愛と平和の弾薬庫 -27ページ目

愛と平和の弾薬庫

心に弾丸を。腹の底に地雷原を。
目には笑みを。
刺激より愛を。
平穏より平和を。
音源⇨ https://eggs.mu/artist/roughblue

 一応、俺にも彩子って存在はある。中学の同級生で成人式の日、同窓会みたいな飲み会で五年ぶりに会った。そこからつきあいだし、そのうち別々にアパート借りてんのもあれだよねえ、となって俺が彩子の部屋に転がり込んだ。

今んところ、彩子が俺にとって最初で最後の女だ。あとは残念ながら、お酒にもお茶にも誘われたことはない。つまり俺はそういう、何と言うか、〈かろうじて彩子に相手にされた男〉なのだ。

とか言っても、もちろん彩子が最低ラインの女だとかってわけじゃない。美人とは言えないまでも充分に可愛いし、性格も明るい。俺の倍以上稼いでくるのに俺の派遣社員の稼ぎに文句なんて言わない。コンビニ弁当なんて昼だけで充分とか言って夜は毎日料理するし、そいつがかなり上手で旨い。そんで何より……ストラトキャスターな適度に貧弱なボディ。てなわけでもう完璧と言っていいぐらいの女なのだ。

そんな彩子に相手にされてる、どころか一緒に暮らしてるぐらいで、このまま行けば結婚? なんてぐらいだから俺も男としてそれなりなんだろうか。だとしたら、いきなり声をかけられたり、こんなふうに暗がりで見つめられたり、そんな状況は、「モテてる」と考えてもいいんだろうか。

だんだん暗がりの向こうに目をやる回数が多くなる。女はずっとこっちを見てる。マズい。物凄くいい気分だ。

とっくに「ルビー・チューズデイ」は終ってて、ボブ・ディランの武道館バージョン「ミスター・タンブリンマン」も二度目のサビに入ろうとしてる。俺はピックを握り直した。起きろ、グラモックス! 目覚めて楽しめ! つっても次は「アイ・ソウ・ハー・スタンディング・ゼア」で、そん次は「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」、ちなみにどっちもオリジナル・レコーディング・バージョン。どこまでもベタな選曲。やっぱきょうは無理か? グラモックス……。



 結局グラモックスはその本領を発揮しなかった。しかし俺はひと仕事終えた職人さながら、まあ素人にはわかんめーがな、ってな少々渋めな満足感を胸に控え室に戻った。女はまるでずっとそこにいたかのような顔で、さっきと同じ場所――ベンチの隅、俺のギターケースのそば――に座って音楽雑誌のページをゆっくりめくってた。そうすることで、本日の出演者と思しき、どっからどう見ても高校生なのにしっかり煙をくゆらせてる4人の男子たちの視線を完全にシャットアウトしてるようだ。出番はまだまだ先なんだろう、彼女の仲間らしき人間はまだ一人も見えない。

 「ずいッぶん無難な曲ばっかやってんだね」

俺が歩み寄ると女は雑誌を閉じて声をかけてきた。高校生たちの会話が一瞬やんだ。まずはお疲れさんだろ、と思ったが、まあ、ありきたりなやりとりなんてどうでもいい。だがしかしやっぱ、カッチーンとはくる。グラモックスをギターケースに突っ込みながら俺は言った。「借りもんだから」

 「ギターが借り物だと選曲もあんなんなるの?」

シールドをギターケースに突っ込んだ。「俺が。きょうのこれは手伝い」

 「まあ、そうなんだろうけどさ」

 何だよ、知ってたのかよ。やっぱ富岡の友達だ。シールドをもう1本、エフェクターも突っ込んだ。きょうはディストーション1個。

 「つまんないの。つまんな過ぎ」

 「そこまで退屈なの聞かせたかよ」

やっぱこいつも使えばよかったか? スライドバーを軍手に包んで仕舞い、俺は女を見た。

 「じゃなくて、借り物で一日生きちゃったんだと思って」

 でかい瞳は別に、俺を責めてたりはしてない。ただ深い黒さをたたえて俺を見つめ返してるだけだ。俺はギターケースに両手を添え、屈んだ姿勢で女の顔をまじまじ見た。女はほんのちょっと顎を突き出して首を傾げた――借り物としての一日。きょうは確かにそんな一日で、他にどんな目的も認識もなかった。でもそのわりには楽しめた。こいつのおかげだ。

 「だったら大丈夫」 俺は言った。「借り物にしては楽しめたし」

 「そうなんだ……?」

 「そうなんだな」

 「そう言えば、けっこう楽しそうだったもんね」

 「まあね」

 「よかった、よかった」

 「ありがとね」

 「どういたしまして」

女は何をどんなふうに納得したのか知らないが、そう答えてニコッと笑った。俺はギターを背負って立ち上がった。その時、富岡たちがステージからガヤガヤ戻ってきた。高校生の喫煙者たちが出ていく。富岡たちが発するぬるい騒音で控え室が満たされてくる。俺は女に 「じゃ……」、富岡に 「お疲れさん!」 と手を上げドアに向かった。

 「あ、ソーヤさん」富岡が駆け寄ってきて言う。「何つうか、一応打ち上げとか予約してんすけど」

 お義理だけとも思えない、妙にあったかい声だった。でもその声にほだされて付き合えばどうなるかは目に見えてる。軽率なロック談義。そんな中で偉そうにしゃべる俺。軽薄と軽率の泥沼。それに第一、まだ酒には明るすぎる。さらには、彩子より遅くなるわけにはいかない。

 「わり! ちょっと」 は手刀を切り、とっとと背を向けようとした。

富岡があわてる。「ソーヤさん! あの!」

何だよ、そんなに俺と飲みてえのか? でもなんで。意外な気分で振り向くと、富岡は微妙に目線を落としてる。「何つうか……その」

 なにモジモジしてんだよ。気持ちわり。

 「あれっす!」 やっと富岡が顔を上げた。「次やる曲決めたらまた電話しますんで。お疲れさんした!」

 何だよ、それだけかよ。

 「ああ、待ってるわ」

軽く手をかざし、俺はドアノブを回した。


  ステージに出たら真っ暗な中にけっこう人の気配があった。つっても十五、六人も入ったら上々と思ってた俺にとっての「けっこう」で、たぶん四十人だ。パイプ椅子の数がそうだったから。

練習スタジオに毛が生えた程度のこんなホールじゃ普通はオール・スタンディングで、パイプ椅子なんて並べない。だったらなんできょうはパイプ椅子が並んでるのか。主催者が「オール・スタンディングなんてムリ!」ってな結論を出したからだ。てなふうに結論する主催者ってのはどんな主催者なのかってえと……

 「ついにギターを買っちゃいました!」「ということはやっぱバンドだよね!」

 「バンド組んだらコンサートじゃん!」「でもヘタクソ! とか言われるかな」

 「そんでイヤになって一発で解散とか」「うわあ、それって最悪。カッコ悪!」

 「なら私たちで主催すればよくない?」「いい感じな人たちに出てもらって!」

 「決定! それでいこう! でも……」「どんだけ見に来てくれるんだろうね」

 「うちはお母さんとじいちゃんと……」「絶対、立ってなんて見てらんないな」

 「無理無理! 椅子は絶対必要だって」「お客さんは座りで、初ライヴ決定!」

……ってな、つるんつるんの女子高生なのだった。

なもんで午後二時開演でまだ三時。

ちなみに俺は女子高生でもその同級生でもない。だったらなんでこんな「発表会」なんかに出ることになったのかってえと……

三月、三年続いたバンドが震災のせいで自然消滅した。四月中旬、やっぱ退屈、ってな感慨が俺を包んだ。そんな折、弦を買いに入った楽器屋の壁にメンバー募集の貼り紙があった。そこに書かれてた十一桁の番号をなにげに押した。電話に出た富岡ってやつは「九月のジャズフェスでバッチリ決めたいんすよ、ストーンズ中心で十曲くらいすかね」と力強く語るものの、会ってみればロックなんてろくに知らない大学生だった。でも練習のスタジオ代も正式加入までは他のメンバーで払う、練習する日もこっちの不定期なバイト状況に合わせてくれるってんで、入った。九月のジャズフェスまで半年の暇つぶしってな気分で。

メンバーは、ボーカル&ギターの富岡とベースとドラムが男、キーボードが女、俺が入って五人。

富岡は滑らかで聞きやすい声をしていた。感動なんてしないが悪くはない。ベースとドラムは上手くもなんともないが、相性はいいようでリズム隊としては合格。ただキーボードは……いわゆる、お上手なだけで全然乗れてない、だった。

俺以外の四人はほとんどいつもニコニコしてる。あーあーあそっかそうだねなるほどぉ的空気の中で、俺はほとんど背を向けて弾いてる。甘ったるい平和さにはどうしても馴染めないのだ。

そんな仲良し四人組が練習のあとスタジオで「うんうんそうだね」をやってたら女子高生たちに声をかけられた――あのう、今度コンサートみたいのやろうと思ってるんですよぉ。

俺はすでに駅のホームに立っていた。携帯から富岡が言った――女子高生主催のギグってダメすかね。

何も「お客さん」の俺に訊かなくたっていいだろ、と思いつつ俺は言った――いいんじゃねーの。


きょうのセットリストを決めるにあたり富岡は鼻の穴をおっぴろげた――バンドってのはこーやるんだってか、ロックの王道を見せてやりたいんすよ!

 お前がロックの王道を語るか? ってなもんだが、俺は人のバンドじゃいっさい選曲に口をはさまない。結果、セットリストはハタチの富岡の狭い音楽ボキャブラリーをさらに狭めた中から選ばれた。当然ドアーズもジャニスも、控え室にいたあの女を唸らせられそうな曲なんて一曲も入ってない。

アンプ内蔵のリバーブを切ってチャースカチャー、カッティングの響きを確認、コーラス用のマイクを口の高さに合わせて準備万端、富岡に顎を引いてみせると、遅れてステージに上がった俺をのんびり眺めてた富岡がニコニコ頷き返し、次の瞬間、マイクを両手でつかみ、ほんの少し前かがみになり叫んだ。

 「ウェルカム! スイート・リトル・エンジェルス!」

ドラムのカウントがかぶり気味に入る。

ああ……と思った。そこまで軽かったか、富岡くん。

やっぱこのバンドは手伝いだけだ。

唐突なチャラさに半拍遅れた一曲目は「ステッピン・ストーン」のピストルズ・バージョンだった。しかしどっからどう見てもジョニー・ロットンってよりデイビー・ジョーンズの富岡。だったらってんで練習でモンキーズ調に弾いてみたら、練習が終ったあと富岡は言った。

 「ソーヤさんのステッピン・ストーンって軽いってか、誰のバージョンすか?」

 富岡はバージョンにこだわる。こっちは好きに弾いてるだけなんだが、まだつきあい始めだったんで素直に答えた。「強いて言えばオリジナル。モンキーズ」

 「えーっ、あれってピストルズの曲じゃなかったんすかッ!」

 なんでそこまで驚く。なーんか神経にさわるやっちゃ、と初めて思った瞬間だった。でも俺は冷静だった。「うん、モンキーズ。で、作ったのは」

 「へーッ! そうだったんすかッ」富岡は人の話をさえぎり、さらに何度も頷いた。「ふうん、モンキーズだったんだぁ」モンキーズなんて知らねえだろうに、「なるほどぉ」富岡はまたしても頷き、かと思ったら急に我に返ったかのように床に視線を落とした。変なやつ。

 そんな逸話をともなった「ステッピン・ストーン」が終われば二曲目はストーンズ・バージョンの「ゴーイン・トゥ・ア・ゴーゴー」だ。前の曲で真っ直ぐ突っ走った空気が横に揺れる。このつながりは悪くない。でもこの曲のオリジナルも、たぶんミラクルズの名前も、富岡は知らないことだろう。でもそんなことを知ったところで、富岡は絶対ツタヤに行ったりなんかしない。だから教えてやんない。なんてことはともかく、二曲終ったところで俺は思った。きょうのギグにはグラモックスは合わなかったかもしんねえな。やっぱストラトにしときゃよかった。

そんな俺の後悔とはまったく関係なく、女子高生とその家族からは盛大な拍手が起こった。ロックなんてぜんぜん、つうか普段はテレビから流れる音楽ぐらいしか聞かないような方々からのでも拍手は拍手だ。俺は素直にあったかい気分になった。なのに。

この俺でさえいい気分になったってのに、富岡は奇妙にニタニタしながら「どうも……」、聞き取れねえだろってぐらい気取った発音でバンド名。かと思ったら突然の「イエーッ!」、あげくには妙な息を吐きながら「じゃあ今度はあれぇなんでちょーっと待ってね」、たらたらアコギのストラップを肩にかけ、それからやっと場末のジゴロみたいな顔で「しぃうっねぶぁっせい……」と歌いだした。ストーンズのフラッシュポイント・バージョン「ルビー・チューズデイ」だ。

俺はマジで眉をしかめた――いつもの「無知だけど好青年な富岡くん」はどこに行ったの?

まあ、しゃあない。富岡の弾き語りに俺はグラモックスをやんわりかぶせていった。ワンフレーズ遅れて小丸ちゃんのキーボードが絡んでくる。一音一音途切れるキー・タッチ。邪魔だ。サビからベースの小野、寺沢のドラムが入ってきた、ところでふと思いついた。いっそ小野のベースに絡んでって小丸ちゃんにも素直に参加してもらって、ベース/ギター/キーボードのコーラス攻撃で行くか? ちょっと試した。やっぱダメだ。急に鍵盤のタッチが揺れだした。富岡も歌いづらそうだ。冒険はやめよう。

グラモックス……我慢だ。

セットリストにこめた富岡の狙いは理解できないじゃない。女子高生にもシンプルに聞けるし、適度にズレてるのも年上の面目を保つには効果的だ。でもやっぱグラモックスと……

着席組の女子高生と父兄の皆さまの頭の向こうに俺は目をこらした。やっぱ、いた。壁に寄りかかってしっかりこっちを見てる。真っ黒なロングヘアーにブラックスリム。ニューヨークパンクだ。パティ・スミスだ。

……あの女には退屈過ぎる。

どうにかしようぜ、グラモックス。でもどうにもならない。指がまるで手癖だけで動いて、音は時間みたいに流れるだけだ。意識だけはバンドを離れていく――あの女は、俺がジャニスやドアーズが好きなのをどうして知ってたんだろう。

いきなり質問が飛んできた時、俺はあの女をきょうの出演者だとソッコー無意識に決めつけた。で、面倒臭えこと訊きやがる突拍子もない変なやつ、と思った。でも今にして思えば、こいつ――今ステージの真ん中で、どこで見てきたんだ? ってなへなちょこロッカーを演じてる富岡ちゃんの知り合いだと考えたほうが自然なような気がする。あいつはこいつの知り合いで、そんでこいつから俺の音楽の好みを聞き、自分と似たような趣味だったもんで話しかけてきたんだと、そう考えたほうが。

だがしかし……こんな、今まさに超シット野郎に成り下がってニコニコ得意げに「ルビー・チューズデイ」なんぞ歌ってるような軽率な男にあんな気の利いた知り合いがいるとは、やっぱ思えない。

そうか。やっぱそうか。だよな。

あの女は単純に純粋に、この俺に興味があるのだ。そんできょうここにいたるまでに、なにげに俺の音楽的嗜好など調べ上げたのだ。で、やっとさっきああやって話しかけてきた。

 俺は遠くの闇を見つめた。また、じっとこっちを見てる。いや、これだ。頭だ。今どき珍しいこの黒い頭に仲間意識を感じ、当てずっぽうにあんなことを訊いてきた。たぶんそんなところだ。だいたいにして前もってわざわざ好みを調べてたりなんて、俺がそこまでモテるわけがない。


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  静かなとこで一服したくて外に出た。控え室に戻るとメンバーはもうステージに行っちまってて、真っ赤な塗装がボロボロはげたベンチには俺の真っ青なテレキャス、正しくはずっと借りっぱになってて、あれ、これってすでに俺の?ってか、なんでテレキャスがこんなに安っぽくラメラメなんだよってな、それにしても「グラモックス」ってどんな造語よ、まさかグラムロック縮めたつもり?ってなダサダサかつ軽率な銘がヘッドに刻まれた、弦高50メートル、ひと目でまがい物判明、こんなのがテレキャス名乗っちゃマズいだろ、っつう一見かなり恥ずかしめな金属六弦電気楽器を、見たこともないダボダボ革ジャンの肩に、数日前から某事情でそうなっちまった俺と同様の真っ黒な毛髪、すぐ下には黒々真ん丸な薄暗がりの猫の目、足元はくるぶしまでのショート黒ブーツ、短く見積もっても十センチは裾まくり、なのにまだ余ってるブラックスリム、身の丈百60センチ弱ってな、すべからくブラッキーなお嬢が膝に乗っけてて、そいつは俺を見るなり、

「チープ・スリルとドアーズのファースト、どっち?」

で、バラロレブピョーン……変なふうにギターを鳴らした。


  『チープ・スリル』は、テキサス産のラリラリ・ロンリー・ガール、ジャニス・リン・ジョプリンを一躍スターダムにのし上げた1968年のアルバム。ドアーズのファースト『ザ・ドアーズ』はその1年前、1967年発表の、ベーシストのいない不安定編成のこのバンドを全世界に飛翔せしめたアルバムだ。


つまり女が口にしたこの2枚は今から遡ること40数年前、俺なんかまだ精子にもなってない頃、つうかマイ両親さえ小学生だった頃に世に出た、とっくにカビがはえててもいいような代物なんだが、冗談じゃない、一音一音がいまだにとれたてのカツオ並みにピチピチな、ヘタに近づいたらヤバいぜってな、いっそ狂えるもんならこんな感じに狂いたいもんだってな、超最高に生々しく熱い魂が息づく2枚だ。そんな2枚にどうしたら優劣がつけられるってのか。面倒くせえ女だ。

 「それ……」

 人差し指でギターを指差し、返した親指で自らを示した。簡潔な言葉と鮮やかな手首の返し。実に俺っぽい。

 「あ、ごめん」

女がネックを突き出した。黒目勝ちの瞳が俺を見た。声のトーンが微妙に落ちて、面倒な質問の時よりいい声になった。

この女もきょう出るのかね。この声だったらボーカルだ。あの指使いじゃ少なくともギターじゃない。でも高校生には見えない。富岡みたいにスタジオで誘われた口だろう。

でも……きっと思ってんぞ。そんなギターでステージ?チューニングすぐ狂わない?てか、情けない音ぉ。思っても口にすんなよ。

 「それあんま鳴んないね」

 言いやがった。

確かにこいつは鳴らない。ビンビンのビンってよりはシャンシャンのシャンだ。で、青ラメ。で、そこだけストラトってなでかいヘッド。挙句に誰も聞いたことないような「グラモックス」。極めつけに弦高100メートル。だがしかしだ。こいつ、実はすごく楽しいやつなのである。だから誰のだったかも忘れちまうぐらい借りっぱになってる。

女が楽しそう俺を見上げる。「それに弦高、タカッ」

 わかってる。シールドをそそくさと束ね、エフェクターをギターケースから引っ張り出しながら女をちらっと見た。「借りもん」

 「ふうん、そうなんだ」

いやいや、そんな言葉でこいつを貶めちゃならん。まっすぐ女に向き直り、俺は上品にほくそ笑んだ。「でもたまに狂いだす」

女が片方の眉を上げて俺を見た。

ま、そういうことだから。俺は再びほくそ笑んでから背中を向けた。ステージに出るドアに手をかけたところで、背中に声が飛んできた。「ねえ、どっち! チープ・スリルとドアーズのファースト!」

急いでんだっての。イラつきながら振り向いたら、女の目がまっすぐこっちを見ていた。はたと気づいた――富岡なんかよりこの女のほうがよっぽど気が利いてるかもしんない。別に一曲ぐらい飛んだっていいか。

ふむ。俺は考え始めた。『チープ・スリル』と『ザ・ドアーズ』か……。

ヤニ色に染まった壁にぼんやり目線を泳がせた。どっちと答えても違う。なぜか。どうしても。

女はじっと答えを待ってる。無表情な視線がこっちを向いてる。子供じゃない視線。彩子とおんなじぐらいには女な視線。

俺の頭にぽっかり浮かんで消えない答えは、質問の答えにはなってない。でも俺はそれを口に出した。

 「ストレンジ・デイズ!」

ドアーズのセカンド・アルバムだ。驚異の。

 ふうん……って感じに女は頭を揺らした。



                                           (全46回)

ちなみに一昨日作ったジョン・ビートルCD-Rの曲目は以下の通り。

あまりに自然な音の流れに、並べた本人がびっくりです。

嘘だと思ったら同じ曲順で聞いてみなはれ。

おお。。。と思うはずです。完璧じゃん、凄すぎだぜ、と。

でもこんな才能、どこにも使えやしねえぜ。



1. Any Time at All

2. Yer Blues

3. You’ve Got to Hide Your Love Away

4. Help!

5. Don’t Let Me Down

6. Come Together

7. I Feel Fine

8. In My Life

9. Everybody’s Got Something to Hide Except Me and My Monkey

10. Strawberry Fields Forever

11. Nowegian Wood

12. I’m So Tired

13. Tomorrow Never Knows

14. Girl

15. Nowehere Man

16. All You Need is Love

17. Lucy in the Sky with Diamonds

18. I Am The Walrus

19. Ticket to Ride

20. Rain

21. Sexy Sadie

22. Across The Universe

23. Glass Onion

24. Bad Boy

25. Julia

26. Revolution



Dear Prudenceも入れたかったんだが、

Back in the USSRのジェット音がかぶさってて断念。

それだけが残念。



Any Time At All」で始まるビートル・ジョンのCDRを作った。

ビートルズの中のジョンの曲だけ集めたCD-R

物凄く難しかった。

松村雄策の気持ちがわかった。

渋谷陽一はまだNHK FMで番組をやってる。

こんなに音楽音痴な人だったのか、とびっくりしている。

Rockin’Onを初めて読んだのは17才だったと思う。

まだ「架空インタビュー」なんてのが載ってた頃で、表紙は、

Starman」も「Diamond Dogs」も過去になってて、錆び始めのデヴィッド・ボウイだった。

Rockにどっぷり浸かってる人間を、完全に肯定してくれる雑誌だった。

そんな雑誌の編集長がこんなに音楽音痴だったなんて、凄すぎる。

●戦力外

朝井秀樹(巨人)

一場靖弘、渡邉恒樹(ヤクルト)

松崎伸吾(阪神)

これが終わるとほんとに、一年でいいことは全部終わっちゃったなあといつも思うんだが、

今年は天気が最高で充分に楽しめちまったせいでその感がより強い。


9月8日・9日、定禅寺ストリートジャズ・フェスティバルのことです。



8日、まずThe Displayでいい感じの世界に突入。


愛と平和の弾薬庫-display2012_1


二つ目のThe Fave Raves with Favelettesでいきなり、今年のベスト!

愛と平和の弾薬庫-fr
youtubue http://www.youtube.com/watch?v=n-2HGNzYn98&feature=relmfu



三つ目は管楽器が四本並ぶド派手サウンド、Wack Wack Rhythm Band

愛と平和の弾薬庫-waxkwack2012

http://www.youtube.com/watch?v=n_iyqzvEGkM&feature=related


Janis CoverLevel Fourはギターが変わっちゃって残念だったけど。

愛と平和の弾薬庫-level4_2012
youtube(1分ぐらいから登場⇒) http://www.youtube.com/watch?v=mmKdY8UxKFY



早栄軒はもっとハープをちゃんと聞きたかった!

愛と平和の弾薬庫-soeikenn2012

9日、すーさんとドライブに再見!ジョン・レノンが近藤房之助やってる感じ、最高。


愛と平和の弾薬庫-su

http://www.youtube.com/watch?v=FuiOkt9k3W0


南浦和ブルースマーケットはもはや何をかいわんや的世界。

愛と平和の弾薬庫-mbm

http://www.youtube.com/watch?v=rZNAGM8ui6Q


いやあ、百円ショップでめっけた折りたたみ椅子くんも最高だった。



きみがいなけりゃこんなに楽しめなかった!

かつて清志郎をして「才能ないんだからやめなさい」と言わしめた泉谷しげる。

久しぶりでBSフジの「Beautiful Song」で見たらバックバンドが素晴らしくて、

「家族」や「都会」のころの泉谷を思い出させられた。

再放送があるみたいなので、みんな見よう。

8月5日21:00~21:55

http://www.bsfuji.tv/top/pub/beautiful_song.html

世の中には不思議な曲ってのがあるもんで、

一日に五回、それを毎日続けてても全然飽きないどころか、

どんどん新しいチェックポイントが現れて、さらに好きになっちまう曲ってのを俺は知ってる。

ソウル・フラワー・ユニオンの「辺野古節」ってのがそうなんだが、

節回し、リズムの適度なゆるさ、歌詞とはやし立てるお囃子の微妙な言葉の入れ替え、

随所にふりかけられてる細々としたギターのリフ、ドラムのいかにもノッテマス!って感じの刻み、

もう絶対、嫌いになれないどころかますます好きになってく。


飽きないに続いては、どんどん軽くなってく曲。

初めはメッセージ色がうるせえ曲かもしんない、とか思いつつガチガチに聞こえてたリズムが、

聞けば聞くほどにシャープになめらかになってくる。

これまたソウル・フラワー・ユニオンの「うたは自由をめざす!」って曲なんだけど、

まずタイトルがそうでしょ、なんか腕を振り上げてる感じでしょ。

でもスペシャルズ/マッドネス系のスカリズムにスッカンスッカン乗って歌われる歌詞が、

聴くほどにその意味を軽やかにしてくのね、マジ不思議。

我がBirthdayにソウル・フラワー・ユニオン仙台降臨!

当然見に行ってついでに「ルーシー」のミニアルバム?マキシシングル?

を購入したらおまけに魂花双六もらい!

あまりのためになる内容に飲みすぎてこけまくる今宵!


愛と平和の弾薬庫-2012-619

ありがとうみんな!