敬頌新禧 〜白河夜船〜 1 | 嵐好き・まるの ブログ

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どうぞよろしくお願いいたします^ ^

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江戸の年越といえば、

武家は元日から年賀登城で、

大忙しの中、

商人はひっそりと元日を迎える。

何しろ、

大晦日までは商いに明け暮れ、

そして明け方に近くの寺か神社に参って

初詣。


そして、

竈の神様にお参りをして

この新しい一日をひっそりと過ごすのだ。


元日に往来を歩いているようなものはほぼいない。


どの家も、

元日は新しい年神様をお迎えして

お屠蘇とお節をつまんで神妙に過ごす。



雅の営む翠屋も右に倣え。

大晦日まで、

お客人たちのどんちゃん騒ぎにお付き合いし、

片付けが済ませて

やっとのことで初詣。


ほうほうの程で

家にたどり着いたばかりである。


「雅。疲れているだろう。

悪いな。

俺に付き合わせて。」


そばに付き添うのは、

雅の惚れた御人である与力の櫻井。


世に出たらこの町内一体を顎ひとつで仕切る

一角の御人である与力様との

初詣であればご利益も百萬倍だろうと

使用人のねうねうや、

一緒にご利益に預かった

絵師の智や、三味のお師匠の和などは思っているが、


惚れた弱みか、

当の雅と櫻井の御両人は全く気がついてはいない。


とにかく。

やっとのことで家。


皆の新年祝はこれから始まるところである。



「さ、櫻井様。

今日くらいは捕物もありませぬ。

ささ、屠蘇でも召し上がれ。」


雅が黒塗りの屠蘇器から

綺麗な蒔絵を施した急須の形をした屠蘇徳利を手にした時だった。





「助けてください。

与力の櫻井様はこちらにいらっしゃいますか?」



邪魔をするかのような声が、

近くから聞こえた。




⭐︎つづく⭐︎