白河夜船 1 | 嵐好き・まるの ブログ

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まるです。

Over50の葉担櫻葉erです。
徒然におはなしを書き、投げ込んであります。
基本は読み手。
色々なブログに顔を出しては、叫ばせていただいております。

どうぞよろしくお願いいたします^ ^





お江戸 深川は 
老中もお勤めになったお偉いかたのお屋敷のお膝元とはいえ、
下町であることは変わりない。

深川名物浅蜊を売る声。
辻売りが瓦版を売ろうとて、
有る事無い事囃し立て、
往来を尻端折りで歩く男どもと、
喧しい声で叫ぶおかみさんたちと、
長屋の威勢の良い職人衆。

あちらこちらに声が飛び交い、
それはそれは、
とても活気のある賑わいを見せる。




そんな深川でも
しっとりと 日が西に沈んで、
少しずつ闇に包まれていけば、
長屋の方から聞こえるおかみさんたちの声や、
三味線の音、子供たちの騒ぐ声が少しずつ消え、
もう町木戸の閉じた中。



そして、
代わりに

酸いも甘いも知り尽くした 遊び人たちが
妖しく光る 堀端の灯りや、
屋台の蕎麦屋
江戸前のネタを揚げた天ぷら屋の屋台や、
綺麗なおねいさんのいる船宿、茶屋に
夏の虫のように群がってくる。



ここ、

翠屋

もそんな茶屋の一つ。


珍しく、
いなせな若い主人が 仕切ってる
昨今評判の高い料理茶屋ってんで、
昼間は、
若い お嬢様が絶えない店だが、
やはり、夕。

素敵なお着物のお嬢様は、
もうお屋敷に戻られて、
そのかわり
訳ありの御新造と侍様や、
斜めに髷を結った遊び人と堅気のお嬢様。
色々な方々が、
こっそりとお訪ねになっては、
二階の部屋にお消えになり、
ご主人が腕を振るう
美味しい料理を肴に、
お二人で酒など酌み交わす。




ご主人のお名前は、
雅。

若き麗しい風貌なれど、
深川の 光と影。

いや、
深川の水の深さよりも、
深い何かを知っている男である。



☆つづく☆