PhotoScanを極める 3. 表示誤差が小さければよい? | 山口大学 空中測量(UAV写真測量)研究室の技術ノート

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【このテーマの記事は、UAV写真測量に必要な解析や、そのためのAgisoft PhotoScanの操作について解説しつつ、適切な設定の探し方を提案することを目的とします。注意事項や用語説明もありますので、最初のページから読んでください。

 

また、PhotoScanで表示可能な、粗い点群(sparse point cloud; SfMで生成される3次元の点:タイポイントの集合)に関する再投影誤差(Reprojection Error;SfMで推定されたカメラパラメータに基づき、同じくSfMで生成されたタイポイントを、その3次元座標推定に使われた画像に投影したときの、タイポイントの画像座標との位置のずれ)のRMSや、GCPの世界座標の推定誤差のRMSが最小になる設定を探すのは、統計学的に正しいとは言えない。そのような選び方をすれば「過適合 (overfitting)」に陥る可能性がある。

 

図. PhotoScanでの再投影誤差のRMSの表示例(「RMS再プロジェクションエラー」)。

 

SfMを統計学的にとらえれば、カメラと点群から構成される幾何学モデルの、タイポイントやGCPというデータへのあてはめとみなすことが出来る。PhotoScanによるSfMにおける悩ましい設定項目は、マッチングに関する品質管理と、カメラモデルで考慮する内部パラメータの選択である。

 

回帰分析における回帰モデルのあてはめ (fitting)に例えれば、前者はトレーニングデータの数と誤差レベルに影響し、後者はモデルの柔軟性(複雑さ)に影響する。点群の再投影誤差や、GCPの世界座標の推定誤差のRMSは、トレーニングデータへのあてはめの残差のRMSである。これらを小さくする設定を追求すると、GCPについてはよくあてはまるが、GCP以外の点に関する座標推定誤差は大きい、過度に複雑なモデルが選択される。例えば、カメラモデルで、PhotoScanで考慮可能な全ての内部パラメータを常に選択することになる(※)。これは経験ではなく、統計学的な事実である。

 

※ 「RMSの最小化」という最適化が常に大域的最適解を見つけられる理想的な場合の話で、実際のPhotoScanによる最適化は大域的最適解に至らない場合もあるため、いつもそうなる保証はない。