におのれの腹を見せるかのようなセリフで、次回に期待を持たせる。思っていたより少し早い気はするが、そろそろ京都から、源氏の蹶起を促す以仁王木村昴)の令旨が届く頃だろうか。予告編には源行家杉本哲太)や怪僧文覚市川猿之助)の姿も。以仁王を担ぎ出す源頼政品川徹さんが演じるというから、こちらも楽しみだ。歌人としても名高く、鵺退治でも知られるスーパー老人を品川さんがどう演じてくれるのだろう。

 

 第三回(「挙兵は慎重に」)も相変わらずコメディタッチに展開するけれど、あまり面白くはない。頼政もまるで存在感がなく、惜しいかぎり。時は早くも治承四年(1180)となり、以仁王は挙兵するも、あっさり鎮圧されてしまう。文覚もネット詐欺師みたいな扱いで、あまり盛り上がらず。せっかく芸達者たちが一癖も二癖もあるような人物を演じているのだから、もう少し何とかならないものかなあ。

 来週には山木(兼隆)攻めもありそうだし、いよいよ挙兵だろう。今後に期待したい。

 

 頼朝の第一子・千鶴丸が初回のドタバタに紛れて、あっさり殺されてしまったのはちょっと残念だ。頼朝の人格形成に少なからず影響を及ぼしたであろうし、孫を殺すという十字架を背負った祐親浅野和之)の生き方をも左右することになる印象的な出来事として、もっと丁寧に描いてほしかった。

 三谷幸喜さんの脚本は、俳優陣の個性をよく引き出していて、楽しいし、コメディタッチもいいのだけれど、現代風のギャグや流行語の挿入はせっかくの盛り上がりに水を指しかねない。ほどほどにしてほしいとは思う。

 

※()内はキャスト。敬称略

 四十三年前、1979大河『草燃える』が始まるとき、ピンポイントで見たい大河が始まると、本当に大きな期待で胸を膨らませた。もし年をとったいま見たら、同じ感想を抱くかどうかは分からないが、当時は子どもだったせいか、「政子の言い訳日記」といった趣の内容に感じられて、ひどくがっかりした。期待は失望に変わった。だから、いつの日か同じ舞台を扱った大河をもう一度、見てみたいと強く願っていた。

 四十年、待ったのだ。それが九日には叶おうとしている。

 

 二十一世紀になって、視聴率こそ下降気味の大河だが、近くを振り返ってみれば、2012大河『平清盛』はどこぞの県知事にケチをつけられはしたものの、山本耕史さんが演じる悪左府頼長の活躍や、松田翔太さんが演じる後白河法皇大天狗っぷりも楽しめたし、十分におもしろかった。唯一の不安は主人公平清盛の貫禄不足だったが、それも杞憂に終わる松山ケンイチさんの熱演ぶりだった。

 もう一つ見てみたかったのが”らしい”龍馬だった。『平清盛』の二年前、2010大河『龍馬伝』では福山雅治さんが演じる大柄で茫洋とした”らしい”龍馬や、香川照之さんが演じるエネルギッシュな弥太郎が縦横に活躍し、龍馬の生き方に深く関わってくる田中泯さんの吉田東洋や、大森南朋さんの武市半平太もイメージどおりで、大いに満足した。

 

 今回の2022大河『鎌倉殿の13人』も前評判は上々のようだ。四十年前の大河には登場しなかった八重姫比企尼上総介広常も描かれるらしい。期待するなという方が無理というものだろう。何といっても四十年も待ったのだ。もう一度、四十年待つのはちょっと勘弁してほしい。でも、三谷さんだ。きっと期待に応えてくれるに違いない。

 心から、九日が待ち遠しい。

 

 

 例えば鬼平といえば、二代目中村吉右衛門だ、いや、俺は初代松本白鸚だといった具合に、同じ英雄豪傑の演者であっても、思い浮かべる役者さんは人それぞれだろう。時代や世代によっても、ずいぶんと違いがありそうだ。

 今回は、私なりに思い浮かべる、歴史上の英雄豪傑たちのハマり役を考えてみたい。

 

 まずは戦国の三英傑から。

 1965大河『太閤記』の高橋幸治さんや、1973大河『国盗り物語』の高橋英樹さんに、1983大河『徳川家康』の役所広司さんなど、数々の名優が織田信長を演じてきた。なかでも現代の「型破りな信長」像を決定づけたのは高橋英樹さんの信長ではないだろうか。

 高橋さんの信長は非常に印象深く、多くの人の心に残った信長だったように思うが、個人的には少し豪快すぎる気もして、もっと繊細で、神経質な信長を見てみたい気もする。その点で2020大河『麒麟がくる』で染谷将太さんが演じた信長はユニークで、面白かった。これからも様々な信長が見られることを期待したい。

 

 秀吉といえば、1996大河『秀吉』で主役を見事に務めた竹中直人さんを思い浮かべる人が多いだろうし、実際に素晴らしかったが、個人的には1965大河『太閤記』の緒形拳さんを上げたい。とはいっても、私自身『太閤記』は見ておらず、写真ぐらいでしか知らない。それでも、私が緒形さんの秀吉を上げるのは、1978大河『黄金の日日』で再び緒形さんが秀吉を演じているからだ。彼の、とろけるような笑顔を見たら、司馬遼太郎さんが「人蕩し」と表現した秀吉を演じられるのは緒形さんをおいて他にはいないと思われてならない。

 

 三英傑、最後の一人、徳川家康といえば、1983大河『徳川家康』の滝田栄さんや、1987大河『独眼竜政宗』、2000大河『葵 徳川三代』などで演じた津川雅彦さんの印象が強そうだが、日本のドラマ史上もっとも豪華なキャストといっていい、東京放送(TBS)が創立30周年記念番組として制作した『関ヶ原』(1981)。この作品で演じた森繁久彌さんの家康は圧巻かつ完璧だった。全編に炸裂する森繁節は見る者を圧倒し、大いに感銘を受けたが、それは非常に演劇的で、あくまでも森繁家康であったように思う。

 もっとも家康らしさを感じさせてくれたのは『真田太平記』(1985、NHK)の中村梅之助さんだろうか。もしも若かりし頃の中村さんが青年時代の家康を演じていたならと思うと、残念でならない。そう思わせるほどに、中村さんの家康は家康らしく、素晴らしかった。

 

 森繁家康を向こうにまわして、『関ヶ原』で主役の石田三成を演じきったのが加藤剛さんだ。この作品の贅沢なところはわずか数分のエピソードにも銀幕の大スターを惜しげなく、配しているところだろう。

 ドラマ終盤、いわゆる島津の退き口で島津義弘を演じたのは大友柳太朗さんだ。西軍が壊滅し、退路を絶たれる中、「前ン方、敵中ば突破する」、「それしかなか。それに決めた」。島津維新入道義弘)が決然と言い放つ場面は何度見ても体中が震えてしまう。

 

 戦国大河と並んで人気の幕末大河

 1977大河『花神』で、主役級の高杉晋作を好演したのは新進気鋭の若手俳優・中村雅俊さんだった。その大柄で茫洋とした佇まいはどこか坂本龍馬を思わせた。中村さんの龍馬をいつの日にか見てみたいと長い間、夢想していたが、2010大河『龍馬伝』の福山雅治さんを見て、満足してしまった。それほどまでに福山龍馬には説得力があった。

 その『龍馬伝』で高杉を演じた伊勢谷友介さんの、凄みのある演技も印象深く、忘れ難いが、伊勢谷さんといえば、2015大河『花燃ゆ』での吉田松陰だろう。1990大河『翔ぶが如く』で西郷隆盛を演じた西田敏行さんもソックリだといわれたが、それにも増して伊勢谷さんの寅次郎(松陰)はその迫真の演技も含め、まさに生き写しであった。

 

 一方、『花神』で地味な主役を務めたのは中村梅之助さんだ。「火吹きダルマ」といわれた大村益次郎がまるで現代に蘇ったかのような熱演ぶりだった。そこに中村さんの、演技にかける誠実さと情熱が伺われる。もう一度、あの演技を見てみたいものだ。

 来年、2022大河『鎌倉殿の13人』ではどんな演技が見られるのだろう。三谷脚本に加え、芸達者も多く、期待するなという方が無理というものだ。正月九日を楽しみに待ちたい。