PhotoScanを極める 2. 対空標識は増やせない | 山口大学 空中測量(UAV写真測量)研究室の技術ノート

山口大学 空中測量(UAV写真測量)研究室の技術ノート

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【このテーマの記事は、UAV写真測量に必要な解析や、そのためのAgisoft PhotoScanの操作について解説しつつ、適切な設定の探し方を提案することを目的とします。注意事項や用語説明もありますので、最初のページから読んでください。

 

状況に合った設定、つまり自分の状況で満足できる設定を見つける最も原始的な方法は、様々な設定候補の1つ1つについて通常のSfM処理を行い、予め用意した設定調整用の検証用地点(対空標識(画像上で判読可能な目印で、現地測量で世界座標が測られたもの)が置かれた地点で、GCPとして使われていない地点 ※;「チェックポイント」)で評価した座標推定の精度(誤差の小ささ;PhotoScanでは誤差の二乗平均平方根:RMSで表すことが多い)が一番良くなるような設定を選ぶことだ。色々な設定候補について処理を繰り返す手間は、自動化のための機能("Chunk"やPythonインターフェース;本テーマの記事では扱わない)を活用することで抑えられるだろう。

 

図. トータルステーションによる対空標識(白と黒のターゲット)の現地測量の様子。

対空標識はアクセスの良い場所に置けるとは限らないし、測量に手間がかかる。

 

この方法は統計学的にも理にかなっているが、ジオリファレンスのためのGCPや、最終的な成果物である密な点群、DSM: Digital Surface Model(地物の表面高のラスタ;デジタル標高モデル=DEM: Digital Elevation Modelと意味が近いが、空中写真測量で得られる標高が地面ではなく植生などの表面の標高であることを強調した表現)などの精度チェックのための検証用地点に加えて、新たにSfMの設定の調整のための検証用地点の現地測量が必要になり、コスト面で実用性が損なわれる。むろん、最終的な精度チェック用の検証用地点をSfMの設定の調整にも流用してしまえば、最終的な精度チェックがフェアなものではなくなる。


実際、土木業界の人から良く聞かれる質問の1つが「対空標識は、最少で何点必要か」である。対空標識の設置とその現地測量は高くつき、UAV写真測量のコストに直結するのだ。検証用地点は、最終的な精度チェックのための少数のみに抑えるべきで、設定の調整のために割く(消費する)べきではない

 

※ PhotoScanの通常の使い方では、GCPが、ジオリファレンスだけでなく、カメラパラメータの最適化にも使われる。これは、SfMというよりは空中写真測量の流れを汲むGCPの扱いであるらしく、カメラパラメータの改善に寄与する一方で、必要なGCPを増やす原因になる。