PhotoScanを極める 15. 教科書的手順 Step 8 | 山口大学 空中測量(UAV写真測量)研究室の技術ノート

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【このテーマの記事は、UAV写真測量に必要な解析や、そのためのAgisoft PhotoScanの操作について解説しつつ、適切な設定の探し方を提案することを目的とします。注意事項や用語説明もありますので、最初のページから読んでください。教科書的な操作手順表はこちらのページにあります。】

 

Step 8では、GCP(標定点)・検証用地点・手動タイポイントとして使うための、マーカーの設置を行う。

 

<マーカーの設置>

マーカーとは、人間が位置を定義した3次元空間上の点である。マーカーの位置は、複数の画像上での座標を指定することで、既に推定されているカメラモデルに従って定義される。再投影誤差が最小となる3次元座標に定義されるものと思われる。モデルビューで設置することも不可能ではないが、画像上で設置するのに比べ、位置精度に劣る。

 

マーカーの設置を行うには、「写真」ペインで1つの画像をダブルクリックして開き、マーカーを設置したいおよその場所でコンテキストメニューから「マーカー作成」を選べばよい。

 

 

作成したマーカーをドラッグ&ドロップすれば、移動できる。ズームインして、サブピクセルの細かさで位置の微修正を行うのがよい。

 


現在のバージョンでは、「写真のアラインメント」を実施済みであれば、ガイド付きマーカー設置("guided marker placement")が可能である。具体的には、1枚の画像にマーカーを設置するだけで、PhotoScanが他の画像での位置を予測して仮設置してくれる(他の画像上に青いフラグが現れる)。そのため、他の画像に関しては位置を修正するだけで済む。位置を修正すると青いフラグが黄緑色になる。

この位置修正は、そのマーカーが写っている全ての画像で行うべきだ。位置がまだ修正されていないマーカーの写っている画像には、「写真」ペインで青色のフラグが表示される。

 

 

<再投影誤差の確認>

作成したマーカーの一覧は、「座標データ」ペインに表示されている。
 


座標データペインには様々な列があり、横に長いほか、上部のボタン「ソースを表示」「エラーを表示」「推定値を表示」で、表示する情報を切り替えるようになっている。上のスクリーンショットでは、「ソースを表示」を選択しており、また、表示の都合上、列の順番を入れ替えている。

「プロジェクション」列は、マーカーが写っている画像の数を示している。また、誤差 (pix)列は、そのマーカーの再投影誤差の、写っている全ての画像に関するRMSである。この列の値が顕著に大きいマーカーがある場合、各画像のマーカーの位置が適切か、もう一度確認すべきだ。

この時点では、どのマーカーにも世界座標を与えていないため、他の列は空白になっている。

 

今回は、座標が精密に計算できる17点にマーカーを設けた。中央の撮影位置から見たマーカーの配置は次の通りだ。

 

 

 

<マーカーの役割>

マーカーの用途は色々あり得るが、ここで想定しているUAV写真測量では、GCP、検証用地点、そして手動タイポイント(人間が目視判読で設置した、世界座標が与えられないタイポイントで、丁寧に設置すれば、自動マッチングによるものより信頼性が高い)である。各マーカーの役割は次のように決まる。

 

  • 次のステップで座標を入力し、「座標データ」ペインでチェックを付ければ、GCP(「コントロールポイント」)
  • 次のステップで座標を入力し、「座標データ」ペインでチェックを付けなければ、検証用地点(「チェックポイント」)
  • 座標を入力しなければ、手動タイポイント

 

手動タイポイントとしてのマーカーは、現地測量していない地点にも設置できる。画像上で位置が判読できる、撮影中に動かない点であれば、石でも道路の亀裂の交差点でも構わない。対空標識など現地で置いたものである必要はないから、現地測量の手間なく設置することができる。これらは、丁寧に設置すればSfMの精度を上げうるし、私が後で提案する予定「設定の候補のどれが良いかを判断する」ための方法において重要な役割を果たす。