PhotoScanを極める 13. 教科書的手順 Step 6 | 山口大学 空中測量(UAV写真測量)研究室の技術ノート

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【このテーマの記事は、UAV写真測量に必要な解析や、そのためのAgisoft PhotoScanの操作について解説しつつ、適切な設定の探し方を提案することを目的とします。注意事項や用語説明もありますので、最初のページから読んでください。教科書的な操作手順表はこちらのページにあります。】

 

Step 6では、疎な点群の品質管理として、品質が悪いと思われる一部の点を任意に選択し、削除する。

 

まず、「モデル」ビューで疎な点群を色々な角度から観察してみて、明らかに位置のおかしい点があれば、ツールバーの「長方形選択」("Rectangle Selection"))ツールなどを使ってその点を選び、「編集」("Edit")メニューの「選択範囲を削除」("Delete Selection") 、またはDeleteキーで削除するべきだ。

 

 

自動的な選択にはいくつか方法があり、マスク・色を基準に使うこともできるが、ここでは再投影誤差などを基準にする「編集」("Edit")メニューの「段階的選択」("Gradual Selection")を扱う。

 

「段階的選択」では、「基準」("Criterion")と「レベル」("Level"; 閾値)を指定することで点を選択する。基準には

  • 「プロジェクションエラー」("Reprojection error"): 再投影誤差
  • 「再構築の不確実性」("Reconstruction Uncertainty"):定義は不明だが、3次元座標の推定に使われた画像のカメラ位置が相近く、基線長の短い(誤差が出やすい)座標推定になった点を選択できるらしい。
  • 「イメージカウント」("Image count"):その点の3次元座標推定に使われた画像の数
  • 「プロジェクションの精度」("Projection Accuracy"):定義は不明だが、スケールが大きいために画像上の位置精度が悪いタイポイントを選択できるらしい。

悩ましい選択ではあるが、ユーザーマニュアルでは、SfMの精度に最も直接影響する基準は「プロジェクションエラー」であるとされている。再投影誤差は各画像について定義できるため、ここで設定する閾値は、その点の座標推定に使われた全画像に関するRMSに対するものであると解釈できる。

 

 

「レベル」を動かすたびに、選択された点が赤くマークされる。また、「モデル」ビューの左下に表示された選ばれた点数(ここでは2608点)もリアルタイムに更新されるので、自分が何割くらいの点を削除しようとしているのかがわかる。

 

ちなみに「プロジェクションエラー」は、特徴点のスケールでの再投影誤差なので、レベルに単位はない。

 

「レベル」の設定は非常に悩ましい。再投影誤差が大きい順に選ばれるわけだから、「レベル」を厳しく(値を小さく)すればするほど、再投影誤差の少ない点だけが残る。しかし、カメラモデルのあてはめに使われるトレーニングデータが減るということだから、カメラパラメータの推定において前述の過適合が発生しやすくなる(言い換えれば、推定がトレーニングデータの誤差に左右されやすくなる:不安定になる)。

 

 

さらに、そもそも再投影誤差が大きい点も、現時点で推定されているカメラパラメータが不正確だから汚名を着せられているだけかもしれない。そう考えると、他の基準も合わせて検討すべきように思えてくる。

 

今回はとりあえず再投影誤差のみを使い、上の画像の通り、約3割の点を削除することにした。「編集」("Edit")メニューの「選択範囲を削除」("Delete Selection") で削除が出来る。

 

 

 

Chunk 1ダイアログを見ると、「RMS再プロジェクションエラー」(再投影誤差)が大幅に減少(0.0472478 → 0.0198897)したことが確認できる。トレーニングデータの中から、残差が大きいものを消したわけだから、残差が小さくなるのは当たり前である。「中間キーポイントサイズ」は意外にも少し増えているから、今回の場合、大きなスケールのタイポイントばかりが除かれたというわけではなさそうだ。これらの項目の意味についてはこのページを復習されたい。