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その土曜日、7時58分:シドニー・ルメット監督の最新作

シドニー・ルメット監督の新作:その土曜日、7時58分
Before The Devil Knows You're Dead (2007)★★★★☆

  ついに日本公開となりました。約1年後ですね。改めて以下のレビューを再度アップさせていただきます。ネタばれ少々あり。 私の大好きな俳優、フィリップ・シーモア・ホフマンが主演の新作、ビフォー・ザ・デビル・ノウズ・ユア・デッドを観て来た。(注:去年の11月)題名を日本語に訳すと「悪魔があなたが死んでる事を知る前に」(日本語だと難しです!)となる。ストーリーは二人の兄弟、兄のアンディ(ホフマン)と弟のハンク(イーサン・ホーク)が金に困った解決策として、兄弟の両親が経営する小さな宝石店を襲うことに。この発想だけでもかなりユニークだが、そこからの展開がなかなか予測がつかない。時間軸の表現も宝石店へ押し入ったところを映画のスタート時点として、その前後をシャッフルして見せていくので、テンポが早い。ストーリーの辻褄合わせの一部を課せられた観客は、暫くは気が抜けない。

   始まりは朝、ハンクが知り合いを乗せ車で郊外の宝石店へ向かう。ちょうど店の前に入って来た配送車の駐車にじゃまをされて、その日店を開けに入ったのがママだとは知らない。そして予定通り、その友人に強盗させるのだが、オモチャのピストルの約束が、本物を持参されてしまった事から悲劇の道を一気にノン・ストップで落ちてゆく。店に出勤したママが強盗に撃たれ、意識を回復しないまま…。強盗に入った友人もまた…と。そしてアンディの妻が実は弟ハンクと情事の関係があったり。パパは取り合ってくれない警察に憤慨し、自ら犯人の背後を探り出す、というように話が絡み始める。

    アンディの人格がひとつのパターンにはまらないので、観る側にとっては戸惑うところもあるが、そういった冷静的判断をさせないほど、フィリップ・ホフマンの演技が素晴らしい。彼の過去の作品で、自分が務める銀行の金を横領し、ギャンブルにのめり込みながら、勝っても一向に喜びを感じない主人公を演じたOwning Mahony を思い出した。これは実話を基に作られた地味な映画だけれど、ホフマン独特のぐっと感情を押し殺す表現にはこの役との共通点がみられる。もちろん、カポーティ役も大好きだけれどマグノリアの看護士役はとっても良かったし。妻の自殺後、自分に残された手紙をずーっと開けられずにいる夫を主演した Love Liza、Flawlessのオカマ役。ホフマンは数多くの映画で幅広い役をこなし、舞台でも活躍している。
またイーサン・ホークの演技も、この映画では更に磨きがかかったように思えた。兄アンディの妻役、マリッサ・トーメイもはまり役だ。という訳でこの映画はキャスティングで成功している。余談だけれど、フィリップ・シーモアもイーサン・ホークもニューヨーカーなんですよ。
ビフォー