高校時代に「架空インタビュー」や「渋松対談」が中心記事だったロッキングオンを読み始めた。
購読はそれから十年も続かなかったと思うが、毎月読んでいたROをなぜ読まなくなったのか、
まったく理由が思い出せない。
しばらくして夜中にいまだに渋谷陽一がDJをやっているのを知って、聞いた。
ROを読まなくなった理由がそこにすぐ見つかった。
「この人、ツェッペリンのことしか音楽知らねえんじゃん」
特にブルースのことについて、彼はドがつくくらい素人なんじゃないかと思った。
弁舌がそこだけ空疎だった。
バンドをやっていたころ、俺はブルースが大好きだった。
自分で演奏する機会が増えていった時期、俺はROとさようならしたのだった。
そんな俺だったが、ボウイやルー・リードが亡くなると、どうしても買ってしまうのが、
ロッキングオンだった。たまに立ち読みすることもあった。
すでにほとんど渋谷陽一は書いていなかった。
でもこの人は必ず一本は何かを書いていた。
見開きに書いていなくても、レコードレビューには書いていた。
そこには松村雄策のにおいが必ずあった。
すっと鼻を抜けていく、鋭いかおりがあった。
ロックにやられちまった人間にしか出せないにおい。
彼がどんなふうにロックにやられていたかがそのまま書かれている文章が好きだ。
ドアーズを演っていた頃のできごとを書いた文章だ。
高校二年でドアーズと出会っていた俺にはここに書かれている空気のにおいが嗅げた。
それから、ここに書かれていることは渋谷陽一もほとんど同じようなことを言っていたんだけど、
こんなことを言ってくれちゃうのはこの二人だけだった。
俺を大きく変えたのはドアーズの響きとジョンの魂だけど、
変えられちまった俺を後押ししたのは間違いなく、こんなことを書いてくれる人だった。
いわば俺を肯定してくれた人。
渋谷陽一とは音楽的好みがかけ離れているし、松村雄策に関しては音楽的にいいファンにはなれなかった。
でも俺にとっては二人ともものすごく大きな存在なのである。
知らない人には教えてあげたい。こんなロックとの関わり方もあるんだよ、と。
でも、この人ほどロックが好きな人間ってどれぐらいいるんだろう。
いま日本で人気を博しているあれもこれもあいつもこいつも、俺には全然ロックには聞こえない。
またひとり、ロックがほんとに大好きな人が逝ってしまった。
終りは近づいてるんだな、と本気で思わざるを得ない。
ともあれ、
ありがとう、さようなら、松村雄策さん。