標定点の誤差表示の変更 (Metashape ver.1.5.4) | 山口大学 空中測量(UAV写真測量)研究室の技術ノート

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【このテーマでは、きちんと記事にまとめる暇のない、速報的なメモ書きを掲載します。】

 

Metashape Professional version 1.5.4では、以前のバージョン(PhotoScan Proを含む)と比べ、標定点の誤差表示に大きな変更があったようです。

知らないままだと、精度の報告や設定を誤る恐れのある、ちょっと怖い変更です。

私の研究室でも最近気づいて驚き、確認・検証中ですが、現時点でわかったことをメモしていきます。

ユーザーの方や販売者の方に参考にしていただければ幸いです。

 

具体的な現象としては、下図のように座標データペインで、マーカーにチェックを入れたときと入れないときで、表示される誤差 (m)や誤差 (pix)の値が変化する、という問題です。復習しますと、

  • 誤差 (m)は、世界座標系(本記事ではChunkに設定された座標系を指す)での、推定された座標と実測された座標の差(を3軸合成したもの:距離)
  • 誤差 (pix)はマーカーの再投影誤差(交会残差)の、マーカーが観測(自動検出 or 手動登録)された全画像に関するRMS

ですから、カメラパラメータもジオリファレンスも更新されていないのに変わるのはおかしいわけです。

 

 

この例では変化が小さいですが、プロジェクトによっては例えば誤差 (pix)の表示が倍以上変化することもあります。

 

この問題は、バージョン1.5.4と1.5.5で確認され、Change logには記載がないため、バグかと思い、Agisoft Forumでバグ報告しました。その後速やかに、Agisoftの担当者の方から回答があり、この現象は1.5.4で新規導入された仕様とのことでした。

 

詳細は返信にてさらに確認中であり、詳しくは質問のページをご覧いただければと思いますが、現時点での私の理解は次の通りです(今後、更新される可能性が十分あることにご注意ください)。

  • 以前のバージョンでは、チェックの有無にかかわらず、表示される誤差 (m)は、三角測量 (※1)により推定された世界座標と、実測世界座標(地上測量などで与えられた位置)との差(を3軸合成したもの:距離)であった。同時に、表示される座標の推定値は、三角測量により推定された世界座標であった。
  • 1.5.4以降では、チェックされたマーカーについては、表示される世界座標の推定値が三角測量によるものではなく、バンドル調整で調整された世界座標となった。対応して、表示される誤差 (m)も、バンドル調整で調整された世界座標と、実測座標との差(を3軸合成したもの:距離)となった。
  • この変更に対応して、1.5.4以降では誤差 (pix)も、「『三角測量によって推定された世界座標』ではなく『バンドル調整で調整された世界座標』を、推定されたカメラパラメータを使って各画像に投影した位置」とマーカーが観測された位置の距離のRMS、に変更された。
この変更を知らないと、標定点残差 [m]を誤って報告することになりますし、誤差 (pix)を参考にマーカー精度 (pix)を設定するは、意図しない設定をすることになります
 
なおrepeatSfMをご利用の場合、errStats.csvに出力される標定点の誤差 [m]・再投影誤差 [pix]統計量は、Metashape GUIで言えば上記の「以前のバージョン」に相当する方法で別途計算したものですので、上記の変更の影響はありません。つまり、誤差 [m]は、三角測量で推定した世界座標と実測世界座標の差で、再投影誤差 [pix]は、「三角測量で推定された世界座標」の投影位置と観測位置との差で計算しています。
 
※1
triangulation;カメラパラメータの推定値と、マーカーが各画像上で観測された座標を用いる。