大晦〜白河夜船〜 | 嵐好き・まるの ブログ

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まるです。

Over50の葉担櫻葉erです。
徒然におはなしを書き、投げ込んであります。
基本は読み手。
色々なブログに顔を出しては、叫ばせていただいております。

どうぞよろしくお願いいたします^ ^




大晦(おおつごもり)

大晦日 おおみそか の
別名です。




今年も
大変お世話になりました。 


いつも読んでくださりありがとう。
いつも支えてくれてありがとう♡




明日にかけて
白河夜船というお話を
年越しに贈らせていただきます。




白河夜船のお話が初めての方は
こちらを
(といっても、すでに200話を超えるシリーズになってしまっておりますが)












今年のお正月はこちら


ご紹介はしましたが、
まったく読み直しなどしなくても大丈夫です。


ご存知かもしれませんが、
私の愛着のある方々なので、

一緒に年を越していただければ幸いです。



大晦日ですから
お忙しいと思いますので、

お暇な時に、
読んでくださると嬉しいです。







⭐︎⭐︎⭐︎


大晦。

この深川のお堀沿い。
翆屋でも、
お堀向こうの八幡様の
初詣の賑わいとも相まって、
先ほどまでは飲めや歌えやの騒ぎであったが、
粋な旦那様たちも、
この日のためにめかし込んだ艶な姐様たちも、
それぞれのうちで、
年神様をお迎えするために、
そろそろと引き上げていった。



そこに残りしは、
翆屋の若主人、雅と、
その幼馴染の 
三味線のお師匠 和。
浮世絵師の 智。
そして、この江戸の街中で、
知らぬものはない芝居役者の潤。

翆屋の仲居 ねうねう とともに、
奥の座敷で 酒を飲む。


ねうねうとともに、
この四人たち。
実は人には言えぬ裏の稼業もあるのだが、
それはそれ。
言わぬが仏。
聞かぬが花。


今日はただの江戸の街の民として、
酒を嗜みつつ、
一年を振り返る。

ただ、ただ。
来年もよき日であるように。
何かがあろうとも、
己らがそれを祓えば良いだけだ。

そのために、
己などどうでもよい。
この街の人々が幸せであれば良いと
酒を酌み交わしながら、
頷きあう。



「それにしても、
潤はご出世だこと。

次の小屋の演目は、
このお江戸の幕府を切り開いた
東照大権現様だとか。

ほんと、
すごい人になったもんだよ。」


酒が少し回ってきたのか、
和が智にもたれかかりながら、
潤に話しかける。


潤は、昔の小さな時のような幼い顔に戻りながらも、
ぐい呑みに酒を注いでにやりと笑う。



「ほんと、話が来た時は、
驚いたよ。

また、
お前たちも馴染みの小栗の旬ノ介が、
ついこないだまで、
俺と同じ箱で、
鎌倉三代記の北条義時様で、
いい芝居してやがる。

なかなか、
小難しいがまずはやるだけやってみようかと
思ってね。」


ああ。
いい漢(おとこ)になったな。

雅も、
我が幼馴染に目を細める。

正直潤が
己に言い寄っていた時は、
芸事に迷いもあったし驕りもあった。


いまは、
芸に精進する一端(いっぱし)の男(おのこ)の顔だ。

老若男女。
お江戸の皆を魅了するすごいやつとなった。


「くふふ。
楽しみにしてる。

私も、
櫻井様と観に行かせてもらうよ。」


雅が潤に、にっこりと笑いかけると、


「ああ、ずるい。
雅様。
私も観に行きとうございます。」

ねうねうが隣で拗ねるが、
雅に軽くあしらわれる。


「ねうねうは、
猫の姿に戻って芝居小屋に
忍び込めば、
いいじゃない。」


婀娜な姉御姿のねうねうは、
己の魅せ方が、わかっているのだろう。
小首を傾げて、
雅に訴える。


「もう、雅様ったら、
粋じゃないことを。

芝居見物など、
お江戸の花。
楽しまなくては、損じゃないですか。
ねぇ。
智様。」



「ま、ちがいねぇ。」


全く関係ないとばかりに、
話を振られた智は、
嬉しそうに和の腰を抱きながら、
酒を入れた茶碗を煽って、
適当な返事を返す。


もとより、
好きな絵を好きな時に描く
その日暮らしの気ままな猫のような男。

好きなもの以外にはまったく興を示さない。

描いた絵は、
なにやら、東洲斎などという屋号がついて、
江戸中の者の垂涎の的となっているが、
そんなことは智の知ったことじゃない。

智の目には、
横にいる艶めかしい和しか映ってはいないのだ。



「じゃ、そろそろ帰るか。和。
しっぽりと
新しい年をむかえようじゃないか。」


いい具合に酔って赤らむ艶やかな和の肩を抱けば、
その三味の響きやら、
その姿の艶っぽさから、
江戸中の目を惹きつける和が、
待ってましたとばかりにしなだれかかる。


「はい。智。」


同じぐらいのたっぱのくせに、
智にすっぽりと収まるように、
小さくなれば、


「お前の三味より、
いい音でしっかり鳴かせてやるからな。

楽しみにしてろ。」


にやりと和の耳に囁いて、
足早に翆屋を去っていく。



「あの人は、まだお見えにはなれないねぇ。」



二人が消えた勝手口の向こうの
江戸の闇。

雅は、
深々と冷えた真っ暗な江戸の夜に向かって、
誰ともなしにつぶやいた。








⭐︎つづく⭐︎










本当は夜にあげるべきかと
思いましたが、


書けた直後に上げてしまいます。




夜は、
翔様と潤様を
堪能しましょ^_^




よいお年を
お迎えください。




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